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my tale  作者: Shiki
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けーこ物語(エピローグ)

 私の名前は、けーこ。たくさんの名前があるけれど、私はただの「けーこ」でいい。タイトルなんて、いらない! 私、貴族なんてなりたくなかった。ましては、


「神子様。こんな所にいたのですか? 探しましたよ」


 『神子』なんて、なりたくなかった!


「じょ、ジョウイ。ジョウイは、どうしていつも私を見つけられるの?」


 そうよー、なんという不思議現象。私の特技の「かくれんぼ」が、ジョウイには効かない! どうして、こんなにまでも見つかりたくない人に、見つかってしまうの?


「それは、私のディランド神への信仰の深さなんではありませんか?」


 うっそだー。絶対に、ディランドが面白がってジョウイになんらかの力をあげているとしか考えられない。


「そんなに逃げても、お勤めが終わる訳でもありませんよ。かえって、増えていると言うことに気づきませんか?」


そんなことは分かっているけど、逃げたくなるのが人の心理。って、私は、まだ人なのよ! どうして、『神子』『生神』にされないといけないの!?


 はっきり言って、私にはなんの力もありません。毎日、私を拝みに来ても何もできませんよ。

あ~、私は、優雅な公爵婦人としてお茶会をしている方が、教会でたくさんの人達から頭下げられるよりマシ。


「さー、お仕事へ戻られますよ」


 私は子供のように、足の裏を床にべったり付けて動けないようにするけれど、引きずられて行く。なんだ、この上等なスリッパは? 私が孤児院で履いていたブーツだったら、きっと床にしっかり捕まることができたかもしれないのに。


「ジョウイ、別に私に祈っても、私なにもできないよ」


「いいえ、神子様を通して、ディランド神が我々の願いをお聞きしております」


「ジョウイ、私は神子じゃなくて、けーこだよ」


「神子様は、神子様です」


 どうしてジョウイは、こんなに頑固なんだ!? 渋い大人の男がどこへ行った?


「けーこ」


「ドレリー」


 きゃー、私の騎士様が、ヒロインを助けに来たー。きゅー、やっぱりドレリーは騎士の制服がお似合い。格好良い。この頃やっと前のように潤った美形が戻ってきた。


 私がこの世に戻って来た時は、ドレリーの顔を見て驚いた。いやー、日本の百物語を暗闇の中で蝋燭一本付けて読んだ時より、怖かったよ。って、なんで私がそんな蝋燭一本で本を読んだって?


 うん、実は、ドキドキして百物語に挑戦~と思って読み始めたの。中学校に入った時に、前から気になっていた日本の童話『百物語』を読む決心をしたの。やっぱり、中学生だから大きな子になったから、小学校を卒業したんだから読むぞーと言う決心をして、図書館で本を借りた。そ、そしたら、怖さが盛り上がって来た時に、嵐で、停電……になってしまった。


 イヤー、普通はそこで読むのを止めるけれど、私は気になって気になって仕方なかったから、蝋燭をつけて読んだの。

お母さんが「蝋燭の無駄使いはよくないので、一人一本ねえ」って、蝋燭一本くれた。私はその可愛くない真っ白な細長い蝋燭に近づいて本を読む。外は嵐で、「ぐあー」蝋燭は「ゆらゆら」こわっかったよー。流石、ホラーの国のにっぽん。昔からホラーが、すごい。


 ホラー童話、バカに出来ません! って、なんでホラーの話をしているの?

まあ、ネタがなくなったら『百物語』をこの世界に紹介してもいいかな。って、ディランドに貰ったお願いが、憎たらしい。怖い話なんて、覚えていたくない! 夜トイレに行けないよ。って、ドレリーを起こして付いて来てもらおう。もう私とドレリーはラブラブ。


 私が起きた時のあのドレリーの痩せこけた姿を見た時は、ビックリしたけれど「ジーン」と感激してしまった。起きてからも、何日も私にべったりで離れない。

もう一気に私とドレリーは一体になったの。もう「夫婦一心同体」、は~、なんと言ういい響き。 私とドレリーで愛をもっと深めたいのに、次々訪れる人、人。


 サイラックさん、ユート、リュウーヒ、ソニ、アットおじさん、トリーやドレリーママまでは、うれしい。王様、王妃様、王子様を初めとするお偉い方々。なんで私に平服しているの?


