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104 後6

……ここでめでたしめでたし。とアリスは終われなかった。


というのもアリスにはまだひとつだけやり残したことがあった。


「そろそろ覚悟を決めないとね」


あれから何年の月日が流れたのかしら。

普通の人ならとっくの昔に諦めているであろうことを諦めていない人がいた。

アリスはその人に会うため、仕事後の夜がふけてきた頃、待ち合わせの庭へと向かう。

そして、アリスが庭にたどり着くとその人は既に待ち合わせ場所のベンチで腰掛けていた。


「お待たせ。待った?」

「ああ、まあね」

「そこは今きたところというのが王道でしょ」

「アリスさんとの関係に王道要素がこれっぽっちもなかったじゃないですか」

「それもそうね」


お互いの顔を見て少しの間笑った後、お互いの顔を見つめあい沈黙が流れる。

そして、意を決したのだろう


「アリスさん、結婚してください!」


その言葉を聞いたアリスはほほ笑みながら言う。


「ごめんなさい。やっぱり無理」

「ええ、この状況でも……」


肩を落とし、情けない声をあげる姿にアリスは思わずくすくすと笑ってしまう。

そして、アリスは肩を落とし俯けている顔に手をやりアリスと視線が合うように持ち上げる。


「え?」

「目を瞑って」


そう言い、目を瞑ったのを確認するとアリスはゆっくりと顔にに近づけて唇を重ねた。

そして、顔を離してお互いに目を開けると再び見つめあう。


「好きよ。でも、いきなり完成とかじゃなくて……」


なぜか胸が苦しくて息がつまってしまい、言葉が途切れる。そでも言ったことに対する後悔は不思議となかった。

言葉もちゃんと伝わってはいたらしい。


「ああ、そうだね。実はお互いによく知らないし」

「ええ」


その返事に再びお互いに苦笑いする。そして、再び沈黙しお互いの顔を見つめあう。


「俺も好きだよ」


そういわれたとき、嬉しさがこみ上げてくるような不思議な感覚があった。

その言葉は今まで一番嬉しくて笑みがこぼれる。


「実はお互いによく知らないのに?」

「ああ」


ただ、そこであることにアリスは気付く。


「……あ」

「どうかしたの?」

「女性からこういうのははしたなかったかしら」


そう言うとアリスは少しだけ自身の失敗に落ち込んでしまった。

ただ、そのまま落ち込んで終わることはなかった。


「問題ないさ。だって」


そう言うとアリスを優しく抱きしめ耳元で囁いた。


「俺はずっとアリスさんが好きになってもらえるよう実力で勝ち取ってみせる言ったじゃないか」

「……そんなこと言っていたかしら?」

「ひどいなあ」


お互いに顔を合わせて笑った後、再び唇を重ねた。










一方そのころ、アリス達を囲むようにして様子を伺っている者達がいた。


「いったいどこからこんな情報をどこから仕入れたのやら」

「女神の特権よ」

「ただの職権乱用じゃないですか」


そんな会話をアイリスとクリスは周囲に聞こえない程度の小声で話す。そして周囲を見回すと同じように見ている人たちがいた。

ニヤニヤしているロザリーと心配そうに見ているメアリ。同じくニヤニヤしてるベルと見つかったらと顔を青くしているウィリーがいた。


「どこから嗅ぎ付けたのかしら。人間の野次馬精神には驚くわ」


アイリスが呆れたようにため息をつきながら呟くとクリスが呆れたようにおでこに手を当てて言う。


「仲間に何言っているですか。どうせアイリスさんが言いふらしていたんでしょ」

「あなたのような感のいい部下は嫌いよ」

「はいはい、有難き幸せ」


クリスはジト目でアイリスを見ながら皮肉で帰す。

そのことにアイリスは怒ったらしい。


「何よ!文句ある!?」

「っわ!ばか」


アイリスが思わず叫んだ口をクリスが慌てて塞ぐが手遅れだった


「誰!?」


アリスの声におずおずと立ち上がるアイリスとクリス……ロザリーとベル。

なんでその二人も立ち上がったんだとクリスはツッコミたかったが立ち上がってしまったものは仕方ない。


「あ、あなた達!?」


アリスは驚いた顔をした後、急に顔を赤くする。おそらく先ほどまでの出来事が理由だろう。

それを誤魔化すよう怒気を強めながらアイリスに問いかける。


「……い、いつから居たの」


アイリスは視線をそらし、頭に手をやりながら答える


「え、えーと……お待たせと言ったくらいからかな」

「最初からじゃない!アイリスの仕業ね」

「感のいい上司も嫌いだよ!……おめでとう!」


捨てセリフと祝福の言葉をかけるとアイリスは屋敷の方へと逃げ出した。


「あ、アイリス!?アリスさん、おめでとうございます!」


クリスも同じく祝福の言葉をかけて礼をした後アイリスを追いかける。


「あ、ちょっ!?」


アリスが止めようとしてたがそこで留まる人などいなかった。

それに続いてロザリーやベルも取り残されまいと祝福の言葉をかけて屋敷へと逃げていった。

その逃げる途中、クリスは一度だけ振り返ってアリスの顔を見たとき、アリスは言葉では怒っていても顔を見れば嬉しそうにしていた。




なんとか逃げおおせたクリスは屋敷に戻り、自室で一息つく。


……後はエリック様に任せればいいよね。


「あなたはそれでよかったの?実はアリスと屋敷に帰った後、記憶を取り戻していたんでしょ」


クリスは声のする方に顔を向けるとすぐ傍にアイリスが居た。

いつの間にという質問は必要なかった。なんせ目の前でアイリスがクリスの部屋に堂々と先に入っていってたからだ。

クリスはそのことにツッコミはいれず、息を整えてからアイリスの質問に答える。


「まあね。それでも……」

「それでも?」

「二人が幸せそうならそれを応援するのが部下の務めでしょ。あの二人の関係に記憶のある私は邪魔になるの」


クリスは笑顔を崩さずにウインクをしてアイリスにそう言った。

しかし、アイリスは納得いかないのはどこか複雑そうな表情をしている。


「自分より立場優先ねえ……有能な部下の考えることはよくわからないわ。それに……」


アイリスがドアのところを見るとノック音が聞こえた。


「あなたにご執心な人がやってきましたよ」


そうやってやってきたのはカルヴァンとフローラだった。


「クリス様、実はクリス様はルイス兄様と婚約が!」

「クリス様、実はどうか私とも!」


同時にそういってお互いに睨む、カルヴァンとフローラ。

この様子から察するに記憶がないことをいいことに自分達の都合のいいように誘導するつもりなのだろうか。


「まあまあ、私は記憶がないので、ゆっくりお話しでもしませんか」


……案外この二人も考え方では愛称がいいんじゃないかな。


そんなことを考えながらクリスは自分でハーブティーの準備をして二人に振舞うと、話をニコニコと聞くことにした。


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