第六章 設定 + おまけ
第六章 設定 + おまけ
●キャラクター
『クロノ・フォン・ストラトス』
所属:帝国 身分:ストラトス伯爵家当主 年齢:15歳
武勇:130
魔法:110
統率:60
知略:65
政治:60
忠誠:70(帝国)・80(ストラトス家)
備考
本作主人公。現代日本からの転生者。
帝国内でその名を知らぬ者がいない有名人。それどころか大陸中に彼の名が広まり始めている。
『人竜』の二つ名を持ち、時には『帝国の守護竜』とも呼ばれる。
なお、彼をよく知る人物からは偶に『スケベ人竜』と呼ばれることも。
逆に彼をよく知らない人物からは『敵味方問わず治療する善人』『貴族さえも容赦なく焼き殺す破壊の権化』『慈悲深き賢君』『手柄を根こそぎ持っていく厄介者』と、評価が二分されている。
ただし魔女裁判の時に見せた奇跡もあり、ややプラスの評価が今は多い。
ついでに『真実の愛の求道者』としても有名。彼が作った『男女逆転パーティー』は帝都から文化の最先端として発信され、後世にも『真実の愛に一家言ある人』として語られるのは確実である。
帝国を留守にしている間に帝都が燃えたあげく、その戦いで父親が……。
『アナスタシア・フォン・オールダー』
※パラメーターに変動はない為省略。ただし『忠誠』の項目に『60(ストラトス家)』が追加。
備考
旧オールダー王国の最後の女王にして、現在はクロノの婚約者。
一見すると冷徹な美女だが、身内にはけっこう甘い。そしてツッコミ気質なのもあって、ストラトス家には即馴染んだ。本人はそのことを複雑に思っている。
『あらゆる分野で80点以上』と評されることもある、器用貧乏ならぬ器用万能。しかもその上で計算能力は卓越したものがあり、砲手としては並々ならぬ才能をもっている。
武芸にも秀で、英雄と呼べる程の剣と魔法の使い手。まさに才色兼備。
ただし、王族として自身の結婚に対し政治的な割り切りをしている一方、ロマンチストな面も。
乳姉妹であるドロテアからの評価は『ツンデレあざと可愛いムッツリお嬢様』。
どことは言わないが『H』。どことは言わないが。
『ドロテア・フォン・スターク』
所属:旧オールダー 身分:アナスタシアの専属メイド 年齢:18歳
武勇:20
魔法:30
統率:25
知略:55
政治:40
忠誠:80(オールダー)・99(アナスタシア)・50(ストラトス家)
備考
アナスタシアの乳兄弟ならぬ乳姉妹。
紫がかった銀髪をボブカットにした美女。一見するとクールなメイドさんだが、頭の中はだいぶトンチキ。
アナスタシアに仕えることと、アナスタシアで遊ぶことを生きがいとするちょっとアレな人。天然なようでいて策士……に見えるガチの天然。色んな意味で。
それでもアナスタシアとオールダー王国への忠義は本物であり、帝国と連合軍の決戦ではアナスタシアの影武者として戦場に立ったことも。
オールダーの未来の為、アナスタシアには是非ともクロノを篭絡し、世継ぎを作ってほしいと考えている。
そういう理由でよく『お嬢様』をけしかけるメイドだが、本人もそういった経験は一切ない上に、わりとビビり。
アナスタシアからのあだ名は『駄メイド』。メイドとしての能力は十分だが、それ以外が駄目とのこと。
ちなみにクロノは立場上ドロテアを呼び捨てにするべきなのだが、さんづけをやめるタイミングを逃して若干困っている。
どことは言わないが『G』。気球からではドロテアの変装を見抜くことはできない……。
『アリシア・フォン・シュヴァルツ』
※パラメーターに変動がない為省略。
備考
黒髪ポニテ似非ギャル女騎士。今章にてガチのヤベーメイドに遭遇した人。
ずっと帝都で留守番をしていたが、モルステッドの王都強襲にクリス直轄の人間がいないのはまずいと言うことで、急遽北の大地まで呼び出された。
能天気に見えて頭の中では色々と考えている。伊達に親衛隊副隊長をしていない。
その捕縛術は隊の中でも卓越したものであり、主にクリスへの狼藉を働く隊員に対して振るわれている。
クリスを第一として行動しており、モルステッド国王の家族がきちんと王家の人間とわかる品も持っていった方が良いと古文書を宝物庫から持ち出したのが思わぬファインプレーとなった。
