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たいまぶ!  作者: 司条 圭
第4章 森川厘 ~ローレライ討伐録~
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第84話 私に出来ること

 巨大な扉。


 私の背丈どころか、高層ビルのごときその高さは、見上げることが出来る。

 とても動きそうもない、重厚な扉。

 その巨大な扉が、音を立てて僅かに開き始める。

 少しずつ開かれ、動くたびに軋む音が木霊する。

 その音が止んだかと思うと、その扉の中から、一斉に黒く小さな悪魔たちが大量に飛び出してきた。



「護方結界!」


 同時に展開される露草先輩の護方結界。

 その和紙のような薄さの障壁は、大量の悪魔を吸い込んでは消していく。


「どこまで耐えられるかしら…………」


 不可思議とも呼べるほどの数に圧され、障壁は次第に薄くなる。

 それを見た私は。


「護方結界!」


 露草先輩の後ろに、更に結界を張る。


 それを見た先輩が、私の方を振り返り、叱咤する。


「ちょっと朝生さんっ! 閉めることに専念しないと、余計に悪魔たちが……!」


「大丈夫です、やってます!」


「…………えっ!?」


 そう。

 私は、やっている。


 京さんの大きな手を再現しながら、護方結界を展開している。


 イメージさえ出来れば、私は、ここでは何でも出来る。


 1つのことだけに縛られない。


 2つのことをやれない道理なんて無い。


 そんな固定観念は捨ててしまえ。


 私にできないことなんてない。


 私は…………



 自由だっ!




「露草先輩は護方結界に専念してくださいっ! 私の結界は、見た目以上に脆いです!」


「あ、は、はい」


 私のやっていることは、やはり真似事に過ぎない。


 まだ、「私」を持っていないから。


 自分らしさを探せていないから。


 でも、それを悔やむ必要は無い。

 だって…………


 最初は誰だって、真似していくしかないのだから。


「あっ……朝生さん!」


 露草先輩の声。


 それは、私の護方結界を抜けた悪魔が発見した、反射的なもの。


 私は、即座に反応し、狙撃を準備する。

 両手は塞がったまま。


 それなら、使うのは……!


「やぁぁぁぁぁああああああ!!」


 私の気合いと同時に、悪魔は消滅する。


 その光景は、露草先輩の驚嘆の声を上げさせるには充分なものだった。


「うそっ……どうやって?!」


 驚くのも無理は無いかもしれない。


 まさか、もう一つ作り出した大きな手で、弓を引いているとは思っていなかったようだった。


 普通なら出来ないことかもしれない。


 でも、今の私なら出来る。


 すべてはイメージだ。


 出来ない何てことは、何一つないんだ。


「いけない……急に数がっ!」


 護方結界が押され始めている。


 面に対しては強い護方結界。

 しかし、一点に集中されるのは厳しい。


 悪魔たちもそれに気づいたのか、一点集中して突破を狙っているようだった。

 次第に破れそうになる護方結界の前に、私は立つ。


「煌めけ……シングメシア!」


 手は閉門作業を進めつつ、口にシングメシアをくわえて横へ凪ぐ。


 普通の悪魔が相手なら…………


 そして何より、露草先輩の護方結界と合わせての攻撃ならば、弱めで攻撃しても充分な効果が得られる。


 すべてを自分でやろうとしてはいけない。


 お互いに補完すべきなんだ。


 大変なときこそ、分かち合うべきなんだ。




 愛さんが教えてくれた。


 京さんが教えてくれた。


 千里が教えてくれた。


 露草先輩が、そして森川先輩が教えてくれた。


 みんなが教えてくれた、たくさんのこと。


 それは、私の中で希望となった。

 そのみんなに託された希望がある限り…………




 絶対に負けない!






 私には、愛さんや京さんたちのようなしがらみはない。


 千里のように、一途に気持ちを持てばいい。


 露草先輩のように壁を作らず、何でも出来るとやってみて……


 そして、森川先輩のように、自分をしっかり持って。



 私はやる。


 何でもやってやるんだ!






「へぇ、結構がんばるね。お姉ちゃん」


 聞こえてきた悪魔の囁き。

 その声は、私の真後ろから聞こえてきた。


 びっくりして飛び上がるような状況なのに、私は冷静にそれを受け止めることが出来た。

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