王城の防壁 ~後日譚~
何ですの、これ?!
『何なさるの! ちょっ、手をどけて! おどけなさいったら! いい加減にしなさぁいっ!』
意味がわからなくて呆けてしまった隙に、手で口を塞がれたうえ、眼前には、肉の壁。
フガフガ叫んでも全くの無視ですわ。
この愚兄どもがっ!
宗林様にお会いするために王城に来たはずが、お兄様達に囲まれ完全包囲状態。
婚約は無事かなったものの、お兄様達に邪魔され、なかなかお会い出来ません。
アア、ほら、迎えに来てくださった、宗林様付きの補佐官様が行ってしまわれたではないですか!
だいたい、宰相に騎士団長に財務大臣etcと、城の高官が揃いも揃って何ですの!
最近、『副』が取れて、お忙しいはずでしょう?
婚約後、超がつくシスコンなお兄様達は、対宗林様用の肉の防壁となってしまわれたんですの。
41人もいるので、交代スケジュールまで組んで隙がございません、鉄壁ですわ。
だいたい、補佐官様も補佐官様です。高官の肉壁が不自然だとお思いにならないのかしら?
通り過ぎるとき補佐官様の足が早くなった気がしたのは気のせいですわよね?
いい加減、イライラしてきましたわ。
「お兄様がたっ!」
ようやく手が離れました、空気が美味しいわ。
……って、ちがーう!
「そこにお直りなさいっ」
高官正座on廊下。
文官や騎士達が、目を逸らして通り過ぎて行かれます。慣れてしまわれたのですね。申し訳ございません。
「お兄様がた、何をなさってますの?」
にっこり青筋たてるのも最早お手の物ですわ。
「だって、白媛」
「だってじゃございません! いい大人が!」
シュンとなったお兄様達を叱り飛ばしていますと、向こうから宗林様が走って来られます。
その後ろにはお義姉様達。
前門の虎後門の狼という東国の諺が浮かびます。
カーン! ファイッ!
あら何か聞こえませんでしたこと?
「ちょっと、貴方達? このような所で何なさってますの? 堂々とおサボりかしら?」
「これはこれは王女様がた、そのように振り乱されては″淑女の手本″の名が泣きますぞ?」
「何ですって? 無礼な! だいたい貴方達、弟の邪魔ばかりなさって、あの子の何処が気に入りませんの? 不敬ですわよ!」
「そうおっしゃいますが、王女様がたこそ、殿下の邪魔ばかりされておられるではないですか。可愛い妹が不憫にございます」
「こっち!」
虎が狼に気をとられた隙に、宗林様に手を引かれて逃げます。
初めてお会いした王城裏の茂みで、2人して溜め息が。
「白媛、久しぶり」
「お久しぶりでございますわね」
「元気にしてた?」
「ええ。……毎日、王城には参っておりますのに申し訳ございません」
「こちらこそ」
シュンとなった私の髪を宗林様が撫でる。
「お兄様達とお姉様達には困ったねぇ」
「本当に」
「緑華皇子のほうが楽だったな」
「そうですわね」
はぁぁ、と同時に溜め息が出ます。
「まぁでも、あの時よりは白媛に会えるから」
宗林様がゴロンと私の膝に頭を載せました。
「私は、もっと宗林様にお会いしたいですわ」
宗林様の柔らかな髪を撫でながら、思わず愚痴をこぼしてしまいました。
「大丈夫だよ、私に策があるからね」
「それよりも、白媛?
教えて欲しいことがあるんだけど」
「何ですの?」
「どうして緑華皇子は大丈夫だったの? 蛇だったのに?」
「…………」
「どうして顔が赤くなるの?」
「…………」
「ふーん、僕、頑張ったのに」
「……のです」
「え?」
「緑華皇子は宗林様の瞳と同じ碧色でしたの!」
「ふはっ 最高だ」
あら? そうおっしゃった大好きな宗林様のお顔が、段々近くなって────
────「見つけたぁ!」「見つけましたわ!」
くっ、狼と虎が結託したようですわね……。
テンプレですいません。
あと1話、緑華皇子の前日譚で終わりです。
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