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8、村人全員罠の中

本日二話目です。

前話未読の方は、一話お戻りください。

 ソータはルーシャと一緒に家から出る。


 二人が一緒なのは、昨日自分の家を燃やしてしまったルーシャに頭を下げられたソータが、仕方なく部屋を貸した為だ。

 両親は、ソータがかつて冒険者登録をした街、ローランに出掛けていたので、難なく部屋を貸すことができた。


 今日は、遂に復讐をする。

 ターゲットは村人全員だ。


 見て見ぬ振りをしたり、間接的にでも勇者に協力したやつらを含めると、かなりの人数がソータやルーシャの心を傷付けたことになる。

 そして、その家族や親しい友人達は、そいつらを絶望させる為の道具になる。

 そう考えると、全員がそれに当てはまる。


 ただ、この話には、ソータにとってのルーシャ、ルーシャにとってのソータという例外がいる。

 勇者と大きな関わりがあったルーシャが直接的にも間接的にもソータへのいじめに加わっておらず、いじめられていたが為に復讐対象と親しくなかったことは、運命的と言っても良いかもしれない。


「それじゃ、始めるか……」


 村中央にある広場まで来ると、ソータはそう宣言した。

 ソータの口元がグニャリと歪む。


 そして、火が発生する。

 村を囲むように、円形に、火の壁が出来上がる。


 火が発生するのに必要な条件は、可燃物、酸素、熱の三つが揃っていることだ。

 そして、今回存在しなかったものは熱のみ。

 脂肪魔法で、元々ソータの脂肪だったものを熱エネルギーに変換してしまえば、必要条件を全て満たすことができる。


 さらに、一度火を起こしてしまえば、可燃物と酸素がなくなっても熱エネルギーと光エネルギーで擬似的な火を保つことができる。

 慣れていないから最初にわざわざ自然の火を点けるが、慣れれば最初から擬似的な火を発生させることも可能だろう。


 周りが騒がしくなる。

 火の壁に気付いた村人達が家の中から出てきたのだろう。

 しかし、既に火で村を囲まれている。逃げられる道理はない。


 どんどん人が家から出てくる。中には、パニックになって、何かをを叫び散らしている人までいる。

 その恐怖に歪む顔を見て、ソータは嗤う。


 火の勢いを上げる。

 それに恐怖心を煽られた村人達は、できる限り火の壁から離れようとして、村の中央に集まる。そこが広場ともなれば、尚更。


 そしてそこに待っているのは、ソータとルーシャだ。

 全てがソータの計画通りに進んでいく。


「おお、ルーシャちゃん! 良かった、無事だったんだね?」


 二人が待つ場所に辿り着いた人達の一人が、ルーシャを見て喜びの声を発した。

 果たしてそれは、過去にルーシャの治療を断った回復魔法使いだった。

 ルーシャは白々しいその態度に苛立つ。


「はぇ?」


 ルーシャが生体魔法で回復魔法使いの両足を消す。


「ルーシャちゃん!? 何をするんだい!?」


 何をされたのか理解できていない回復魔法使いに、ルーシャは優しい声音で答える。


「生体魔法で足を消しただけですよ? 大丈夫です。他の人が来たらおじさん以外にも同じことをしますから」

「足を……消す……?」


 おじさんは何を言っているのかわからないという様子で、首を傾げる。

 しかし、頭で言葉を反芻し、だんだんと理解が追いついてきたのか、しばらくすると自分の足を見始める。


「え……? あ、え……?」


 そして、ようやく言葉の意味を完全に理解したとき、一気に騒がしくなる。


「ひあっ! あ、え? ルーシャちゃん! どうしてこんなことをするんだい!? 有り得ない……。あの可愛いルーシャちゃんが……。もしかして……また偽物か!? おい! 本物のルーシャちゃんを返せよ! てか俺の足を返せよ! 人の足を盗って何が楽しいんだよ! 早く返せよ!」


 こいつに恨みを持つのがソータだったら、その姿すら滑稽だと笑ったのだろうが、ルーシャはうるさくわめき散らすその姿を見て、不快だとしか思わなかった。


「黙ってろよ! クズッ!」


 普段では絶対に使わないような汚い言葉で回復魔法使いに言い返しながら、今度は生体魔法で口を消す。

 何も言えなくなった彼の目は、明らかに恐怖が刻まれていた。


 しばらくして、未だ収まる様子のない喧騒の中、回復魔法使いの足が光り出す。

 ようやく回復魔法を使うという発想に至ったのだろう。

 かなりの魔力を注いだらしく、かなりの光を発している。


 だが、これはただの回復魔法では元に戻せない。

 そもそも回復魔法は、生命魔法に分類されることからも分かるとおり、生命を操って治るスピードを上げているだけだ。故に、治る傷でないと癒やすことはできない。

 今回の場合、生体魔法によって根本から『存在』が書き換えられている為、同じく生体魔法で『存在』を元に戻さなければ、治療はできないのだ。


 回復魔法が試されている間、喧騒はより勢いを増していく。

 ようやく、人がたくさん集まってきたからだ。


 ルーシャはその人達から、手際良く足を消していく。

 そのまま転がされた村人達は、皆一様に怯えた目をしていた。

 その中には、ソータをいじめた勇者の取り巻き達や、ルーシャの過去の友人達もいる。

 彼らを見て二人は嗤う。自分達をいじめたやつらが、今度は足を消されて怯えながら転がっているのだ。滑稽と言う他ない。


「ルーシャ、そろそろ全員じゃないか?」

「少し待って……そうね、もう全員だわ」


 ルーシャが生体魔法で周辺の生体反応を調べるが、この広場以外に反応はなかったらしい。

 全員が自ら罠にハマりにくるなんてアホばかりだな。ソータはそう思いながら、復讐を次のステップに移す。

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