第11章 愛羅武勇
開け閉めするたびキイキイしきむ合板のドアが、今はやけに重く感じられた。
ドアを開けた瞬間、物音がぴたっとやみ、部屋の空気が緊張したようにきゅっと締まった。だけどそれはほんの一瞬のことで、部屋の雰囲気はすぐに元に戻った。
和歌子は玄関に散乱する先輩達の靴をやたら丁寧に並べ直し、買ってきた飲み物を一本一本冷蔵庫に納めた。だけどそんな時間稼ぎはもう限界で、どんな表情をするかも決めきれないまま、顔を俯かせて六畳間に踏み込んだ。
「ワコ遅かったじゃん」
「夜道はあぶねーぞー」
「あ、この余ったつまみ持って帰ってもいいか?」
先輩達の態度は不自然なほど自然だった。誰も和歌子の突然の離脱を問い質してこなかった。
長かった宴会はもうお開きのようで、やいのやいの言いながら皿を運んだりゴミをまとめたりしている。そんな中、先に部屋に戻った倫は、和歌子に背中を向けたまま黙々と空き缶をゴミ袋に投げ入れていた。
「んじゃそろそろ帰るか」
亜希の一言で、皆ぞろぞろと玄関に移動した。和歌子は一番後ろにひっそり控え、Tシャツの裾をぎゅっと掴みながら、心細い気持ちで先輩達を見送った。
「ワコ、料理マジうまかったよ。ありがとな」
「ほんとほんと、めっちゃうまかった」
「何か今日はワコのメシ食いに来たようなもんだったなー」
帰り際、先輩達は和歌子の頭をくしゃくしゃ撫でながら口々に優しい言葉をかけてくれた。和歌子と倫の間に何かあったことに気付かないわけないのに、騒ぎも詮索もせず、でも先輩達なりのやり方でさりげなく労ってくれた。和歌子は涙がぶり返しそうになるのを唇を噛んでぐっと耐えた。
「じゃな。また飲もうぜ」
最後にそう言い残し、先輩達はドアの向こうに消えた。
和歌子はしばらく玄関に佇み、閉まったドアを見つめ続けた。そして倫が六畳間に戻る気配を背中で確認すると、洗い場にたまった食器の山と向かい合った。
スポンジに洗剤を大量に染み込ませ、盛大に泡を立てながら、いつもより格段に時間をかけて食器を洗った。まるで大型犬をシャンプーする時のように、泡の山の中に両手を突っ込んで、鍋も皿もフライパンも一緒くたにじゃぶじゃぶ洗った。いつもは見て見ぬ振りするフライパンの焦げをがりがりこそげ取り、洗い上がったものを今度は舐めるように丁寧に拭きあげていった。最後にシンクまでピカピカに磨き上げてしまったら、とうとう台所に留まり続ける理由が無くなってしまった。
食器を洗い始めてからしばらくは、六畳間から片付けをする物音が響いていたが、今はシンと静まり返っている。肩越しにこっそり振り返ってみたら、案の定、倫の姿はベランダにあった。
今しかない。和歌子はそろりそろり六畳間に足を踏み入れた。部屋の中は、隅にまとめて置かれたゴミ袋以外、飲み会開始前の状態、いや、それ以上にきちんと整頓されていた。
和歌子は隣の四畳半に体を滑り込ませると、仕切りの襖をスッと閉じた。倫と物理的に遮断された空間に逃げ込むことができて、ほっとして気が抜けたのか、和歌子はへなへなとその場にへたり込んだ。
閉め切った四畳半は蒸し暑く、胸の谷間や脇の下にじんわり嫌な汗が滲み出してきた。疲れ切った体が横たわることを要求してくるが、布団を延べるのもだるくて、体育座りした両足の間に、ガクンと頭を突っ込んだ。
豆電球すら点けていない室内は真っ暗闇で、閉じっぱなしの目はいつまでたっても暗さに順応してくれなかった。
何であんなこと言っちゃったんだろう。
和歌子は深い深いため息を吐いた。先程の自分の振る舞いや言動が、断片的に和歌子の脳裏をよぎる。その度和歌子は小さく身震いし、膝を抱えた両手にぐっと力を込めた。
センパイきっと怒ってる。あきれてる。
胸の奥がぎゅーっと痛くなり、息が詰まった。ふいに、顔も知らない「龍一先輩」のイメージ図が勝手に頭に浮かび上がってきて、自分の想像力に腹立たしさを覚えた。
センパイ......