 身分、そっちが上ですって思ったら、「けーこ様は、神子です。もちろんこの世界の王族より、身分は尊い者です」私は、終わった。と思った。


 これぞ異世界トリップの最後の到着地点。最強の存在。この後の展開は、決まっている。この世界をよくして、何年も生き続けてハーレムが自然に持つようになって過ごす。初めは楽しいけれど、段々と永遠に続く人生がイヤになる。その後の展開が気になるけど、この手の話の展開は決してその最後を書かない。ただ最強なまま優雅に過ごしている場面でしか終わらない。


 いやー、異世界トリップパターンの終わりって、テンプレしているよねえ。


 恋愛だったら、すれ違いの結果お互い好きと知って急接近した後に盛り上がって終わり。それか、なぜかトリップが夢パターンの展開は、日本で異世界で出会った彼の生まれ変わりと出会ってまた新しい話の始まりとか。

これは、異世界で身分違いで結ばれなかった恋人同士が、殺された後に日本で結ばれると言うパターン。戦争の後に、別れ別れになった二人が日本で同じ高校生としてクラスメートで出会うパターンとか、読んだ時に「戦争で戦った人達が、高校生~?」と思った気もする。


 異世界トリップの「バッドエンド」は、許されない。わざわざ異世界に来てまでも、現実社会であるまいし不幸になる必要なんてない! そんな話は読みたくない! 異世界トリップは、ハッピーエンドと言う密かなテンプレがあるから、人は同じ内容なのに何度も読むのよ! って、またもや脱線。私のトリップも思いっきり都合がいいよねえ、と思ってしまう。


 ディランドに聞いた話。私のことは日本で、加奈子達にどう知らされたと思う?


 なんと、「面接で、アラビアのシークがちょうど日本に来ていて、放送局のインタビューを受けていた。そこで、私に一目ぼれ。私も彼の真っ黒なまん丸い目に一目惚れ。惹かれる二人。そのまま盛り上がり……ホテルへーレッツゴー。シーク、金持ち。

パスポートを無視して、私を攫った。もちろん自家飛行機で。私も喜んで付いて行った。その後は、アラブのどこかのハーレムに囲われて幸せに過ごしているから、みんなには連絡できない。

ちなみに、私の持ち物はご丁寧にシークの部下が持って行ったと言う話になっているんだって!」


 その話を聞いた時は、ディランドを殴ろうとしたけど空振りだった。な、なんという三枚芝居? もっとまともなシナリオを作ってもらいたかった。


「今日は早くに仕事が終わりました。最近、あまり家に帰れなかったので今日は早めに帰っていいと許可を陛下に頂きました」


 よっしゃー。と心で喜ぶ。私は、ちゃんと王様にドレリーの仕事を減らすように美味しい飴をあげたの。なんかキャラが変わったって? 

だって、そうしないとドレリーと過ごす時間がないもん。私達は、まだ新婚さんいらっしゃいなのよ。王様の飴は、「あの世の話」あの世と言っても日本や地球の話なんだけど。飛行機の話とか、人が月に立った話とか。でも、これは王様にしか話さない話。


 こんな話をするとサイラックさんが、今より狂う。もうサイラックさんって、エネットのお父さんの資料の研究に没頭して、最近あんまり会っていない。

あの地球儀のことを聞かれた。私は、またいつか何年先に教えてあげると約束したの。きっと、この世界の人は、私のせいで頭がコンガラがっていると思うから。急な変化はあまりよくないと思う。トリーは毎日、サイラックさんの所へ行っている。今は、とても明るくて彼女の本来の綺麗さが出て来ていると思う。


