表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
313/351

313 レベルキャップ

 第四大陸を魔族以外立ち入り禁止にしている、瘴気。その正体が魔王城から発せられる初代魔王カルメラ由来の魔力であり、そのカルメラの血を引く魔族全体にとっての産みの親でもある。という真相は重々に理解できていたけれど……そこにもうひとつ私の知らない情報が加わるとなるとさすがに驚かされる。


 瘴気は人類側からの反撃。魔王期が終わったあとの反転攻勢で魔境へ乗り込まれるのを防ぐためのものかと思いきや──実際その側面も確実にあったろう、そうでないと魔王と勇者システムが瓦解してしまうのだから──それだけじゃなく。いや、それ以上にと言うべきか。到来を防ぐべきは人類以上にその反対側にいるまったく別の存在。第五大陸という未知の大陸にいる魔物たちだというんだから驚かないわけにはいかない。


 そもそもそんな大陸も、そこにいる魔物についても完全に初耳だっていうのに、まさか魔族(と瘴気)がそれに対する蓋の役割を果たしていただなんて思いもよらないにもほどがある。呆気に取られるしかない私に、女神は語り続ける。


「第五大陸に生息する魔物はその他の大陸とは水準レベルが異なる。強大な力を持つ者同士が日々殺し合い食らい合う、人類種から見れば瘴気に支配された第四大陸さえも霞んでしまう真の魔境と言えるでしょう。そこは元より黒の坩堝、大いなる波の起点として存在している場所なのです」


 元々からして人類種に敵対している魔物自体が黒側だ。もちろん、魔物同士でも争いは起きるし積極的に人を襲わない魔物だっているっていうのは前述の通りだけども、イベントではない恒常的な波。白を脅かす黒としての役割を担っているのは間違いないと女神は言う。そして人類の手も目も及ばない場所ではその黒が煮詰まれに煮詰まれて、イベントとしての黒に。人類を滅ぼしかねない大きい波へ変化する準備が進められていたのだと。


「魔物は基本、同種族であれば強度に上下が設定されておりません。ゴブリンならばゴブリン相当の、オーガならばオーガ相当の強さを鍛錬を経ずして所持し、戦闘経験を積もうと人類種と違い大きく成長することができない。特異個体と呼ばれる外れ値は定期的に出るものですが、その影響も微々たるもの。カルメラやアンラマリーゼのような特異点とは比べるべくもない。恒常の黒として魔物は世界によってそうデザインされて生まれてきている、ということですね」


 言うまでもないことだが、それはもちろん世界そのものに意思や思考能力があってのことではない。世界は自ずと滅びゆくもので、それを先延ばしにせんとするものでもある。そういう性質が勝手にそうさせているだけの、これもまたシステムのようなものに過ぎない。これまでの女神の話からするとそう解釈しておくべきだろう。誰が作ったシステムなのかと言えば……それは女神の言う基理とかいうものかもしれない。


 それはともかく魔物の強度の話については興味深かった。言われてみれば戦ってきたどの魔物も、同種であればどれも同じような強さだった。体格や年齢の差で多少のバラつきはあっても誤差の範囲を出ない程度には画一的だった──ただの動物とかならともかく、魔物みたいに各種特異な能力や魔力を持っていながらそんなことって普通なら確かにありえない。人間だってこの世界では魔力の扱いの巧拙や体をどれだけ鍛えているかで強さがまったくの別種族かっていうくらい大きく変わくるっていうのに、だ。魔物はなんとなくそういうものなんだと疑問にすら思っていなかったことだけど、考えてみればこれはすごく不自然だ。


 なるほど、デザインね。それこそゲーム内に出てくるゴブリンやオーガのごとくに強さの上限や下限が種族ごとに決められている。バグのように生じる外れ値の特異個体(ノールに対する穴ノールみたいな派生種族)でもなければ壁を越えることはできず、また越えたとしてもその差は僅かなもの。世界全体へそれで何かしら変化をもたらすほどの外れ方はしない、ということか。世界の裏側というか神の管理事情の一端を知った身としては割としっくりくる理屈だった。


「でも今、基本・・って言ったね。例外もあるってことだ」

「その通りです。例えば、先程も例に挙げましたドラゴンやタイタン。彼らが人類種の手に負えない程の力を持つのは他の魔物と違い、種族上限によって成長率が閉ざされていない特別なデザインであるが故なのです。彼らは成長する。他の強き者と戦い、勝ち、その血肉を食らうことでいくらでも強くなり続ける。それでも個体としての上限はありますが、種族として制限されるのとは運泥の値になる……十把一絡げに魔物だと言っても彼らと彼ら以外をひとまとめに扱うのは些か無理があるでしょう。そう、魔物にもあるのです。存在としての『格』の違いというものが」


 特級の危険度に指定されるようなヤバすぎる魔物はその全てが格違いで段違いの、他の魔物とは一線を画す超生物であるようだ。種族制限という名の言わばかなり低いレベルキャップ。それが取っ払われているとなるとそりゃあね、そうじゃない魔物とは比較にもならない強者にもなれるわな。


 ワイバーンとかロックリザードも、魔族とだって戦える──幹部クラスではない一般の魔族兵士だが──くらいに強い魔物だっていて、そういうのは討伐困難の高い危険度に指定されているけど、でも困難とそもそも不可能ではやっぱり全然違うわけで。ワイバーンもロックリザードも結局は種族としての限界は超えられない、そうデザインされているからにはどうしたって「その上」にいる魔物には敵いっこないんだ。


「ってことはもしかして第五大陸にいる魔物っていうのは……ドラゴンとかタイタンみたいな特級クラスばかりとか?」


 そうじゃなければいいな、なんて期待を込めて。でもそんな期待は裏切られるんだろうなというヒシヒシとした予感も受けながら訊ねてみれば、案の定に女神はにこやかなまま私の小さな希望をばっさりと切り捨ててくれた。それはもう盛大に。


「はい。第五大陸では特級クラスが平均値となります。要するにドラゴンやタイタンしかいないような場所だと言えば想像もしやすいでしょうか」


 ……いや、いやいや。何を言ってんだこの人、いやこの神は。


 あっさりと肯定するような内容じゃないってのもそうだけど、そんなんでうまく想像なんてできるわけあるかい。こちとらドラゴンともタイトンとも戦うどころか出会ったことすらないんだっての。


 まあ、竜の劣等種とされている(つまり一応は近縁種の仲間扱いである)ワイバーンとは直接対決もしたし、ロウジアでアンラマリーゼとバトったときは貰い物の丸薬でタイタンに変装したりもしたから、まったくもって無縁だってわけじゃあないんだけどさ。でもどっちにしたってモノホンのドラゴンやタイタンの強さ、ヤバさってのを実感できるようなものでもない。


 なのでドラゴン級が平均レベルになる、あまりにも高すぎるアベレージの大陸なんだと言われたってピンとくるものではないのだ。当たり前の話だよ、こんなの。


「そうですか。あなたの理解の手助けができないのはわたくしの不徳の為すところですね。しかし、大まかにでも察することはできているのでしょう? ドラゴンが決して特別な強者になり得ない魔境・・、その危険性について。そしてそれがどのように牙を剥こうとしているのかも、はるこ。想像するまでもなくあなたにはもうわかっているはずですよ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