表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/48

1、イノシシを焼く

二章突入です。

よろしくお願いします。

 ソータとルーシャは、プラメト村から少し離れたところにある街、ローマンに向けて足を進める。


 ローマンに向かう目的は二つある。

 一つは、勇者と聖女がいる王都へ向かうのに必要な物資の補給。

 プラメト村とは違い、それなりに栄えているローマンでは、様々な物資が流通している。ここで物資を補給して、王都までは余裕のある旅をするのだ。


 そしてもう一つは、買い出しに行っている両親と、かつてソータをパーティーから外した冒険者達への復讐。

 勿論、復讐第一のソータにとってはこっちの方が重要だ。


 ソータは、エネルギーを操れば、一瞬でローマンに着くこともできる。

 エネルギーを操っての高速移動や空中移動など、時間を縮める方法はいくらでもある。

 しかし、いずれにしても目立ってしまう。

 誰かにその瞬間を見られ、警戒されて復讐に支障をきたすようなことは、できる限り避けたい。


 というわけで、ソータは王都へ辿り着くまでの食料をローマンで補給するわけだ。

 しかし、勿論ローマンに到着するまでにも、食料は消費する。その分の食料の確保も必要である。

 それがなければ、餓死は免れない。


 だが、村は焼けてしまって食料になるような物はなかった。

 脂肪魔法を使えば食事をしなくても、エネルギーの補給は可能だ。

 しかし、人間である以上、食事くらいはしっかり取りたい。


 ならば選択肢は一つしか残されていない。

 その道程で食料を得るのだ。

 幸いにも、火起こしはすっかり身に付いたし、調理には事欠かない。


 ソータはそんなことを考えながら、全く整備がされていない、ゴツゴツした石が剥き出しになった道を歩く。

 数年数十年と踏まれ続けた為か、草が生えてこなくなっている。

 だから、多少は歩きやすくなっているが、それでも整備されていない道を歩くのはやはり疲れる。

 特に、長年運動をしてこなかったソータとルーシャにはつらい道のりだ。

 ソータは脂肪魔法で意図的に脂肪を燃焼させ、エネルギーを何とか保ちながら歩き続ける。


 そして体力と勝負しながらひたすら黙々と歩き、日が落ちてきた頃、ようやく会話をする。


「何か引っかかったわ。……これは……イノシシっぽいわね」

「イノシシか……。よし、そいつを今日の食料にしよう」


 予めソータに言われて索敵魔法を展開していたルーシャが、ようやく食料になりそうなものを見つけたのだ。

 ソータはそいつを今日の食料にするべく、肌の見えている地面から少し外れ、鬱蒼と草が茂る場所に入っていく。


 二〇〇メートルほど進むと、イノシシの反応がかなり強くなったとルーシャが警告したので、音を立てないように、慎重さを増して歩く。


 やがてイノシシの姿が見えてきた。

 それと同時に、イノシシもソータの存在を認めたのか、勢い良く逃げ出す。


 イノシシは鼻が良く、神経質な動物だ。遠距離攻撃の手段を持っていなければ追い付くまでに気付かれ、逃げられる。

 イノシシが草を掻き分けながら凄い勢いで逃げていく。

 しかしソータは、敢えてそれを追いかけない。

 勿論諦めたわけではない。追いかけるまでもないのだ。

 次の瞬間、イノシシの全身が炎に包まれた。


「プギッ、プギィイイイイ!」


 イノシシの断末魔が森に響き渡る。


 したことは単純。イノシシにエネルギーを与え、一気に熱を上げただけだ。つまりは村人達を燃やしたのと同じ原理。

 別に余計な捻りを加えなくても、これさえあれば大抵のことはできる。


 草を手でどけながら、ソータはイノシシが倒れているところに向かう。

 見ると、既に火は消え、良い具合に焼けている。これなら香辛料抜きでも、美味しく食べることができるだろう。


 ルーシャに生体魔法で筋力を強化してもらうと、イノシシを持ち上げて草のない道まで戻る。

 地肌が露出していて、邪魔な草がない分、道に出た方がいくらか調理しやすい。


 気付くと、日が落ちてきている。

 ソータは今が丁度良い時間だと判断し、すぐにイノシシを食べてしまうことにした。


 イノシシを食べるのは生まれて初めてのことだ。

 村にいた頃は安い野菜ばかり食べていたし、転生前もイノシシを食べたことは一度もなかった。


 ソータは、既に焼きあがっているイノシシを一切れ、口に含む。


「ん、んん~!」


 こちらの世界に生まれ直して初めての美味しさに、ソータは感動の声をあげた。


 地球でのイノシシは、食肉としてメジャーな豚の祖先でもあり、鯨と食感が似ていることから山鯨と呼ばれることもある。

 そこからも分かる通り、イノシシは美味しいのだ。とてつもなく。

 香辛料がないのが残念ではあるが、それでもこんなに美味しいものを食べたのは初めてかもしれない。


 一時間ほどかけてイノシシを、骨を残して平らげるとソータとルーシャは再び歩き出した。


   ▼


 食って、寝て、歩く。

 そんなリズムで進み続けること三日、ついにソータは遂にローマンに到着した。


 待っているのは新たな復讐だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