「センパイ......」
心の中で呟いたはずなのに、知らず言葉が出てしまい、和歌子は肝を冷やした。
だけど心で呟き、言葉として声に出し、耳を通してまた脳に戻ってきたその言葉が、和歌子が必死に隠そうとしている「倫への思い」を激しく揺さぶった。
「センパイ......倫センパイ......」
揺さぶられて、刺激されて、煽られて、膨れ上がって膨れ上がって。どうしようもなくなって。
すぐ側にセンパイがいるのに、どうしてアタシ、こんな部屋に一人で閉じこもってなきゃいけないの?
気付いたら、和歌子はすっくと立ち上がり、襖を開け放っていた。ベランダを通して流れ込んできた夜風が、火照った体を優しく撫でていく。
冷静な捨て鉢。あえて名前を付けるなら、そんな気分だった。
ベランダにいる倫の姿が目に飛び込んだ。
ドッドッドッドッ
心臓は小刻みに震え、全身が甘く苦しく痺れた。
この背中を失いたくないーー
和歌子は自分が何をしようとしているのか理解できないまま、その思いに突き動かされるように、細い背中に吸い寄せられていった。
どん、と体に軽い衝撃が走った。和歌子は倫の肩甲骨と肩甲骨の間に頬を擦り付けた。硬い背骨がごりっと頬骨に当たる感触。センパイ、痩せ過ぎっす。だけどその微かな痛みも愛おしかった。両腕を倫のお腹に回し、背中に体をぴったりくっつけた。
要するに、背後から倫に思い切り抱きついた。
センパイの体、あったかいーー
頬を通して倫の拍動が伝わり、全身でその湿った体温を感じた。倫の体は微かに震えていた。
アタシきっと、この感触だけで生きていける。ううん、生きていかなきゃいけない。
倫が小さく身じろぎした。
ーーやだ!!
和歌子は引きはがされないよう、お腹に回した腕にぎゅっと力を込めた。
キモいって言われてもぶん殴られても蹴っ飛ばされてもいい。今はただ、こうしていたい。
「ワコ......?」
倫は、困惑したような震え声でたった一言そう言って、あとは押し黙ってしまった。振りほどかれるのを覚悟したけど、その気配は無かった。
倫は体を固く強ばらせたまま、人形のように微動だにしない。ただ頬に伝わる心拍と肌で感じる体温が、倫の生身の生を感じさせた。
急に早くなったかと思ったらいきなり緩やかになったり、沈黙の時間は奇妙なリズムを刻みながら、二人の間に横たわっていた。
和歌子はその時間を利用して、心の中で自分の気持ちをゆっくり形作っていった。出来上がりかけたのを崩したり、途中で形を整えたり、試行錯誤を繰り返しながら行き着いたのは、結局はこのシンプルな二語なのだった。
「好き」
それはごく自然な形で、するりと口から滑り出した。
「好き」
1回目は自分に言い聞かせるため、2回目は相手に届けるためのものだった。
「......」
聞こえているのかいないのか、倫はまったく反応しない。
それでも構わない、と和歌子は思った。この際、言いたいことはすべて言い切ってしまおう。
「センパイが大好き」
倫の背中にぎゅっと唇を押し当てた。
「死ぬほど好き」
涙がじわっと溢れる。
「好きで好きでたまんない」
溢れた涙を倫の背中に染み込ませた。
「センパイがーー」
突然、お腹に回していた両腕を引きはがされた。倫はがばっと振り返ると、和歌子の二の腕をがっちり掴んで、
「オマエ、本気で言ってんの?」
とぐっと顔を近付けてきた。
涙でピントがぼやけ、倫の表情がよくわからなかった。和歌子は目を瞬かさせて涙を振り落とし、改めて倫の顔に焦点を合わせた。
倫は暗闇の中で目を光らせて、怖いくらい真剣な表情で和歌子を見つめていた。もしかしたら泣いているのかもしれない。
「......ま、本気っす」
和歌子達の業界では、「本気」と書いて「マジ」と読む。
「マジで、本気っす」
倫の瞳が、きゅうっと縮んだ気がした。次の瞬間全身からぶわっと殺気のようなものが立ち上り、
ーー殴られる!!