帝都守備隊のジェラルド卿とは従兄妹の関係。普通のラブコメだとここからラブな関係が生まれそうだが、確定でそういうことにはならない。だって片方の認識チンパンジー兼不審者だし。
幼少期、鼻水垂らしながら木の枝片手に城門付近で騒いでいたお嬢様()である。当時幼かったシルベスタ卿と一緒に逃げ回り、帝都守備隊の隊長に捕まって大目玉をくらった。なお、この件は守備隊隊長がどうにか内々に終わらせてくれたので、この不審者事件の真相を知る者は少ない。
どこがとは言わないが『F~G』。どこがとは言わないが。
『シャルロット・フォン・グランドフリ―ト』
※パラメーターに変動がない為省略。
備考
グランドフリート侯爵家のお嬢様にして、クリスの婚約者。
生粋の御令嬢のはずだが、戦場だと基本的に本能で動く猪。腕が捥げようが戦闘続行し、兜の隙間から出ているドリルヘアーを振り乱して『おーっほっほっほっほ!』と高笑いしながら身の丈を越える鉄槌を振り回す。
義理人情に厚い人柄だが、政治の場ではキッチリ己の役目を考えて行動する。モルステッドとの戦争でも、『このままではストラトス家が武功を上げ過ぎてまずい』という考えのもと、かなり無理をして王太子の捕縛に動いた。
なお、直後に砕氷船で王都強襲を聞いて顔には出さなかったが『っべーですわ。マジでやっべーですわ。これストラトス家の立場が皇族より上になりかねませんわよ』とハチャメチャに焦っていた。
祖父がアダムと共に帝都を焼き、更には婚約者の性別が実は女と知らされた彼女は……。
どこがとは言わないが『H』。どこがとは言わないが、ここでもキャラ被りするアナスタシアとの運命……!
『ギルバート・フォン・グランドフリート』
所属:帝国 身分:侯爵家当主 年齢:65歳
武勇:85
魔法:60
知略:75
政治:80
統率:90
忠誠:70(帝国)・70(侯爵家)
備考
グランドフリート侯爵家現当主。
『鉄血のギルバート』、あるいは『無敵のギルバート』として名をはせている帝国の英雄。
妻と実の子供を失っており、再婚することはなく甥を養子として迎え入れた。本来ならシャルロットとは大伯父と又姪の関係である。
彼がアダム・フォン・ウィリアムズの謀反にいち早く加わった理由は未だ不明。衰えてなお現役の戦闘能力は凄まじく、親衛隊を圧倒した程。
何か思う所があるようで、オリビアに止めを刺そうとした際に鉄槌ではなく銃を使おうとした。
『ウージー・フォン・ゲーマウス』
所属:帝国 身分:伯爵家当主代理 年齢:76歳
武勇:40
魔法:60
知略:60
政治:65
統率:70
忠誠:50(帝国)・75(ゲーマウス家)
備考
ゲーマウス伯爵家の当主代理。隠居していた身だったが、家督を継承していた息子と次期当主だった孫が戦死した為急遽当主代理に就任した。
元々は北方貴族の顔役であり、『北方の壁』とまで呼ばれる帝国北部の防衛の要とも言える家であったゲーマウス伯爵家。
しかしフリッツ皇子と繋がっていたこともあり、謀反の疑いをかけられてしまう。
なお、このことは彼が墓場までもっていったが『実は彼と彼の息子達は、本当にモルステッド王国と繋がっていた時期がある』。
国境近くの貴族ならある意味当然のことではあり、これはフリッツ皇子の一件とは無関係のものだった。
人竜の活躍もあって帝国が盛り返したこともあり完全にモルステッド側とは縁を切ったが、関係があったのは事実。叩けば埃が出てくることもあり、窮地であった。
そしてお家を存続させる為、現当主と次期当主が討ち死にしたのである。
しかし周囲の北方貴族達も余裕など小指の甘皮程もなく、また辺境伯への陞爵も考えられていたゲーマウス家の失墜をチャンスと見た家もあって。
『一度ついた疑念は、消えない……!きっとまた、奴らはやらかす……!そうなればうちは終わり……やられる前に、やる……!』
『うちはこのままだと潰れる……!とれる所から、とらないと、お家が立ち行かないんだ……!ゲーマウス家には悪いが、蓄えをよこせ……!』
