スキル確認と初戦闘
3話目です。説明が多いですね・・・
スキルを確認するためにメニュー画面を開く。メニュー画面はいつもどおり自分の首を触ると出てきた。その中にある項目の中の『装備』を開き『スキル』を選択する。そうすると自分が装備しているスキルを確認できるのだ。後はそれをみんなに見えるようにウィンドウを前に出す。ここまでしてやっと他人に自分のウィンドウが見えるようになるのだ。
装備>>スキル
<STR>Lv0 <SPD>Lv0 <VIT>Lv0 <INT>Lv0 <MIND>Lv0
<DEX>Lv0 <補助>Lv0 <妨害>Lv0
俺のスキルを見たマサトが一言
「アトム・・・攻略の情報みてこれは遊びすぎだろう」
ため息をつきながら俺にそう言ってくる。もちろん俺もまともなスキルをとったとは思っていない。がそこまでひどいのだろうか?
「マサト、何がいけないんだ?ステータス上昇系があるならまずはそれをとるだろ」
「まぁ、みんなステータス上昇のスキルはとるぞ?とるんだが・・・」
「なにがよくないのですか?」
「説明するより俺のスキルを見てもらったほうが早いか」
そういってマサトが自分のスキルが見えるようにウィンドウを前に出す動作をする。
装備>>スキル
<STR>Lv0 <VIT>Lv0 <剣>Lv0 <鎧>Lv0 <手>Lv0 <火>Lv0
「ステータス上昇が2つに・・・魔法?」
「正確には属性スキルだな。見てわかると思うがステータス上昇系は自分の戦い方にあわせた物をとって、残りは攻撃のためのスキルと防具のスキルをとるのが普通だ」
「属性スキルってのはなんなんだい?」
「属性スキルはそのままだな、俺のとった<火>なら武器に炎をまとわせたりできるし、<杖>をとれば火の玉を飛ばすことができる。こっちがよくいう魔法だな」
「私はゲームを始めるときにいた女性の方に教えていただきましたので、属性スキルについては知っていましたが、<杖>をとらない人もとるものなのですね」
ミサトは本当に何も知らずにこのゲームを始め、スキルも適当に取ったようだ。ミコはわからないことは教えてもらえたといっていたので、あのNPCの女性はEF社の社員が中にいたのかもしれないな。
「それで話を戻すが、まずアトムのスキルじゃ一人で戦うのはほぼ無理だ」
「・・・え」
「一応初期にとった武器スキルに合わせた武器がメニューの『道具』ってところに入っているんだが、武器スキルを持ってないやつは固定でナイフが入っている」
「武器がないわけじゃないんだな。でもそれなら戦えないってことはないだろう」
「武器はあるが、武器スキルがないと武器の攻撃力分の攻撃しか与えられないんだ」
「武器の攻撃力・・・」
俺は自分の道具に入っていたナイフを指で押してみる。するとその道具の情報が見れるようになる。
ナイフ>>攻撃力1 重さ1 耐久力∞
「攻撃力・・・1?」
「そういうことだ。どんなにステータスが上がっても武器の攻撃力分しか与えられないから1しか敵に与えられない」
「確かにきつそうだね」
「姉貴もちゃんと武器スキルはとってるんだろうな・・・」
「私は問題ないな、ステータスがよくわからなかったからそっちをとらなかったけど、あんたの話し通りなら問題はなさそうだと思ったね」
そういってミサトは自分のスキルを見せる
装備>>スキル
<剣>Lv0 <銃>Lv0 <作成>Lv0 <修理>Lv0
「あ~・・・うん。戦う分には問題ない」
そう答えたマサトは目頭を押さえながら上を向く。
「なにか言いたそうな感じだねぇ。はっきりいいな。私は初心者で何が悪いのかわからないんだからそんな顔されるのが納得できないんだ」
マサトに笑顔を向けながらミサトは手を鳴らしている。まるでマサトの顔を殴り飛ばす為の準備をするかのようにみえる。いや間違いなく答えなければそうなるのだろう。だがマサトは気づいていない。
「まず何で武器スキルが2つあるんだよ。そして<作成>は物を作るためのスキルで<修理>は物を修理するためのスキルなんだ」
