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たいまぶ!  作者: 司条 圭
第4章 森川厘 ~ローレライ討伐録~
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第86話 朝生零華

 朝生零華。




 私の妹になっていたかもしれない子。


 とても可哀想な子。


 たまたま先に取り上げられたばかりに、悪魔に転生してしまい、果てにディアボロスになってしまった悲劇の子。


 私が無事に生まれたことを恨んでいるのだろうか。

 私の代わりに悪魔になったことを恨んでいるだろうか。


 ううん。

 そんなことは無い。


 この子は、私に希望を託したんだ。

 だから、この子とは戦わない。


 零華とは争わない。


 妹とは…………





 絶対に戦わない。




 千里が呟いた言葉。


「一子の妹が、悪い子には思えないです」


 その言葉が、私の中でずっとくすぶっていた。


 だから、考えてみた。

 想像してみた。


 私が零華と同じ立場だったら、どうしているだろうかと。


 私がディアボロスとして、同じ状況に立った時、どうするかを。


 そうして思考を巡らせるうちに、ある事実が浮かび上がった。


 それは…………




 ううん。

 まずは検証してきたことをもう一度整理してみよう。



 ディアボロス、ローレライ。


 この悪魔の動きには、どこかムラがある。


 1つは、ユニコーンがローレライを呼び出した、あの殲滅戦。

 3体ものディアボロスが揃った状況。

 それこそ、ローレライが本気であの呪歌を唄えば、私達はその場で全滅していただろう。


 それをしなかったのは何故か。


 その理由は、私達を生き残らせるためだ。


 元よりキーパーの殲滅を目的とするなら、あの時既に達成出来ていたはずなんだ。

 それにも関わらず、あの時点で呪歌を高唱しなかった。


 つまり、ローレライは、私達を倒す気が無いということだ。


 ゲートを通過するために歌った呪歌は、自分が消えないようにするために仕方なく使った手段でしかない。



 2つ目に、あの時、森川先輩を相手取ったのは何故か。

 それは、露草先輩にケルベロスを相手させるためだ。


 攻撃力の森川先輩、防御力の露草先輩というイメージは私達の中でも強い。


 ケルベロスの攻撃は雷。


 攻撃面に優れた森川先輩より、防御に徹した露草先輩ならば、凌げるだろうという考えがあったのだ。


 それに、シングメシアに対して相当な耐性を持っているローレライ。

 本気で戦えば、それこそ森川先輩は、その時に倒されていたはず。


 これらのことは「私達を倒す気が無い」という行動原理が無ければ取れる行動ではない。


 零華は、私達を倒す気など毛頭無かったのだ。



 森川先輩がディアボロスになったあの日。


 零華が私に語った言葉。


「700日願いを持たなければ消えてしまう」


 つまり、零華は、消滅しないようにする上で、最低限の願いしか持ち込んでいないということ。 


「悪魔のままで消えたくない」


 これは、私への願いだ。


 カルマを持ち込むことで人間に戻れるというわけではないだろう。だからこその、次の言葉。


「全てを覆す、お前の願い。持てるものなら持って見ろ」


 そう。

 この言葉こそ、零華の想い。

 そして、私が託すべき願い。


 その願いを託すためには…………


 愛さん。

 京さん。

 千里。

 露草先輩。

 森川先輩。


 皆から貰ったたくさんの教訓を。


 今ここで、全て生かすんだ。


 そうして、私自身を持って。


 私のために。


 みんなのために。


 私はこの願いを叶える…………!

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