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たいまぶ!  作者: 司条 圭
第4章 森川厘 ~ローレライ討伐録~
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第85話 一子と零華

「来ると思ってたわ、ローレライ……いえ、朝生零華!」


「よかった、ようやく受け入れてくれたのね。嬉しいよ、お姉ちゃん」


 本当に嬉しそうな声を出すローレライ。

 その感情に嘘は無さそうだ。


「そうね、ちょっと時間が掛かったけれど……あなたは私の妹よ」


「それじゃあ、私が悪魔になった経緯も知ってる?」


「知らないけれど、想像はついてるわ」


「そうなんだ……じゃあ、教えてよ」


 母から聞いた話。


 私達双子は、流産するだろうと言われていたらしい。

 それでも、何とか分娩まではありつけた。


 そんな難産の中、先に取り上げられたのは…………


 零華のほうだったという。


 しかし、零華は、取り上げられた直後に死んでしまった。


「その瞬間、あなたに悪魔が囁いたんでしょう。転生を希望するかどうかを。あなたは、赤ん坊の本能の赴くまま転生し、そして悪魔になってしまった」


「そう。そしてお姉ちゃんもまた、死にそうになったんだよ」


「その時、私の願いを聞き届けたのが……零華、あなたね」


「ご名答♪」


「私は……零華のおかげで、無事に生まれることが出来た」


 零華が死んだ瞬間、キーパーの候補者となった私。

 私の、生きたいという生存本能を叶えたのが零華。


 生きたい、というキーパー候補の私の願いを叶えた零華は、ディアボロスになった。


 その時に汚れた、私のカルマ。


「だから、呪歌とも言えるカタストロフィーの影響が少ない。そういうことよね」


 この子の言うとおり、私のカルマは既に汚れていた。


 もしかしたら…………

 私は、キーパーではなく、むしろディアボロスに近い存在になっているのかもしれない。


「さて、無事に姉妹の再会を果たしたところで……お姉ちゃんはどうするの?」


「もちろん、やることは同じ。私は、私のやるべきことを……そして、やりたいことをやり遂げる!」


「ふぅん……そっか」


 挑発とも取れるような声のトーン。

 零華は、両手から棘の鞭を展開させる。


「じゃあ、頑張ってみよっか!」


 言葉と同時に放たれる零華の鞭。


 四方八方。

 縦横無尽。

 鞭は、全方位から襲い来る。


 それを防ぐ術を、私はこれしか知らない。


「愛さん……お借りします!」


 全ての方向からの攻撃を守るのは、愛さんがいつも張っていたバリア。

 見た目は薄いけれど、私と京さんをずっと守り続けてくれていた、とても優しい壁。

 その障壁に、零華は容赦なく鞭を振るう。


「ほらほら、どうしたの? そんなに籠もっちゃって。お姉ちゃんは貝になりたかったのかな? それとも亀?」


 煽り立てるような零華の言葉。

 私は、それを黙って受ける。


「反撃してこないの? ただ叩いてるだけってつまらないんだけど」


 有言実行というべきか。

 体言するように鞭を振るうのをゆっくりと止める。


 攻撃を一切止めたその時。

 私は、零華を見つめる。


「私、あなたとは戦わない」


 真面目に言う私の顔を見て、思わず吹き出す零華。


「ぷっ……あははっ! ちょっとお姉ちゃん、本気で言ってる? こんな状況にまでなって、戦いたくないって!」


「大真面目よ。私は、あなたとは戦わない。それが今、私のしたいことよ」


「ふぅん…………」


 何かに興味の湧いた子供のような顔つきになる。


 ニヤリと笑い、面白いものを見つめるように目を細めた。


「朝生さん!」


 露草先輩がフォローに入ろうと、草薙を準備している。


 それが見えて、私は制止の声を張り上げた。


「先輩、邪魔しないで! これは、私達姉妹の問題です!」


「…………っ!」


 鬼気迫る私の声を聞き、踏みとどまる露草先輩。


 その様子を見て、零華は笑う。


「あははっ! 面白いね、お姉ちゃん。私とは戦わない。私とは戦わせない。じゃあどうやって勝つつもり?」


 ケラケラ笑う零華。


 そんな妹に、私は表情を一切崩さずに言う。


「…………零華。私は、あなたに願いを託すわ」


 私の言葉に、零華だけでなく、露草先輩も驚きを露わにした。


「ちょっと、朝生さん!」


 露草先輩の制止する声も、数多の悪魔が迫る護方結界を張り直す作業に追われ、まともに届かない。


 表情を改めた零華は、私を俯瞰する。


 その視線は、冷たい氷そのものだった。


「ふぅん……じゃあ、お姉ちゃんのやりたいことって何? 私が叶えてあげるよ? ほら、言ってみなよ。そんなものがあるならさ!」

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