 ユートは、私がこの世界に戻って来ると知っていたと言った。そして、一番元気だった。相変わらずに私の家へ休みの日は入り浸っている。あれって、ドレリーをカラかっているんだと思う。サリーがユートにとても懐いているの。


 ユートもサリーに勉強を教えたりしてくれる。でも、サリーはまだ一度も言葉を話ない。トリーにならった縫い物で、ユートへシャツを縫ったりして可愛い。私は本当にこの世界へ戻ってこれてよかったと思った。

私はサリーのお母さんだった。きっと私が戻ってこなかったらサリーは、壊れていたと思う。それくらい、サリーは私を心配してずっとドレリーと私の側に付いていてくれた。リュウーヒは、相変わらずリュウーヒ。でも、私が眠っている間に痩せたみたい。今は、エネットから毎日逃げ回っている。ううん、エネット以外にお城の侍女達からも。


「しかし、ミトレ公爵様。神子様の仕事はまだ終わっておりません」


 ジョウイが、少し声を濁して言った。


「けーこは、けーこです。私の妻で、神子でもありません。どうして、自分の妻と過ごす時間がこんなに少ないのですか? 

私の母上は、まだ結婚していないのにアット様とべったり四六時中いるのに、私は合わない日が多い。やっと、スイ国のことが終わってゆっくり出来るのに。それなのに、ジョウイ神官長は私達の邪魔をするのですか?」


「イヤ、邪魔もなにも……」

 

 ドレリーはカルメンのおかげでスイ国へは行かないですんだけれど、あの王女様の事件の片付けで毎日忙しかった。結局、当初の予定通り、王女達は僻地へ幽閉される。軟禁じゃなく、幽閉。


「神官長、夫婦の仲を壊すと後で痛い目にあいますよ」


「これはこれは、サイラック様」


 サイラックさんが相変わらず爽やかな笑顔で、私達の所へ来た。はて、研究者は、もっとヤツレているのでは?


「サイラックさんがここに来るの、珍しい」


 私が話しかけると、本を一冊私に渡した。


「ええ、新本が出来ましたので、ぜひ先にけーこさんに読んでもらおうと思って」


「っえ!? 新本? それって、私の本?」


「いいえ、それは違います。他の人が書いた童話です」


「う、うそー」


 私の胸がドキドキする。この世界で童話を作る人が誕生したんだ。私は高鳴る胸を抑えて、一頁を開いた。


『けーこ物語


 昔昔、ある村に心優しい夫婦がいました。この夫婦は、とても優しく村人全員に愛されていました。夫婦はそれはそれは幸せに暮らしていましたが、一つだけ悲しいことがありました。二人には、子供がいません。二人は、親のいない子供たちを引き取って育てていました。


 でも、毎日、ディランド神に子供を授かるようにお祈りした。ある日、ディランド神がその心優しい夫婦の願いをお聞きになり、可愛いらしい少女を送ってきました。夫婦はその少女に「けーこ」と名づけました。けーこには不思議な力がありました。物語を作り出すのです。その力で、人々を楽しませてくれました。


 けーこのことを聞いた王様は、その少女を王宮へ呼びました。王宮では、悪い王女が綺麗な騎士様を呪いで操っていました。その悪い王女のせいで、王宮は闇に埋もれていました。


 王宮でけーこは、力を使って愛の話をして回りました。その話を聞いた人々は、王女の呪いから覚めました。最後に騎士様がけーこの話を聞いた時に、呪いから覚めました。けーこを見た騎士様は、彼女に一目惚れをしました。力の弱くなった王女が、けーこをナイフで胸をさしました。倒れたけーこが最後の息を吐こうとした時に、

「愛しています」

騎士がけーこにキスをしました。そしたら、剣が光ってけーこの体から離れました。キスをされたけーこが息を取り戻しました。


 悪い王女は、実は王女になりすました魔女だったのです。魔女は、その愛の力を見て溶けてしまいました。けーこと騎士は、結婚して、それからも仲良くすごしました。


 めでたし、めでたし。作家 ヨネリオット』


くっ、これ、破って捨てていいですか? どこがめでたし、めでたし? なにこのツッコミどころ満載な童話。なんで、

「優しい夫婦」が異様に強調されているの? って、魔女が溶けるって、『オズの魔法使い』のパターン? 


