前に進める
落車
榊教官の号令で、まどかは押しがけを成功させ、なんとかマシンに乗り込む。
直線はまだいい。ヘルメット越しでもわかる、風が頬をかすめ、胸が少しだけ軽くなる。
(いける……いける……)
だが、最初のコーナーが迫ると、まどかの身体は強張った。
(こ、怖い……!)
アクセルを戻しすぎ、マシンが不安定に揺れる。
倒し込みのタイミングも遅れ、ラインが外へ膨らむ。
「まどか、アクセル戻しすぎだ!」
後ろから遼の声が飛ぶ。
だが、その瞬間――
――ガシャッ!!
まどかのマシンが横に跳ね、彼女の身体がコースに投げ出された。
「きゃっ……!」
まどかは地面に転がった。
「桐生!!」
遼はマシンを止めると、迷わず走り出した。
その横で、成瀬もヘルメットを脱ぎ、全力で駆け寄る。
「大丈夫か!?」
「まどか、動けるか!?」
まどかは震える手で地面を押しながら、必死に起き上がろうとした。
「だ、大丈夫……です……すみません……」
遼は首を振った。
「謝るなって言っただろ。怪我は?」
成瀬は膝をつき、まどかの腕や足を確認する。
「擦り傷だけだな。骨は大丈夫そうだ。」
まどかは唇を噛みしめ、涙をこらえていた。
「こ、怖くて……曲がれなくて……」
遼は優しく言った。
「怖いのは当たり前だよ。俺だって昨日まで全然曲がれなかった。」
成瀬も頷く。
「まどかちゃん、転んだっていいんだ。
大事なのは、また立ち上がることだよ。」
その言葉に、まどかの目が揺れた。
少し遅れて榊教官と黒川教官が歩いてきた。
榊はまどかのマシンを見て、短く言った。
「桐生。倒し込みが遅い。
怖いなら、もっと手前で減速しろ。
そして“曲がりながら開ける”んだ。」
黒川はまどかの肩に手を置いた。
「怖がるな二回・三回目で少しずつ慣れるもんだ。」
その言葉は、まどかの胸に深く刺さった。
遼が手を差し出す。
「もう一回、行こう。俺も一緒に走るから。」
成瀬も笑って言う。
「俺も後ろからついていく。安心して走れ。」
まどかは涙を拭き、小さく頷いた。
「……はい。もう一回、やってみます。」
震える足で立ち上がり、マシンを起こす。
その姿は、さっきよりずっと強かった。
まどかは再び押しがけをし、ゆっくりとコースへ戻っていく。
遼と成瀬が後ろから見守り、ひかりも遠くから静かに視線を向けていた。
転んでも、泣いても、怖くても――
仲間がいれば、また走り出せる。
そしてまどかは、初めて“自分の力で前に進む”感覚を掴み始めていた。
へたっぴ




