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37 私は自分を犠牲にしない

1-9 憂鬱

屋敷への帰宅は多少遅くなってしまったものの、それはアリスに計算の内だった。


アリスは部屋に戻るとさっそくローラを呼んだ。


「失礼します」

「ローラ、よくきてくれたわ」

「アリス様、どうかなされましたか」


縁談の後ということもあり、ローラは心配そうのアリスを見ている。

まずはローラを安心させるために微笑みながら話すことにした。


「ローラ、心配してくれているのね。ありがとう。でも、もう大丈夫よ」

「では縁談は」

「いいえ、その話は進んでしまったわ。一ヶ月後に結婚することもね。でもいくつかわかったことがあったわ。ローラ、あなたにお願いしたいことがあるの」

「私にできることであれば」

「ローラならそういってくれると思ったわ。引き続き使用人にダリルと繋がっている人間を調べて欲しいの。おそらく帰りが遅れた理由をこの後それとなく聞いてくる人が怪しいわ。それと、この後、アラン兄様にローズ商会へ来てもらうように言っておいて」

「かしこまりました。アリス様はどうされますか」

「私は怪しまれないようにこれまでどうりを続けておくわ。ローラだけが頼みよ。よろしくね」


そしてローラが退出を確認した後、計画の進捗を確認した。。


マリアさんに渡した手紙1通はクリス宛でロジャース商会に内通者がいることを書いておいた、もう一通はクリスがロジャース商会へ直行した場合に備えて途中で止めてもらえるように頼んでおいた。

内通者を把握するためにローラにお願いもした。

ローズ商会は動きを再開しようとしてもアリスが認めなければ動かないしクリスへ不審を抱かせるメッセージとしては猶予期間を考えても十分だろう。


あとは、クリスが時間内に気づいてくれると信じ、カルロスの城門入り口を確保することだった。


そしてその相手がようやくやってきた。


「アリス、久しぶり」

「アランお兄様、お久しぶりです」

「何やら大変らしいな」

「どうなんです。まあ、政略結婚なんて珍しいことではありませんけど」

「まあ、そうかもしれないが俺たちは別に貴族という訳じゃないからな」

「ええ、まあ」


この言葉を聞きアリスはアランが味方になってくれると確信した。


「おっと、話がしんみりしてしまったな。用件とは何だったんだい」

「ええ、その件についてなんですがローズ商会の現状をご存知でしょうか」

「まあ、これでもロジャース商会の経理責任者だ。最近は活動が止まっているそうじゃないか」

「ええ、というのも」

「クリスが不審に思って帰ってくるのを待っているんだろ」

「どうしてそれを」

「まぁ、これでもクリスの上司だったからな。それに妹のアリスが考えていることなんてすぐにわかるよ」


そういうとアランは微笑んだ。

一方のアリスは図星だったため驚いた。


「で?それに関する要件なんだろ」

「え?ええ。実はローラン王国側にある門番でクリスが捕まったり足止めを受けないようにして欲しいのです」

「なんだ、そんなことか。お安い御用だよ」


そういうとアランはアリスの頭を撫でてくれた。

アリスは少し恥ずかしくなり顔が赤くなるのを感じる。


「よろしくお願いします」

「ああ、任されました」


アランはそう言うと立ち上がり、手を振りながら退出していった。


これで、クリスが戻ってくる準備は整った。


後は・・・もうアリス自身でやれることはなかった。


クリスは裏切ってなどいなかった。でも、

クリスは本当に助けてくれるのだろうか。


その不安だけがアリスに付きまとっていた。


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