『ハハハハハ!ざまぁない!ざまぁないなゲーマウス家……!裏切り者め!私は薄汚い裏切り者ですって土下座しろ!この……焼き鉄板の上で……!』
と、ザワザワしていたこともありかなりの窮地であった。
この状況に、元々老齢だったゲーマウス伯爵も限界が近かったが、一発逆転の大チャンスに全力で駆け出したのが本編である。
ある意味で『国境付近の貴族らしい貴族』であった彼。少なくともその最期は、誇り高きものであった。
『ルベル・ラケルタ』
所属:なし 身分:なし 年齢:不明(数千歳)
武勇:200(弱体中)・300(全盛期)
魔法:180(弱体中)・290(全盛期)
知略:───(人並み)
備考
数千年前、勇者アーサーに封印されたとされる竜。
体高約30メートル。体長約60メートル。全長約120メートル。体重は不明。
深紅の鱗に覆われており、鱗の端のみ金色。ブレスを発射する直前に鱗の隙間から金色の光が漏れ出る。
体表の温度は凄まじく、常人であれば近づいただけで死に至る。モルステッドの王都は地下に眠るラケルタの体温で暖をとっていた。また、付近から温泉が出ていたのもラケルタの影響である。
一見寒さに強いように見えて、その逆。寒さには滅法弱い。その為、より温暖な地域を目指し作中では南下しようとしていた。
モルステッド王家の古文書では、『勇者アーサーの指示の下、多くの信徒がその身を餌としてラケルタを夏から秋の間に北の大地に誘導した。そして勇者アーサーと高弟達の奮闘により、冬の寒さで弱体化したラケルタを生き埋めにした』と書かれている。
モルステッド王家は本来、勇者アーサーを裏切った高弟の末裔。王都は流刑地であった。
王家はラケルタが空腹で目覚めてしまわないよう、大量の食糧と高い魔力を有する一族の者や高位貴族の死体を口に入れ、眠りを長引かせてきた。
また、ラケルタの夢精を採取し、それを馬に孕ませることで強力な軍馬を生産。時折馬の腹から卵が産まれ、それがふ化したのが双竜や1つ首などの竜である。
作中においては長く眠っていたこと。そして苦手な寒い地域であった為あれでもかなり弱体化していた。
あれから1年2年が経ち、更に暖かい地域にいた場合全盛期の力を取り戻していた可能性が高い。
その場合、艦砲射撃でも仕留めきれなかった可能性がある。通常兵器で仕留めようとした場合、第二次世界大戦時の戦艦の主砲クラスの火力が必要。
『ダンテ・フォン・モルステッド』
所属:モルステッド王国 身分:モルステッド国王 年齢:50歳
武勇:50
魔法:60
知略:50
政治:50
統率:40
忠誠:60(モルステッド王国)
備考
モルステッド王国国王。
大柄でガッシリとした体つきであり、顔立ちもあってかなり威圧感がある。また、精神的に余裕がないこともあって言動も厳しい。
先王と正妻の間に生まれた子供ではあるのだが、能力面で側室の子供より劣っていたこともあり『スペアのスペア』扱いされていた。
しかし先王が急死し、第一王子第二王子が次々亡くなったことで彼が王位につくこととなった。
元々能力面で王に相応しくないと見られていた上に、先王がかなりの実力者だったこともあって家臣達からはかなり軽く見られている。
実際、王としての能力は微妙。一般貴族として見ればそこそこ、という能力。
ある意味で、フリッツ皇子とは通じるものがある人物であった。
このままでは破滅が確定している中、しかし王族という立場を捨てて平民や虜囚として生きることもできなかった人。
彼は最期に人竜へと家族を預け、玉座にて数日前に先立った妻のもとへと旅立った。
これもまたフリッツ皇子と似ている所だが、彼は王になど向いていなかった。普通の夫であり、普通の父親であり、普通の祖父として暮らせていたのなら、きっと穏やかな人生を送ることができたであろう。
●Q&A
Q.アダムの中身って……。
A.ナンノコトダカ、ワカラナイデース。
Q.ドロテアさんとクロノまだドッキングゴー!していなかったの?
A.
ドロテアさん
「ほら。私がお嬢様より先にするのは、ね?高度な政治的な判断のもと、まずいかなー、と」
アナスタシア殿
「黙れヘタレ」
Q.ラケルタ討伐の件で、クロノは勇者アーサーを越えちゃった?
