世界設定とゲーム入手まで
もしも、この作品の投稿以前に似たような名前の作品がありましたら教えてください。場合によってはタイトルを変更いたします。
VR機器が世界中の家庭に広まって4年がたった。
広まった当初はどの企業もこの新しい技術を使ったソフト作りに力を注いでいた。しかし3年前に起きたある事件が原因でVRのソフトにゲームと言うジャンルはほぼ消滅してしまった。
事件の名前は通称『アングラ事件』と呼ばれている。VR機器『ドリームボックス』の開発に関わったゲーム会社の一つ、EF社が作成したVRホラーゲーム『アンダーグラウンド・オンライン』が起こした事件(というより事故)だ。
『ドリームボックス』は催眠誘導装置の技術を使った、夢の中でゲームができるというものだった。しかし恐怖や刺激を感じると、夢から覚めてしまう人が大半だったのだ。つまり大半の人がゲームの途中でログアウトしてしまうという事態が起きた。
ログアウトしてしまったプレイヤーは、再びゲームをプレイするためにログインし、また恐怖で目が覚めるという事を繰り返した。結果、不眠症や酷い場合は精神病院に通う事になった人が大量に出てしまったのだ。
どうしてそのような事態になるまでプレイヤーがゲームを続けたのかと言うと、『アングラ』を最初にクリアーしたプレイヤーに賞金1億円が渡されるイベントが発売前に発表されたからだ。
世界中のプレイヤーは賞金欲しさに無理を繰り返したのだ。各国はゲーム1つで大量に病人が出てしまったために、賞金が出るイベントを行う場合に『プレイヤーの(心身の)安全が約束されなければ違法となる』といった法律を作って同じような事が起きないように注意を促した。
その後はファンタジー世界を体験するようなゲーム(ただし戦闘などはない)や旅行を体験できると言った安全第一のソフトがいくつも作られた。
だが新しい機械ができれば、それを使った犯罪も出てきてしまう。その中でも最も多く起きた犯罪は『ドリームボックス』の催眠誘導装置としての機能を使った催眠暗示だ。
ソフトを起動して普通にゲームを遊んでいると、徐々に暗示がかかっていくというもので、最悪洗脳に近い状態の人も見つかっている。
こうなってくると、国としてはVR機器というものの使用に制限をかけるしかなくなってしまった。
各企業は利用者の減少に伴い、利益の見込めない一部ソフトの販売中止やサービス停止を行った。その結果が今のVRゲームの減少につながっている。
『アングラ事件』から今まで新しい発表を何も行わなかったEF社が、新しいVR機器の発表と専用のVRMMOソフト『フリースタイルオンライン』を発表したのだ。
新しいVR機器の名前は『アウターギア』と名付けられ、『ドリームボックス』の『催眠誘導の技術を使わずにVR世界を体験できる装置』をコンセプトに作られた。『アウターギア』は電気信号を直接脳に送るために頭部にヘルメット型の装置と首の後ろ側に電極の付いた装置の2つを付けて、それぞれをコードで繋いだ形だ。
首の電極が脳から身体中へ向かう電気信号を受け取り、ヘルメットから脳へ電気信号を送る。
こうすることで使用者により現実に近い形でVR世界を体験できるようにしたのだ。
この発表に世間は多いに盛り上がった。『アングラ事件』の再来ではないかという批判の声や、新作MMOの発表ということで若者の喜びの声など賛否両論ではあったが、だからこそ盛り上がった。
そして発表から1週間で政府関係者と行った1週間のクローズドテスト、さらに2週間の募集期間を経て行われた1ヶ月のオープンテスト。(しかもこのテスト参加者にはVR機器のプレゼントまで行われている)
どちらのテストでも特に問題は起きず、ソフトとVR機器のセットを初期販売1万セットという形でGoサインが出た。初回発売は来週の頭。それ以降は機器の生産の問題で次回販売は2ヶ月後ということもあり、オープンテストの情報を見たゲーマー達が予約開始直後にゲーム販売ページに殺到し、一時サーバー落ちてしまい、ページが使用できなくなる事態が発生したりもした。
何故俺が今こんな事を長々と思い出しているかというと、そんな事態になっているとは知らずに、大学に行く前にゲームショップで予約しようと考えていた俺は、ショップで自分の考えがどんなに甘かったのか知ることになった。
そして現在・・・
「はよーっす。・・・どしたんだ?机に突っ伏して」
机に額をつけて周囲の情報の一切を拒否していた。
「おーい、どうしたんだ?せっかくフリスタの予約が開始されて、来週には発売されるっていうこの時期に」
その予約ができなかったんだよ、とこいつに怨みをぶつけてやりたいが、意味がないのがわかっているので無視し続ける。
「・・・もしかして予約に失敗か?どうせ並ばなくても手にはいるとか考えて、店に入ってから撃沈したんだろお前」
その通りだよチクショウめ!