 このキスも『眠り姫』をパクっているし。って、脱線だけど、私の刺された剣は、な、なんと金の剣に変わって、今神殿で神の剣として拝まれているの。ほんとに、『金の斧』のパクリだよねー。


「まさかヨネさんにこんな才能があると思いませんでしたよ。二作目は、何でも『ヨネとミネの愛の物語』を書かれるそうです。ぜひ、それも我が社で出版したいものです」


 やっぱり、サイラックさんは、抜けている。文学の才能がないと言っていた言葉を思い出す。よく今まで会社倒産しなかったよなー、って、私のおかげ?


「でも、こうしてけーこさんがこの世界へ来てくれたおかげで、人々は想像することをするようになりました」


 サイラックさんが爽やかな笑顔で私に言った。


「はい、けーこさんのおかげでこの世界は豊になっています」


 ジョウイが言った。


「私は愛する人に出会えました。私の元へ来てくれてありがとう。愛しています」


 ドレリーが私の体を抱きしめて囁いた。


「う、うん。私もみんなにドレリーに会えて幸せです」


 私はドレリーにキスをして、ジョウイとサイラックさんを見て笑いかけた。


 私は今日も晴れた青空を見た。

 あー、サンサンと光る太陽。


 この空が日本へ繋がっていないけれど、私は童話を通して地球を思い出します。


 ディランド、私はこの世界へ来れて幸せです。


 私も童話のヒロインのように、めでたし、めでたしの幸せな人生を愛する人達と生きます。


(私の童話


 どの童話にも、夢と希望と悲しみと喜びがあるの。私の童話、そんな思いを込めた童話。)

 「私の童話」は私の処女作です。二年前にネットにあげましたが、物書きを続けることを悩み何度もこの作品を消したりサイトを移動したりしました。その度に数人の読者さまから、応援やもう一度この作品を読みたいというお手紙をもらいました。本当に「私の童話」を好きとおっしゃってくださった方々に感謝しています。

 「続編私の童話」はPCが壊れた時になくしてしまいました。覚えているあらすじを書きます。

 この度は、再度お気に入りや評価をしてくださった方々、最後まで読んでくださった読者さま、本当にありがとうございます。



 神子になったけーこ。私童話から五年後。

 ユートとサリーの恋。言葉を話すことができないサリーがユートに心を開いて言葉を話す。


 リュウートの汚い家にお仕掛け家政婦のエネットの恋。紺の色が黒に近いから、エネットを邪魔に扱うけれど、彼女の存在が身近に感じてくる。


 トリーもサイラックさんのお母さんに会いに行くという理由で家に居座って、ほとんど通い妻と世間に言われている。噂でサイラックさんはトリーを嫁にする。


 海を越えた大陸に古代エジプトに似た国へ、ドレリーが親交を持つために外交で行ったきり戻らない。

 とうとうけーこはドレリーを探しに、周りの反対を聞かずに行く。ジョウイはけーこ探知機でついて行く。


 異世界の古代エジプト。ファラオーの義母がファラオーを殺害しようとしていた。ドレリーは彼女にとらわれていた。

 世界中の童話にのせて、この陰謀からドレリーを救い。サマリーの結婚式まで戻る話。


 いままでお世話になりました。みなさまそれぞれの童話がハッピーエンドでありますように。ーーshiki-yonaka

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