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砥石と宿賃その2

本作品は、中年のおっさんの個人的なAIへの興味から派生し始めたものにつき、

作者が好き放題書き散らかしています。

ですので、皆さんが普通は書かないような事にこだわったりしてしまっています。

生理描写や衛生描写等が重く書いてる本人もスカッと全くしておりません。

お気に召さねばそっと閉じていただけると登場人物たちも喜ぶと思います。

それでも、お付き合いしていただける方はどうぞよろしくお願いいたします。

「....いた。カモ。」


狙うは、酒の勢いで気が大きくなったゴロツキ。不格好な得物をあえて足に引っかけ、わざとらしくその胸板にぶつかっていく算段だ。


トラブルさえ起きれば、あとは「慰謝料」を毟り取るだけ。


体調不良ゆえの危うい足取りが、今は絶好の撒き餌となるはずとリュンヌは踏む。


よく見るとカモのはずのゴロツキどもが騒ぎ立てている。


「誰の許しを得てここで説教なんぞしてるんだクソガキ。」


「神様なんぞここには必要ねえよ。賭けの神様だけだここに居ていいのは。」大声が響く。


「....何、あれ。」


リュンヌは眉をひそめ、得物を杖に立ち止まった。


視線の先には、煤けた路地裏には似つかわしくない、透き通るような銀髪に碧眼の少女。


ゴロツキたちの下卑た嘲笑を一身に浴びながらも、彼女の纏う空気だけは冬の朝のように澄んでいる。


「....神様?....なに。」

リュンヌはボソボソ呟きつつも、獲物を狙う猫のように目を細める。


銀髪の少女を囲む粗暴な男たちの背中に、金の入った袋が揺れているのが見える。


トラブルに割り込む理由は十分だ。これは助けになるんだと正義面し、体調の悪さをも自らの行為を正当化する理由に変え、彼女は一歩、乱暴に踏み出した。


「ふーん。賭け事の神様はここに居ていいんだ。でも、女の子にモテる運を持った神様はいないみたいね。」神官服の少女がさえずる。


「いい感じ....煽れ....。」

リュンヌは物陰に身を潜め、ぷくっと頬を膨らませてついほくそ笑む。


銀髪の少女が透き通る声でゴロツキを挑発するたび、男たちの頭には血が上り、その注意は完全に目の前の「獲物」に釘付けだ。


不格好な得物を握る手に力を込め、リュンヌは脂汗を拭う。


少女の清廉な声が小鳥のさえずりのように響くほど、男たちの背後にある財布は無防備に晒される。


「そのまま....私....貰う。」

期待に瞳を潤ませ、彼女は痛む腹部を抱えながら、静かに、だが確実に背後から忍び寄る。


リュンヌ自らが「ナギナタ」と名付けた奇妙な得物が、重苦しい空気を180°切り裂く。


リュンヌは鈍い腹痛を押し殺し、舞うように石突を返した。左へ半回転、そこからバネのように右へ引き戻す予備動作。


「....せいッ!」斜め三十度、重力に逆らわず鋭く叩きつけられた刃が、石畳を叩いて火花を散らす。


計算し尽くされた軌道は、ゴロツキたちの急所を正確に払い、その意識を刈る。


脂汗に濡れた顔には、苦痛を塗りつぶすような野良犬の笑みが浮かんでいた。


「な、いつもの黒髪のクソガキ!」とゴロツキの一人が言う。


「....クソガキ....。」

リュンヌは低く唸ると、猫背のまま元は槍だったかもしれない得物の柄を男の股間へ鋭く跳ね上げた。


あえて「重し」を乗せたような不格好な重心が、今は凶悪な加速を生む。


「あぐっ....!?」

男が膝を折る刹那、彼女の指先は吸い込まれるようにその背中へと伸びた。


脂汗を流しながらも、金の袋を奪う瞬間だけは驚くほど優雅だ。


手中に収まったずっしりと重い革袋の感触に、リュンヌは痛みを忘れて口角を吊り上げる。


「これ....宿代....。」


ネギを背負ったカモを蹴り飛ばし、彼女は潤んだ瞳で戦利品を愛でる。


ネギを持って帰ろうとした瞬間に神官の少女がリュンヌの腕を掴む。

「....は?」


リュンヌは動きを止め、信じられないものを見る目で腕を掴む指先を凝視した。


神の慈愛を説いていたはずの銀髪の少女は、あろうことか、花が綻ぶような完璧な微笑みを崩さぬまま、さらりと言い放つ。


「あら、残念。それ、私のお金。」

清廉な碧い瞳には、慈悲の欠片もない。


神の御使いが、まさかの「横取り」宣言。リュンヌのぱっちりとした瞳が、驚きと怒りでさらに大きく見開かれる。


「....神官? ....詐欺師?」

「見ての通りよ。あんたバカなの?」

神官の少女はリュンヌに言う。


「神官....お金....あり得ない。」リュンヌはボソボソとやり返す。


「神官がお金もらって何が悪いの?そもそも基本労働時間に対する最低賃金は1500円はあるべきよね。」


「何....きほん....えん?」

リュンヌは呆れ果てて、ぱっちりとした瞳を点にさせた。


目の前の神官少女は、最低賃金だの労働時間だのと、聞いた事すらない理屈を並べて捲し立てている。


「タダ働きなんて、さいってー、絶対お断り。神様だって、お腹は空くのよ。」


堂々と胸を張る銀髪の少女を前に、リュンヌはぐにゃりと眉を下げた。


痛む腹部を抱えながら、耳たぶを折り畳んで現実を遮断したい衝動に駆られる。


清廉な外見に騙され甘く見た自分を呪いたい。

「....もういい....これ私の....。」


リュンヌは必死に財布を握りしめるが、神官の指先は驚くほど強く、手首を離れる気配がない。この「聖職者(?)」、ゴロツキどもよりたちが悪い。


更に少女はとんでも行動に出た。


あろうことか伸びているゴロツキ達の懐をリュンヌの手首を離すも彼女を監視しつつ探り出した。しかも手慣れている。


「....何....?!」


リュンヌは呆気にとられ、ぱっちりとした瞳をさらに丸くした。


銀髪の少女は、涼しい顔で次々とゴロツキの懐に手を突っ込み、熟練の泥棒も顔負けの手つきで金貨をより分けている。


「それ....盗み....っ。」

「カツアゲしてる人に言われたくないしー。これは、お布施。」


聖職者にあるまじき暴論。一枚、また一枚と、一番高い貨幣だけ一枚のみ選別し少女の懐へ吸い込まれていく。


全部を盗らないところが余計に芸が細かい。


リュンヌは脂汗を流しながらも、そのあまりの「職業倫理の欠如」に、腹痛さえ忘れかけていた。


「神様....泣いてる....。」


リュンヌは自分の事は棚に上げて呟いた。


リュンヌの倫理観を根底から揺さぶるとんでもない神官少女?

神官か詐欺師かはたまたコンサルか。

少なくとも生活力がリュンヌ以上のこの神官少女との関係は共犯?同伴?服従?

私はこの謎少女のような子は怖すぎて近づけません。

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