それにコイツのことだそのまま反応しないでいると肯定していると考えたのだろう
「だから競争率が高いって言っただろうがったく、・・・そんなお前にこう言うモノが今の俺の手にあるんだが?」
そう言ってコイツは何かの紙を動かしているのだろうか、ぴらぴらと紙を振る音がする。
「お前さ、この俺、小田真人様がテスターの抽選通ったの忘れてねぇかい?そして製品版で友人とプレイできるようにEF社からの優先チケットがテスターに配られるってことも・・・」
その言葉を頭が理解するまでに少し時間がかかったが、理解してからの俺の動きは速かった。
起き上がり、目の前の男が持っている物をそいつの手ごと掴んでから確認する。
突然の俺の行動に驚いたのか真人が微妙に引いているが俺はそんな真人を無視して紙の内容を確認して
「・・・これを見せたってことは俺にくれるってことでいいのか?」
「あ、ああ。というか貰ってくれないと、俺が姉貴に殺される・・・」
「(・・・何か言ったか?まぁ問題ないな)でもなんで2枚あるんだ?」
「片方は命ちゃんに渡してくれ、姉貴が『最近命ちゃんと遊んでないの、これなら遅くまで遊べるでしょ?』って言って俺のPCに手を置きながら頼んできてな・・・。まぁお前ら兄妹に渡すつもりだったからいいんだけどさ」
「ちなみに命に渡らないとどうなるんだ?」
「俺のPCの中身が親に伝わったあとに、本体は姉貴の手で破壊されるってのが一番想像しやすいな・・・」
「そうか、それはそれで見てみたいかもしれn「そうなったらお前のPCの中身を命ちゃんと伝えるぞ」・・・ばか!やめろ?!そんな事をされたら命が暴走するだろうが!」
「死なば諸共ってな」
そう言って真人はニヤリと口を歪める、そして
「どうせ受け取るんだろ?早く俺を楽にしてくれ・・・」
そう言って俺の方に2枚のチケットを出す。
それを受け取り
「ありがたく遊ばせてもらうよ」
「おぅ。予約が終わったら攻略サイトでもみとけよ。それとオススメのスキル構成の確認もな」
「一応確認はしてみるけど、同じようなスキルになるのはなぁ・・・」
「失敗しても俺は知らないからな」
俺はその後は講義の内容もほぼ頭に入らず、今日受ける予定の講義が終わると、用事があるという真人と別れてダッシュで帰宅した。
家に帰ると親へ帰宅を伝えるとすぐに2階へと上がり自分の部屋のパソコンを起動した。
VR機器が広まった今でもパソコンは普通に存在していて、書類作業などの仕事はパソコンの方が処理しやすいので向いている、なのでパソコン利用者がいなくなる事はないと言われている。
そしてEF社のホームページから招待チケットのID情報を入力し、自分の分の予約を終えると早速攻略サイトを探し始めた。
攻略サイトは『オープンテスト時の情報なので仕様が製品版とは違いがあるかもしれない』と大きく書かれてはいたが、俺の予想では大きな違いがあるとは思えない。発表から発売まで半年も無いからだ。
ちなみに発売は7月20日と、大学生にとっては夏休み前の一番忙しい時期だったりする。
フリスタのシステムはフリースタイルの名前の通り職業と言うものが無く、『スキル』と呼ばれる技能を装備する事でそれぞれ違ったプレイスタイルができるようだ。
スキルを手に入れるには『スキルポイント(SP)』を消費して、メニューにあるスキルツリーと呼ばれる場所で手に入れる事が出来るようだ。
手に入れたスキルは最大で10個まで装備する事ができる。それ以外の装備していないスキルはスキルツリーに戻るので、使うスキルを交換する場合は装備するスキルをスキルツリーから選らばなければならないようだ。
最初にキャラクターを作る時にスキルポイントが10ポイント分用意されているので、それを使って自分の好きなように作成するようだ。
ただし、スキルを覚える時に消費するポイントはスキルによって違いがある。