和歌子は思わず目をつぶった。
「いい加減な気持ちで言ってたらぶっ殺す」
なぜか耳元で倫の声が聞こえた。
「......?」
目の前にあったはずの倫の顔が消えている。そこで和歌子はようやく、倫に抱きしめられていることに気付いた。
「オマエって、ほんと」
認識してから数秒遅れて、体が倫に反応し始めた。生命の緊急事態とばかりに、ありとあらゆる機関がリミッターを外して暴走し始める。
「オマエってホント......うらやましいよ」
首元に埋まった倫の顔が動くたび、和歌子の体は飛び上がらんばかりに反応した。
「私がずっと言えなかったこと、オマエはあっさり言えちまうんだもんな」
倫にしては珍しい拗ねたような口調ばかりが気になって、話の内容を認識するのに時間を要した。
......え?ずっと言えなかったこと……って?
うそ、まさか、どうして
「え?センパイそれってどういう」
言葉の輪郭は見えたが、和歌子にとってそれはあまりに思いがけない展開だった。
「……って言ってんだよ」
「え?センパイ聞こえな……」
「だから、私もオマエが好きだって言ってんだよ!」
察しの悪い後輩に言い聞かせるような口調で、倫は和歌子の耳元でがなった。耳の奥がキーンと痛んだ。
聞き間違いじゃなければ、センパイがアタシに好きだと言った。センパイが、アタシを......。
ありえない、でも、好きって、今好きって
半信半疑の和歌子の口から出たのは、信じられないほどアホらしいセリフだった。
「ら、らいくですか? らぶですか?」
はあ?と倫は顔を上げ、和歌子の顔をまじまじと見つめた。
「オマエ漫画の読み過ぎだろ」
呆れたような口調で言われて、耳たぶがカッと熱くなった。引っ込みがつかない和歌子は
「どっちですか?」
と、鼻息荒く倫に詰め寄った。
倫は、暗闇でもわかる薄茶色の瞳を細めて、探るような視線を和歌子に向けて、言った。
「オマエはどーなんだよ?」
センパイ、ズルい。訊いてるのはアタシなのに。和歌子は開き直った気持ちで、大きく息を吸い込むと、目の前の倫に思いの丈を叩き付けた。
「らぶです! ギョーカイ用語で言えば『愛羅武勇』です!」
和歌子の勢いに気圧され、倫は軽く体をのけ反らせた。相当こっ恥ずかしいセリフを吐いたのだが、当の和歌子は自分の言葉に興奮し、どうだとばかりのドヤ顔で倫の顔を見つめている。
「……私もおんなじだよ」
穏やかな声でそう言った倫は、見たことも無いような優しい笑顔を浮かべていた。和歌子は倫の笑顔に見蕩れながらも、降って湧いたような僥倖がまだ信じられず、突拍子も無いことを口走った。
「これ、夢ですよね?」
「……はあ?」
倫は和歌子の言葉に今度こそ本気で呆れたらしく、気の抜けた声を出した。
「だってセンパイがアタシのことす、す、好きとかって……夢としか思えないっす!」
「信じらんないのか、私のこと」
混乱し取り乱す和歌子に対し、倫は冷静な声で問い質した。
「信じるとか信じないとか、だってアタシ、こんなこと夢としか思えな……ッ!!」
倫の右腕が腰に回され、ものすごい力で引き寄せられた。倫の顔がアップになったかと思ったら、唇を強引に塞がれた。蘇る、あの日のフィルターの感触。
次の瞬間、下唇に鋭い痛みが走った。
「い……っ」
倫の顔が離れた。和歌子はたった今起こった出来事が信じられず、目の前の倫の顔を呆然と見つめた。下唇がツキンツキンと痛む。
