20話 禅×土竜
♢バンリside
ロクをハンマーでぶっ飛ばした後、コーンの元へと向かっている最中に、シャルから連絡が入った。
"バンリ〜!こっちのジェット機、ミサイル付きだからそっちも何かあるかもよ〜。気をつけてね〜!"
「まじか……了解」
短く返事をすると、すぐに通信は切れた。
ミサイルねぇ?……本当くそだな。
シャルには、なんて事ないように返事をしたけど、内心結構焦っていた。
こっちは物騒なもん、ついてなきゃいいけど。
ホッピングで弾みながらラジコンカーを追いかけるコーンに視線を向け、腕時計で通話を繋げる。
「おーい、今どんな状況だぁ?」
あくまで平静を装うのは、俺が焦りを見せたらコーンはもっと萎縮するから。
"あの2台の車、結構早いっすー!正直俺、自信ないかも……"
腕時計から聞こえたのは、いつもの元気な彼の声ではなく、少し不安そうな声だった。
……ったく、なーに弱音吐いてんだか。
思わず溜息がこぼれそうになるのを堪えて、口を開いた。
「俺は、お前が一番向いてると思うけどなぁ?」
これは励ましでもなんでもない。地面を走る車を相手にするなら、こいつ以上の適任は居ないと思ったから出た、心からの言葉だった。
コーンが一瞬、目を見開いてこちらに視線を向ける。
"それ、マジっすか?"
「マジマジ、大マジ!」
そう答えた瞬間、彼の目がパアアと輝いた。
……こいつ本当に単純だよなぁ。そして扱いやすい。そう思いながらも、彼が自信を取り戻してくれた事にホッとした。
"っしゃぁぁああ!やったりますわ!"
コーンは叫び声を上げながら、一際大きく跳ね上がった。
「あっ、まだ待て!」
慌てて彼を止めに入ると、コーンは前方につんのめりそうになっていた。
"な、なんすか?!"
「戦闘に入る前に、ラジコンカーの中に危険物がないか確認できるか?」
"確認します!"
コーンはそう言って、ユニフォームのポケットから双眼鏡を取り出した。
"んー…車体にも車内にも、特に危なそうな物は見当たらないっすよ!"
「そうか」
チラッと周辺を確認すると、警察が規制をかけてくれたのか、道には他の車などは見当たらなかった。
「っし。そんじゃあ始めっか!」
"了解!!"
元気よく返事をしたコーンは、再びホッピングで高く跳ね上がった。
「〈土竜〉、プレイ!!」
周辺に響き渡る大きな声で、コーンはプレイ宣言をした。それと同時にホッピングは巨大化し、先端部分には大きなドリルが現れた。
「いっくぞぉぉおおーーーー!!」
コーンが叫び声を上げながら、ドリルを地面へと突き刺した。
その瞬間——
ズモモモ……
低い地鳴り音と共に、地面が僅かに揺れた。
「そこだ、弾けろ!起爆!」
彼がそう口にした次の瞬間、
——ドカンッ!!
爆発音と共に赤い車の下から、突き上げるように地面が爆ぜた。それはまるで、地雷でも踏んだかのような衝撃だった。
「おうおう。やっぱりお前が、一番向いてんじゃねーか!」
後ろから彼に向かって声を掛けると、コーンは楽しそうに口角を上げた。
「まだまだぁぁあああ!」
——ドカンッ!ドカンッ!
ホッピングが着地するたびに、赤と青の車が次々に跳ね上がる。
そんな光景を前に、段々と自分のテンションが上がってきた。
「うっひょー!ポコポコ弾けて、ポップコーンみてぇ!」
「ちょっとー!バンリさん、見てないで戦ってくださいよー!」
「あー、悪い悪い」
……さてと、そろそろ参戦すっか。
でもその前に、一つ忘れちゃいけない事がある。
即座に腕時計を操作し、トイカルマのモニター担当のルカに繋いだ。
「ルカー。俺」
"はい。こちらルカ"
「俺らが今いる場所の周辺カメラ漁って、アビュサーっぽいやつを先に探しといてほしい」
"了解"
彼女の返事を聞き、すぐに通信を切る。
俺はシャルと違って、空を飛ぶことは出来ない。だからこそ、モニターのルカにはよく世話になっていた。
頼るとこは、ちゃんと頼る。
でも……
「俺もやる時は、ちゃーんと仕事しねぇとなぁ」
独り言を呟いて、気合を入れた。そして肩に担いでいたハンマーを握る手に、ギュッと力を込める。
2台のラジコンカーを見るのと同時に、視界の隅でコーンの動きも同時に追う。
逃走する車、土竜の爆発。
それらのタイミングを、一瞬で見極める。
——ここだ。
直感して、振りかぶったハンマーを、禅の胴の1段目と2段目に素早く打ち込んだ。
ガキィン!!ガキィン!!
弾丸のように吹っ飛ばされた2つの胴は、土竜の攻撃で爆ぜた2台の車に直撃した。
ガッシャァーーーン!!!
それぞれの車に命中した胴は、禅の本領"磁石の力"によって、空中に円を描きながら引き寄せ合う。
「引磁圧」
——バゴォーーーン!!
凄まじい衝撃音と共に、2台の車が激突した。
辺りには、モクモクと白い煙が上がった。
すぐに、コーンへと通信を繋ぐ。
「コーン!ラジコンカーの覚醒が解除されてるか見えるか?」
"確認します!"
コーンが土竜から飛び降りる。そして服の袖で口を覆い、煙の中をかき分けるようにして中へ入っていく。
"……ゴホゴホッ、解除確認しました!"
「OK」
軽く返事をして、素早く通信をルカへと切り替えた。
「ルカ、アビュサーの位置分かったか?」
"こちらルカ。ラジコンカーのリモコンを持った、アビュサー2人組の位置を特定。場所を送ります"
「了解」
ルカとの通信を切り、再びコーンに繋ぐ。
「コーン、俺はアビュサーの元へ向かう」
"はい!お願いします!"
コーンの返事を聞きながら、ルカから送られてきた位置情報を確認する。
「……そこだな」
背後を振り返り、近くのマンションの屋上に視線を向けた。
途端に慌てた様子で、その場から逃げ出そうとする二人組を見つけた。
「逃がさねぇよ」
その言葉と同時に、禅の頭部であるダルマにハンマーを勢いよく打ち込む。
ガキィーーーン!!
金属音を響かせながら、逃げていく二人組の頭上に飛んでいくダルマ。
——「確保」
俺の一言を合図に、ダルマの頭がパカッと開く。
そして次の瞬間……
「うわぁぁあああああ!!」
男共の悲痛な叫びは、ダルマの中へと飲み込まれていった。