主に《パッシブスキル》と呼ばれる物は消費が1。《アクティブスキル》と呼ばれる物は消費が2のようだ。それ以外だと《特殊スキル》と呼ばれるスキルのポイントを3消費するようだ。
初期に覚えられるスキルは少なくその中でも消費1のパッシブスキルの数はステータス6種しかない
力<STR>、速度<SPD>、体力<VIT>、
知力<INT>、精神<MIND>、器用<DEX>
消費2のスキルには
<剣>、<斧>、<槍>、<棍>、<杖>、<弓>、<銃>
これら武器マスタリーと呼ばれるスキル
<帽子>、<鎧>、<手>、<腰>、<足>、<アクセサリー>
これら防具マスタリーと呼ばれるスキル
<火>、<風>、<土>、<水>、<光>、<闇>
これら属性スキルと呼ばれるスキル
それ以外に<補助>、<妨害>
この合計21個のスキルがある
消費3のスキルには
<作成>、<修理>、<発見>、<感知>、<罠>、<道具>
が選べるようだ。
ステータスについてはそれぞれどう関係しているかゲームをやっている人にはわかると思う。
ただひとつ違うことがあるとすれば、速度は動きの早さではなくスキルの再使用時間を短縮するらしい
スキルの再使用時間はクールタイム(CT)などとよばれることが多く、意味は同じスキルを使う場合に『決められた時間がたたないとそのスキルはもう一度使うことができなくない』という制限をかけるためのものだ。
ただし、同じスキルを使用する場合なので、いろいろな特技を覚えてしまえば関係なくなってしまうゲームも多く、フリスタもあまり気にしなくてよいステータスだと書かれている。
フリスタのシステムはSPを消費してスキルを手に入れてからが普通のゲームと違う。
だいたいのゲームでは、スキルをとれば自動的にそのスキルの特殊技能(特技)を使える。又はスキルのレベルが上がれば徐々に新しい特技を覚えていくというものが多いが、フリスタでは複数のスキルを装備することでそれらが合わさった新しい効果の特技が出てくることがある。
例えば<作成>と<鎧>の二つを持つことで<防具作成・鎧>という特技が使えるようになる。
<剣>と<水>の2つを持つと<魔法剣・水>が出てくるし、<銃>と<水>なら<魔導機・水>となる。このゲームでは<銃>は<杖>と同じように魔法を扱うための道具のようだ。
ここまで説明をみて、俺は初期の10ポイント分の使い道を決定したので攻略サイトを閉じパソコンの電源を切ってから部屋を出た。
そういえば真人がオススメのスキル構成も見ておいたほうがいいとかいっていたきもするが、気にしなくてもいいだろう。失敗したときは作り直せる、それがゲームなんだし。
1階へ降りると妹の命が帰ってきていたようなので、真人から貰ったチケットを渡してしまおう。
「なぁ命、フリスタってしってるか?」
「宣伝などで大きく出ていますから知ってはいますけど、どうかしましたか?」
「あ~、里美さんって覚えてるか?真人のお姉さん」
「はい。何度もあっていますから、それで里美さんがどうかしたのですか?」
「真人がフリスタのテスターに当選していてさ、テスターは友人とプレイできるように5人まで優先的にゲームが購入できるチケットが手に入るらしいんだわ。それでこれを今朝真人に貰ってな」
そういって、命の分のチケットを見せてあげる
「俺の分と命の分の2枚貰ったから、やってみるか?やるなら自分のパソコンで申し込んでおいてくれ」
「やってみたかったのでうれしいです!でもお金が・・・」
「バイト代がたまってるから今回は俺が出してやるよ」
「ありがとうございます。兄さん」
命が満面の笑みを俺に向ける。さすがに妹とはいえ高校生の女子、しかも贔屓目に見なくても美人だといえる女子からの笑顔は俺には刺激が強すぎるので、その感情をごまかすために急いでお金を下ろすため外へと向かった。
そして1週間が過ぎ、ついにソフトが俺たちの下に届いた
誤字、脱字、質問がございましたらどうぞ。ただ、返信は活動報告またはこちらでおこなわせていただきます。ごめんなさい