「それだけ聞くと優秀なスキルじゃないか」
「それだけならな・・・。だけどこのゲームでの特技の取得方法は覚えているか?」
「「特技?」」
攻略ページを確認していない2人が首をかしげる。そして俺は特技の取得方法ということで思い出した。このゲームでは
「特技は複数のスキルを覚えないと取得できない物がある・・・もしかして」
「その考えであってる。<作成>はスキルだけだと装備の素材アイテムを作成できるだけで、装備自体は作ることができない。<修理>は全部のアイテムの耐久力を回復できるんだが」
そこで言葉を切り全員を一度みて、再び口を開く
「『道具』にはいってた武器や今着ている服の耐久力を確認してみてくれ」
そこには耐久力∞の文字が、顔を上げると全員がマサトのほうを見ている
「全員見たな?耐久力∞つまり最初のうちは耐久力は消費しないから<修理>を使用することもできない。初期装備以外は耐久力がちゃんとあるから装備を作成すれば育てることもできるが、最初のうちは装備を作るのも大変なんだよ。つまりこの2つは、いや最初に取得できる特殊スキルは上げづらい物ばかりなんだよ」
「あちゃー・・・まぁとっちゃったものは仕方ないか。うん、人生諦めが肝心だね」
「それでよいのですか?」
「失敗をいちいち気にするよりも、その時間を使って頑張って育ててしまえばいい。戦うことはできるんだから、スキルを育てるための素材ってのは手に入るんだろう?」
「ああ、武器や防具の素材は<発見>のスキルをもって採集できるものを探すか敵を倒して手に入れるのが一般的だ」
「それ以外にもあるのかい?」
「後はプレイヤーとのトレードだな。素材を買い取るって考えればいい」
「お金はないから最初は戦って地道にあげるとしようかねえ」
そういって自分の装備を取り出して装備していった。その後ミコの方を向き
「最後はミコだよ。ほらあんたのスキルも見えるように前に出しな」
そうミコに催促するのだった。
「えっと、ちょっと待ってください。まだ操作に慣れなくて・・・」
そういいながらゆっくりとした動作でメニューを操作していき、全員に見えるようにウィンドウを前に出す。そこに書かれていたスキルに全員が何度も頷きながらミコを見る。書かれていたスキルは
装備>>スキル
<杖>Lv0 <火>Lv0 <風>Lv0 <土>Lv0 <水>Lv0
「皆さんどうして子供を見守るような顔をしているんですか?」
「いや、ミコらしいなあ。と思ってね」
「どういう意味ですか兄さん」
少しすねたように頬を膨らませるミコ。その姿を見て苦笑してしまう。最近大人びてきたと思っていたのだが、こういう行動をとると子供っぽく見えるから不思議だ。
「そうすねるなよ。悪い意味じゃないんだからさ」
「そうなのですか?」
不安そうに俺たち三人の様子をうかがうミコにミサトが
「本当だよ。剣を片手にモンスターとちゃんばらをするミコが思い浮かばなかっただけだからさ。どういうスキルをとったのかと思ったけど納得がいったってだけさ」
「そうそう、それに他の2人よりはまともなスキルだよ。これは間違いない」
「よかったです」
そういって安心したと一つ息を吐く。
「ただそのままだと特技の威力が上がりづらいから、後で<INT>をとるといいんじゃないかな」
「わかりました。でもスキルポイントがもうありませんよ?」
「スキルポイントはな、スキルのLvの部分が10になると1ポイント増えるんだ」
「つまり俺はステータスの6個が10になったらスキルポイントが6手に入るのか」
「そうだな、ただそれ以上ステータスは上がらない」
「・・・え?」
「それがプレイヤーがステータス系のスキルをとらない理由だよ。ステータス系のスキルは10で限界なんだ、他のスキルは50まで上がるのがテストのときに確認されているがそれ以上行くスキルもあるのかもしれないな」
「ステータス系だけかよ・・・。でも合成とか派生とかあるんだろ?どっちかないのかよ」