A.実力面だとまだアーサーの能力が不明であり、ラケルタがかなり弱体化していたので何とも……。
また、政治面だと本人も周囲も絶対にそうは言いませんね。そもそもラケルタのことを聖都は『勇者アーサーが天にかえった後に生まれた存在』としか認めないので。
Q.ラケルタって過去作基準だとどれぐらいの強さ?
A.ぶっちゃけますと、『終盤の強めの中ボス』ぐらい?全盛期だったら『ラストダンジョンのちょっと強いフロアボス』ぐらいですかね。
直近の作品である『コミュ障高校生』だと、弱体化時で『Bランクボス』。全盛期で『Aランクボス』ぐらいです。
Q.クロノと京太でそんなに力が違うの?
A.レベル制と比べちゃあかん。
クロノは敵を倒しても経験値とか入らないので、鍛錬と戦闘経験でしか強くなれません。
ただ代わりに、順調に育って行けば25歳から30歳ぐらいで『LV:90』の京太と同じぐらいになるかも?剣と魔法の世界で戦艦を生身で沈められる化け物になります。
Q.各国からのクロノの評価ってどんな感じ?
A.
クロステルマン帝国
「最強の生物。逆らったらあかん。幸いこっちから敵対しなければ温厚っぽい」
「生意気な若手貴族。でも逆らったらあかん。国の英雄でもあるし。搦め手でいこう。それはそれとして、尊敬はしている。英雄としても、『真実の愛』の伝道者としても」
旧オールダー王国
「滅茶苦茶複雑。国の怨敵であると共に、国の恩人でもある。でもこいつになら従うのもしょうがないと受け入れられる」
「アナスタシア様が篭絡した人の形をした竜。たぶんアナスタシア様が上手くコントロールしてくれている。でなきゃこんな厚遇おかしいし」
モルステッド王国
「ばけもの」
聖都
「聖人……いや聖人じゃない……聖人……いややっぱ聖人じゃない……まだ結論が出せない」
「『真実の愛』の求道者らしい。実に素晴らしい価値観である。是非聖都に招き、性欲によらない愛について講習会を開いてほしい」
隣接していない国々
「半信半疑。本当にそんな怪物いんの?」
「『真実の愛』の求道者にして伝道者……10代の若さで、なんという高みに。少なくともその発想力と愛の力は信じられる」
だいたいこんな感じです。
Q.オールダー王国ルートだと、どうやってラケルタを倒すの?
A.
ノリス国王
「いやぁ、まさかノリで作った列車砲が役立つ日がくるとはなぁ……」
クロノ
「本当に予想外でしたね……というか、遠すぎて着弾しているのかわからないんですけど」
アナスタシア殿
「貴様ら!喋っている暇があるのなら計算を手伝え!!」
ガルデン将軍
「さっぱわからん……この、けいさんしき?は、いったい……?呪文か……?」
●おまけ もしもモルステッド王国にクロノが生まれていたら
──モルステッド王国、壊滅。
その噂を酒場で耳にして、思わずスプーンを落としそうになった。
自分が知らない間に、どうやら故郷は滅びてしまったらしい。
* * *
モルステッド王国という国は、国家規模の山賊である。
そう気づいたのは、10歳の頃。
モルステッド王国の中でも北の方に位置する村で産まれ、今生の両親は8歳の頃に他界した。
9歳で丁稚扱いが当たり前の世界なのもあって、自分は村の何でも屋みたいな立ち位置で食い扶持を稼いでいたのである。
といっても、村自体が貧しいのだ。この身の腹が満腹になったことなど、数える程しかない。
その数える程のことの1つが、『略奪』から男衆が帰って来た時の祭りであった。
戦利品と言って、奴隷と食料、そして銅貨を持ち帰る男達。それを村人達が喝采で出迎え、豪華な……この村にとっては豪華な食事を作るのである。
奴隷の扱いというのは、本当に酷いものだった。鉄の農具もなしに凍った畑を耕し、少ない薪を得る為に危険な森へ押しやられるように入らされる。食事や寝床に関しては、比喩ではなく本当に家畜の扱いであった。
それもあって、彼らは村に来てもすぐに亡くなる。だが、来年には新しい『戦利品』が来るのだ。
前世の価値観が強く残っていた自分には、受け入れられない『文化』であった。しかし何より受け入れ難かったのは、その文化を否定することができなかったことだろう。