「痛い?」
優しい声だった。和歌子は素直にコクンと頷いた。
「じゃ、夢じゃないよな?」
倫は優しい目をして笑った。
ああ、そういうことか。腑に落ちた瞬間、和歌子は顔から火を噴いた。心臓が爆発しそうな勢いで肋骨の下を跳ね回っている。
「乱暴なことして、ごめん」
倫はそう言うと、和歌子の下唇を親指でそっと撫でた。和歌子はもう何も言うことができず、カタカタ震えながら目の前の倫を見つめ続けた。薄茶色の瞳を震わせながら、倫がゆっくり顔を近付けてくる。頬を冷たい手のひらで包み込まれる。和歌子は目を閉じて初めて、自分が泣いていることに気付いた。
「泣くなよ、ワコ」
唇を離した倫が、鼻先同士をくっつけたままそう呟いた。
「だ、だって勝手に涙が出てくる......」
そう話す側から、涙がぼろぼろこぼれ落ちていく。倫は目元だけでちょっと笑って、両手で和歌子の頬を挟み込んだまま、親指で目元の涙を拭った。和歌子はただ倫にされるままになるばかり。頭の先から足の先までじんじん痺れて体にうまく力が入らない。
倫の唇が、和歌子の目元に触れた。和歌子は体を大きくわななかせ、膝から力が抜けそうになった。
倫は自分の唇を舌先で拭って、「しょっぺ」と呟いた。そしてまた、指先で和歌子の涙をすくいとってくれた。
その手つきは、信じられないほど優しかった。
「センパイ、優しい」
ふわふわ宙に浮いているような心地で倫に身を任せていた和歌子だったが、同時に目の前にいる人がまるで知らない人みたいな感覚を覚えた。一言で言えば違和感を感じた。
「でも優し過ぎて気持ち悪い」
子供のような素直さは和歌子の美徳であるが、同時に大きな欠点でもあった。
和歌子のあまりに率直過ぎる感想を聞いて、はっ、なんだよそれ、と笑った倫だったが、すぐに笑顔を引っ込め、真剣なまなざしで「優しくしたらだめか?」と訊いてきた。
和歌子はある強烈な感覚を覚え、一瞬気が遠くなった。
もしかして、「幸福感」ってこういう感覚のこというのかな。でも味わったこと無いからよくわからない。
深く考えることは苦手だ。
とりあえず和歌子は、思い切って倫の胸元にどんと体を預けた。倫はしばらく両腕を宙に泳がせ、だけど最後はがっしりと、和歌子の体を抱きしめてくれた。
倫に抱きしめられながら和歌子は、やっぱりこれって夢なんじゃない?と心の中でひとりごちた。
♢ ♢ ♢
何か長い夢を見た気がする。でも目覚めた時に頭に残っていたのは夢から受けたイメージだけで、それは色で例えればピンクとか水色とか、とにかくふわふわしたつかみどころのない、けれども体をあたたかく包み込むような、優しい優しい感触なのだった。
薄い布団の上で横にごろんと一回転してみる。畳に半分体を投げ出し、大の字になって天井を見上げた。
和歌子は恐る恐る下唇に指をのばした。指先に小さな傷が触れた瞬間、鋭い痛みがつんと走った。
よかった、夢じゃなかった。安堵感からか痛みからか、和歌子の目元から涙の粒がぽろりとこぼれた。
思えば昨日から泣いてばかりだ。和歌子はそう思った。体のどこにこんなに涙が隠れてたんだろうと思うくらい、とにかく昨日はおんおん泣いた。あの涙は一体どこから来たのだろう。そしてどこに行ったんだろう。こんなこと、今まで考えたことも無かった。
和歌子は大きく伸びをして、一回転して元の位置に戻った。その後も半回転、一回転、布団の上をごろごろ転がり回った。回りすぎてちょっと気持ち悪くなるくらい。