「どうだろうな?合成はわからんが派生はなかったぜ」
フリスタではスキルのLvが限界まで育った場合に限り、そのスキルを他の限界まで育ったスキルと合わせて2つのスキル効果を持つ1つのスキルになる場合がある、これがスキルの合成だ。スキルの派生は、Lvが限界まで育ったスキルが新しいスキルに変化することを言う。例えば<剣>を限界まで育てると<小剣>と<長剣>と<両手剣>の3つの派生が出るのでそのうち1つを選ぶと<剣>が選んだスキルのLv0に変化する。
「合成は何でわからないんだ?」
「お前みたいに全部とるようなやつがいないからだよ・・・」
「なるほど。つまりまだ希望は残っているんだな」
「まぁそういうことだな。もし合成できたら教えてくれよ。俺もとるからさ」
笑みを浮かべてはいるが、その顔は真剣そのものだった。6つのスキルを育てなければならないが1つに合わさってしまえばその分枠が空くことになる。10個しかない枠にマサトでも2つステータス上昇のスキルが入っているのだ、その分他のスキルが1つ装備できなくなるのだから真剣になるのもわかる気がする。
「合成できたらな。それで?いつまで歩くんだよ・・・」
「そういえばそうですね?話しながらで気づきませんでしたけど、町からかなり離れているような」
「もうすぐそこだ。後草原は背丈が高い植物のせいでモンスターが見づらいから気をつけてくれ」
そういわれて周りを確認してみると確かに足元は見づらい。というか膝上辺りまで草が伸びているので足元が見えない。そう思っているとわずかに草が揺れた。まるでそこに何か生き物がいるような感じだ。
「なあマサト。そこの草がなんかガサガサいっているんだが」
「まじか、たぶんモンスターだな。ここら西の草原に出るのはウサギに角が生えたホーンラビットってウサギしかいないんだが、小さい上に草で姿が見えないから後ろから角で突かれるなんてことがあって意外と危ないから注意してくれ」
「やっと戦闘かい?それじゃあまずはこの剣のレベル上げと素材の為にそのウサギを倒してみるかねっと」
そういってミサトが剣を右手に構える。遅れてミコが杖をマサトが剣と盾を装備した。
「そういえば、どうしてマサトは盾があるんだ?スキルにもなかったよな」
「よくわからないが、盾の技能は<剣>と<手>を持ってると出るんだよ。だからかわからないが初期に<手>をとると盾がもらえる」
「なるほどね。っと俺もナイフ装備しておくか」
「そうだな、とりあえず俺が盾で抑えるから他の全員で適当にやってみてくれ。特技は装備しているスキルを確認すると自分が覚えている特技の名前とその効果が確認できるからどんどん使ってみてくれ。使い方はその特技名を声に出せばいいから」
そうまくし立てる。なぜ彼が急いで説明しているかというと、説明しながらもマサトはモンスターがいるであろう辺りに入っていったのだが、硬いもの同士がぶつかったような音がマサトのいる辺りから聞こえてくることから戦闘中なのだろう。
マサトの横から前を見るとそこには、30cmほどの毛玉が飛び跳ねているのが見える。その毛玉がマサトに向かって飛ぶたびにマサトは自分の盾で毛玉を弾き飛ばしている。俺はその弾き飛ばした毛玉に向かって走り出し、右手に持ったナイフで毛玉を切りつける。しかしその毛玉は俺のナイフを大きく跳ぶことで避けてしまった。その毛玉を追いかけようとしたところで
「よいしょっと!」
ミサトが剣をバットのように上から振り下ろして毛玉を地面に叩きつけた。毛玉は動こうともがいているが麻痺しているのかその場から動けないようだ。そしてその毛玉に火の玉のようなものがぶつかり、毛玉がガラスが割れるように粉々に砕け散った。火の玉が飛んできた方を見るとミコが杖を前に出した状態で固まっていた。
「お疲れさん」
そういってマサトが俺に声をかけてくる、だが俺としては
「俺、結局何もしてないんだが・・・」
「まぁ最初はそんなもんだ。むしろウサギを剣で地面に叩きつける姉貴にびっくりだ」
