間話3
※ 男女のそういう雰囲気があります。
季節が変わった。
夏の夜には、鎮魂のために花火を上げるという。花火を見た事がないルドヴィクは、暗い夜空に上がる大きな花を、目を大きくして見上げた。その更に下から彼の様子を見上げるアリエリアナも、満足げだった。
「お前が上げてんじゃないだろ」
「ヴィーカ、私は金と権力に物を言わせる事ができる女よ?」
花火の帰り道。帝国の上流階級が飲むワインだと、連邦人の五臓六腑には少し物足りないらしい。数少ない強い酒を商店で買い求め、邸宅に戻った。
リビングのローテーブルに、ショットグラスに一番近い小さなグラスを2つ用意する。
「本当に飲むつもりか?」
「私に出来ないことなんてあると思ってるの?」
得意げにふふんっと胸を張る。
フラグだろそれ。
嫌な予感がして水も用意したが、遅かったらしい。
アリエリアナはグイッとグラスを煽っていた。1杯全て。
「馬鹿!」
アリエリアナの身体が、ソファに力無く崩れる。よく見ると目を回しているようだ。ルドヴィクは彼女を抱き上げ私室に運んだ。が、鍵が開かない。この邸宅の設備は古く、鍵は全てアナログ時代の物を使っている。部屋の主は目を回して使い物にならない。そしてこの家の使用人たちは、本日は鎮魂祭ということで家に帰していた。
(その自由になる日を狙って、度数の高い酒を飲みたい!と言ったのはコイツだが…)
仕方無く、ルドヴィクは自分に当てがわれていた部屋のベッドに寝かせ、アリエリアナの服を緩めてやった。
白く細い首。ルドヴィクが力を入れれば、すぐに折れてしまいそうなくらい。
「う……っ」
気付いたようだ。
「水、飲むか。」
ベッドサイドに用意されている水差しの水を渡してやると、相当渇いていたようだ。奪うようにごくごくと飲み干し、はー…と長く息を吐く。
「嘘でしょ…人間の飲んで良いモノじゃないわ……」
「慣れない物を一気飲みするから…」
「っていうか、馬鹿って言ったー」
雰囲気がいつもと違う。しっかり酔ってるようだ。
「ヴィーカの飼い主は私なのに!馬鹿って言った!」
枕を使ってボコスカと殴ってくる。酔っ払い面倒くさい。
「やめろ酔っ払い」
「シラフだもん!」
「いや、嘘だろ」
間抜けな雰囲気に、つい笑ってしまうと、それも気に食わないのか、むーむーと言いながら枕を殴った。
「やめろ、じゃじゃ馬」
たいして力の入っていない拳を片手で止める。
「これ以上酔いが回る前に、このまま寝ろ」
「ヴィーカは?」
しおらしく聞いてくるが、こんな酔っ払いと一緒に寝られるか。
「大型犬扱いしてるけど、俺だって男なの。わかるか?じゃじゃ馬女」
「知ってるわ」
どっちを?自分がじゃじゃ馬だっていうのを?
「貴方が男性だって、知ってる」
真面目と不安を合わせたような、初めて見る顔をする。
「……後悔しないか?アリエラ」
呼ぶと、アリエリアナは大きく目を見開いた。
「私は決して、私の選択に後悔なんてしない」
今まで、どれだけの選択をして来たのだろう。少女の言葉にしてはあまりにも重い。
まだ水の残る形の良い唇に、ルドヴィクは唇を重ねた。
「一体……何をしているんです!?貴方たちは!!!」
翌朝、早めに帰って来たエイレーネーに見つかってしまった2人は、ベッドの上で正座させられていた。
「貴方たち2人を野放しにした私が馬鹿でした…」
頭が痛いのか、こめかみを揉んでいる。
「あのね、エイレーネー。さすがに何か着たいわ」
アリエリアナだけ素っ裸だったため、シーツでぐるぐる巻きにされている。
「着替え持って来て」
「お嬢様!!!」
「おいアリエラ、お前の側近かーちゃんみたいだぞ」
「エイレーネーはいつもこうなのよ。お母様より厳しいわ」
隠す気も無く、憤慨する人間の前でひそひそと小声で話す。エイレーネーは怒りながら出て行ってしまった。
今更だが、これはかなり気まずい。ルドヴィクの耳に少し熱が宿る。
「心配しないで、あと1時間もすれば元に戻るわ」
アリエリアナにはそうだろうが…
「1時間そのままだと、お前風邪ひくぞ。あとシャワー浴びろ」
「……てないの」
「何?」
聞き返すと、アリエリアナは涙目で、頭のてっぺんから鎖骨辺りまで真っ赤になった。
「立てないのよ………痛くて」
「アリエラ……それ反則だろ」
帝国の飲酒喫煙は成人になる16歳から。上流階級だと家庭によります。夕食や社交でワインが出るので、16歳からがほとんどです。
性的なあれそれに関して、帝国女性は早くて14歳で嫁ぎます。が、女性達の身体のため、性交渉に関しては16歳から、と帝国法で定められました。それでも早いけどね。
つまり何が言いたいかというと、帝国内では合法です。