決心がつかないのだ。
早く会いたい気持ちと、会うのが怖い気持ち。顔は見たいけど、顔は見られたくないという複雑な乙女心。
まあ、会うとか会わないとか大仰に構えているが、電車に乗ってわざわざ出かけて行くわけでもなく、単純にそこの襖を開けるだけの話なのだが。
なかったことにされたらどうしよう。
例えばそこの襖を開けて、いつも通りの挨拶を交わす。倫は「ああ」とか「おう」とか素っ気ない返事をするだろう。台所で朝食を作り、いつものメニューを向かい合って食べる。今日は盆休み最終日だけど何も予定は無いからおそらく部屋でだらだら過ごし、そうしているうちにまた朝が来て、いつもの日常がやってくる。そんな風に日々を過ごすうちに、昨夜の出来事が、その「いつもどおりの生活」の中に溶けて消えて無くなってしまうんじゃないか。
幸福に慣れていない和歌子は、深く考えることは苦手なくせに、自らを不安に陥れる術にだけは長けているのだった。
仰向けのまま首をぐぐっと反らせて、和歌子は襖を凝視した。視界の中で上下逆さまになった薄汚れた襖が、固く閉ざされた門のように見えてしまう。
どうしよう。そう思った瞬間。
襖がパーンと小気味よい音を立てて開いた。和歌子の視界に、上下逆さまになった倫の姿がいきなり飛び込んできた。
思いがけない展開に、和歌子は仰向けで首を反っくり返らせているという間抜けな格好のまま、しばらく動くことができなかった。
襖を開けるのは自分の役目だと、いつの間にかそう思い込んでいた。
本当はどっち側からだって開けられるのだ。
そんな当たり前の事実に今更ながら気付いた。
「夢じゃない、よな?」
「え?」
逆さまの倫が、和歌子を見下ろしながら言った。
「昨夜のこと」
逆さまの視界の中で、倫の瞳が不安げに揺れていた。和歌子は上半身を起こして、すぐ側に立つ倫を見上げた。倫は膝を折って和歌子の隣に座ると、じっと顔を見つめてきた。薄茶色の瞳を震わせ、眉間にしわを寄せたその表情は、和歌子が初めて見るものだった。
夢かもしれないと思ってたのはアタシだけじゃなかった。倫の表情を見て、和歌子はそう悟った。
倫も不安を感じていた。その事実がかえって「これは現実なんだよ」と教えてくれてるような気がした。不安を感じるのは、「失いたくない」と願っている証拠だと思ったから。
和歌子は倫の右手を取った。その手のひらを、自分の唇まで導く。
「ワコ?」
戸惑いの声を出す倫に構わず、その指先を下唇の傷に当てた。感じる痛みは現実の証だった。
「センパイのつけた傷っすよ」
そして倫の手のひらを頬に押し当てる。吸い付くように張り付いたその手のひらは、昨夜は冷たく乾いていたのに、今はほんのりあたたかく、しっとり湿っていた。
「……そうだったな」
倫は眉間のしわを解いてそう言うと、和歌子の頬に当てた手のひらを首に滑らせ、ゆっくり顔を引き寄せた。
下唇を食むような優しいキスに、和歌子はやっぱり行き先不明の涙を流してしまうのだった。
ーー完ーー
どこかの街のどこかのアパートで、こんな二人が暮らしていたらいいなと思って書きました。
願わくば、二人の前途に幸多からんことを。
読んで下さりありがとうございました。
ムーンライトノベルズにて、18禁表現ありの続編を連載開始しました(2016.1.22)
タイトル「センパイはアタシの体にキョーミ無いんすか?」