「そうかい?これはゲームなんだし気にしてられないだろう。それにあの毛玉の大きさだとサッカーボールに見えてね、あまり気にならなかったし」
「確かにボールみたいでしたね」
「むしろミコが魔法を使って倒しちゃったことに驚きだよ。ウサギが弱いのかミコが強いのか、どっちなんだい?」
「ウサギが弱いんだよ。ここのウサギは動き回る代わりに体力がないんだ」
「なるほどね~。っとそういえば忘れるところだったけど素材ってのは手に入ったのかい?」
「ああ、モンスターを倒すと自動的に道具に何か入るはずだ。ホーンラビットの場合は『角兎の角』か『角兎の毛皮』のどちらかだ」
「食べ物みたいなのはでないんだな」
「フリスタには食べ物がないんだよ。空腹度みたいなのがないだろう?」
「あ~確かにないな。じゃあこのゲームだと食事をするってことができないのか」
「そういうことになる。というか、もし食事が必要だったら<調理>みたいなのがかなり活躍しそうだな」
「どうしてですか?」
ミコの質問はマサト以外の全員が思ったことだ。なぜ食事が必要になったら必要になるのか、ゲームなんだからNPCのお店が・・・
「最初の町を見ただろう?あの町にNPCはいない。もちろんお店もプレイヤーが開く露店しかない」
マサトの言葉に全員が固まる。なぜならNPCがいないということはネットゲームでよくあるクエストのようなものもなく、武器屋や道具屋といった戦うための準備をする為の店もないということだからだ。
「それじゃあ装備を新調する場合はどうするんだ?後回復のためのアイテムとかは・・・」
「全部プレイヤーのスキルでできるだろう?つまりプレイヤーが何か作らない限りアイテムは出回らないし、お金も基本的に出てこない。買い取る側もプレイヤーだからお金が手に入ることがないんだ」
「なんといいますか・・・。変わったゲームなんですね?このフリスタというのは」
ミコはいまいちこの話の重要さはわかっていないようだ。だがゲームをいろいろやっていた俺にはこの話は異常に聞こえる。今までのゲームでは町に行けば回復を行えたり、狩りに役に立つアイテムが手に入ったり、クエストとよばれる依頼を受けたりできる、そんな場所だった。だがこのゲームでは町には何もない、つまり回復アイテムが欲しいプレイヤーがいてもそれを売ってくれるプレイヤーがいなければ手に入らないということだ。
そんなことを真剣に考えていた俺にマサトはなんでもないように
「でも実際はそこまで深刻な問題でもないんだよなー」
そう言い切った。すかさず俺はマサトに質問する
「でもマサト、回復するための道具や武器・防具が手に入らないってのは困るんじゃないのか?」
「あ~・・・それなぁ。だって姉貴みたいにとる人は道具作成のスキルとるしさ、回復の特技は属性スキルを5まで上げるとどの属性でも覚えるんだよ。ちなみに補助はLv0が回復の特技だけどな」
その話を聞いて慌てて自分のスキルを確認する。そこには
<補助>Lv0 ヒーリング:対象のLPを回復する
<妨害>Lv0 バインド:対象の移動を妨害する
ちなみにLPは体力のこと。それ以外にMPという特技を使うためのものがある。LPとMPは時間経過で回復することができる。
「確かに回復するための魔法があるな」
「だろう?だからあんまりNPCがいないことは問題にはなってないんだ・・・ただ」
「ただ?なにかあるのかい」
「さすがにプレイヤーしかいないゲームってのは寂しいからね、他の町を探すってのがテスター全員の考えだったね」
「確かにあの町にいつまでもいたいとは思えませんね」
「そういうことだ。よしそれじゃあしばらくここらでウサギ狩りしてみようか」
マサトの言葉に全員が辺りにモンスターがいないか探す。そして見つけたら全員に知らせ戦う。それを2時間ほど繰り返したのだった。
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