お気楽男と女の友情
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待ちにまった剣術大会が開催される一時間前、朝の8時の事だ。観客たちがもう列を作り、チケットを握り締め待っていた。アガルダの剣術大会は人気があり、チケットはかなり高騰していた。身分の高い人や金持ちしか観戦する事ができない。異国のいかにも身分の高そうなご婦人が、使用人とおぼしき者に日傘を射させてデイレクターが座る椅子みたいのに、ドカリと座り待っていた。
一行は、フウマの侍屋敷から剣術大会が開催される湊公園を徒歩で目指していた。
「のう、ツキハ・・拙者・・優勝したらアステル殿をお姫様だっこするでござるよ・・」
「兄者・・まだ兄者が優勝するとは限らないだろう・・まったく」
一行に合流したばかりのツキハがフウマに小言を言う。
「それに俺も出るし、俺が優勝するかもしれないぜ・・兄者」
「あまり似てない兄弟だね・・」 デトレフが小声でフブキに話しかけた。
「まあ・・しょうがないでござる・・でも意外とノー天気な所は似ているでごじゃるよ」
フブキはクスクスと笑う・・
まあ君も含めてね・・と、デトレフは心の中でつぶやいた。
昴達は、やっと湊公園についた。・・ちょうど8時30分になったばかりだ。 リカード、フウマ、ツキハ、ランスロッテは、大会に出場するため 会場の奥へ通された。・・残された昴、アステル、フブキ、デトレフは9時までどこで、暇を潰そうと相談していた。
「あそこでカタナの見本市みたいなのがやっているよ!スバル君、見に行こうよ」
「あっ・・そうだね デトレフさん見に行こう」
本当はアステルの事が心配でしょうがない昴だったが、気分転換にと・・デトレフについて行くことした。
男性陣が行ってしまうと、アステルとフブキだけがその場に取り残された。
二人は何を話すでもなく、その場に立ちすくんでいた。 すると・・使用人たちを数人連れた豪奢な着物姿の娘が二人現れた。 一目で身分の高い両親を持つのがわかる、気品あふれる娘たちだったが・・あまり・・二人共、器量は良くなかった。
「久しぶりね・・フブキ・・」
「姉上達・・・お久しぶりでござる」
フブキが二人の娘たちにお辞儀をした・・深々と、バカ丁寧に。
「あのアステル、せっしゃの二人の姉上達でござる・・こちらが一番上の姉のフユ・・それでこちらが、二番目の姉のアキでござるよ」
姉上達と言うが、フブキと姉達はまったく似てない。
「あんたなんかと姉妹なんて言われたくないわよ ふん、あんたなんか父上の妾(愛人)の子じゃない」 アキと呼ばれた娘が言った。・・いかにも嫌そうに・・ 「そうだわよ・・あんたは、妾の子・・あんたが帰って来たてっ兄上達から 聞いたわ・・変てこなお仲間たちを連れてね」
フユが嫌味たらしく言う・・性格もまるで、(フブキ)とは似ていない。
「誰が変テコですって・・」
「アンタが仲間の一人・・?下品な顔してるわね、類は友を呼ぶってっ・・わあっ何すんのよ」
アステルが、フユの顔にツバを吐いた。
「あんた達なんかに言われたくないわよ、行こ!フブキ」
アステルが強引にフブキをひっぱりズンズン歩いて行った。 アステルはフブキを守りたかった・・この子は気が弱いから・・一応ライバル?だけど・・今は休戦中だし。
フブキのルビーの様な赤い瞳に少し涙が滲んだ。 フブキは生まれてこの方孤独だった。仲間と言える人がいなかった・・でも今は・・大切な仲間がいる・・そう思った。