だって、そうしなければこの村は滅ぶのだから。だって、その時の祭りで出された料理に、自分も喜んでしまったのだから。
吐き気がした。自分自身に。自分の現状に。
だからか、村を出ることに迷いはなかった。ここにいては、狂ってしまう。あるいは、順応してしまう。
幸いなことに、旅に出る用意はあった。
というのも、腹を満たしたのは祭りの時だけではない。森で、魔物や危険な獣を1人で狩ったことがある。
どうもこの体は凄まじく強靭なようで、石を全力で投げれば熊の脳天をかち割れる程だ。
少しずつ溜めた干し肉や山菜、そして毛皮のマントを持って、自分は10歳の頃に村を出たのである。
まあ、村の外というか、よその国でもほぼそういう『文化』だったのだが。
中世に近い文化水準らしく、軍隊の補給と書いて略奪と読む世界。どこの村でも似たような光景だった。
正直言って、人殺しにはなりたくない。この世界でこの考えはあまりにも我儘であるのだが、それを貫き通すかは個人の自由である。なんせ、自分は根無し草。どこにも属していないのだから。
兵士にも傭兵にもならず、どうやって食い扶持を稼ぐのか。その考えは、村にいた頃からあった。
ハンターである。前世の某有名ゲームとは関係ない。ないったらない。
モンスターを狩る職業なんて、この世界にはない。魔物を狩るのは貴族の役目である。
しかしこの世界の貴族はその辺りを疎かにする者が多いようで、どこの村も魔物の被害に苦しんでいた。
そこに需要があり、自分には武力という商品がある。
最初の頃は当然、どこの村で売り込んでも『バカな子供』として相手にされなかった。
しかし腕っぷしを見せれば評価も変わる。掌はくるりと回り、『是非この村に永住してくれ』とよく言われたものだ。
ただまあ、この世界の『文化』に染まりきっていないので、そういうお誘いは断ったが。
……『種だけでも』と言われて、各村で『異文化交流』はしてしまっているけども。
今生の世界には染まりきっていないが、前世の価値観からも変わってはきているのだ。朱に交われば赤くなる……そう、これは仕方ないのないことなのである……!
そんなこんなで、あちこちを回り『魔物や獣限定の用心棒』みたいな立ち位置で、そこそこ名前も売れてきた16歳の頃。
まさかまさかの、故郷壊滅。
なんでも、凄まじく強大なドラゴンが現れたらしい。帝国が半壊し、オールダーとかいう国が凄まじい躍進を見せるこの大陸で、またとんでもないのが現れたものだ。
硬いパンをスープにひたして、もそもそと食べる。前世の食事には程遠いが、これも立派な御馳走だ。少なくとも、村にいた頃はそうだった。
故郷の村も壊滅してしまったのだろうな……。
噂のドラゴンが去ったら、暖かい時期に墓参りでも行った方が良いかもしれない。
え?竜殺しに名乗りをあげないのかって?そういうのは良いかなって……。
日々の飯に困らず、地方の村々で英雄扱いされる。お山の大将が理想なのだ、自分は。
なぁに。『革命の乙女』とか、有名な英雄はいる。きっと他の凄い人が、何とかしてくれるだろう。
「隣いいかい?」
「あ、どうぞ」
何の気なしにそう答えて、すぐさま腰の剣に手を伸ばした。
それを見た隣に座ってきた赤毛の青年は、ニッカリと笑う。品のある顔立ちだ。ぼろを纏っているが、お忍びできた貴族に違いない。
だが、何より……。
「よせって。俺は戦いに来たんじゃない。依頼をしに来たんだ」
「依頼……って」
この人物が誰なのかを、自分は知らない。
だが、ただ者ではないのはわかる。凄まじい強者だ。いつの間にか店の外にもいる、巨大な魔力の気配も。
スープで潤したはずの喉が、乾く。そんな自分に水差しを向け、青年は笑顔で言葉を続けた。
「ちょーっと。俺と一緒に英雄になってみないか?」
まさか、この後ドラゴンと戦うは、革命の乙女とやらと出会うは、王様の妹君とお見合いすることになるはと。
英雄街道を強引に、しかしこの青年と肩を組んで、不思議と楽しく走らされることになるとは。
まだ、知る由もなかったのである。
読んでいただきありがとうございます。
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