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常闇の乙女  作者: 櫻塚森
9/9

きゅう

気紛れな神々は、たまに子供を欲しがる。しかし、神の身体では満足が得られないので、下界にてお気に入りの男女を選んで契らせ子供を作る。

生まれた子供の世話は下界の者に任せ、子供が人の世を終わらせた後に天界に引き取るのだ。

実に身勝手である。

常闇の女神の魂の入った女と彼女の愛しの夫の魂が入ったヒューイは結ばれた。

何回も人の世に生まれることになる御子はある程度の諦めと共に、死した後も神々の元には戻らず人の世で生きることを選ぶ者が多い。

前回、スコタディノーチェの両親として選ばれたのは見た目は良いが、最悪な心根の持ち主だった。たまには人族だけの国の男女をとゼノア国の住人を選んだが、月の神への信仰がない、その月を常闇の女神への信仰など皆無な国で御子が誕生しても自分の加護の力は薄い。そんなことを思い至らぬのが神の傲慢。生まれたのは良いが、虐げられ、挙げ句の果てに異空の穴に捨てられそうになるなど、全く予想していなかった。月の神が教えてくれなければロロを異空に送ることも出来ず、娘を無駄死にさせるところだった。

今回は、常闇の女神の夫が先にヒューイを選んだ。自分に見た目が似ており、性格も悪くはなく子供好き。常闇の女神は、最初はメラニン夫人を選んでもいいと思っていたが早々に彼女の性格が嫌になり、たまたま夜会の余興に来ていたマグノリアの容姿を気に入り、性格も醜悪ではないと知り、彼女を選んだ。

今度こそ幸せになると信じていた。

安心しきっていた女神は、ヒューイが既に結婚している身であること、マグノリアが流浪の芸術楽団で、一ヶ所には止まることはないことを理解していなかった。

そんなある日、女神はロロからいつまで経ってもスコタディノーチェから使い魔として呼ばれないがどうなってるのかと尋ねられた。

その時点で女神は、マグノリアとヒューイが結ばれていかなったこと、マグノリアが亡くなっていたこと、ノーチェが孤児として孤児院にいることを知った。そして、クズス伯爵家に引き取られることも。

クズス伯爵家と言えばヒューイの悪妻である。

彼女の心根がヒューイに向けて愛情を狂気の念に拗らせていることを分かっていた女神は自分のうっかり具合に呆れながら下界を覗いてみた。

瞬間、自分の魔力が遮断されたような感覚に陥った。

『女神さま?』

ロロの声など届かない程、女神の顔色が悪い。

再度、女神に声をかけた瞬間、部屋に入ってきた補佐官は姿を消した女神を見て持っていた書類を床にぶちまけた。

「女神さまー!」


女神がノーチェの側に現れた時、彼女は血を口から溢れさせた状態で倒れていた。

駆け寄った女神は自分の姿も力も矮小な存在になっていることに気付いた。

倒れたノーチェに注ぐ力も僅かだったが、彼女の命を削ぐ訳にはいかないと力を注ぐ。

愛しい我が子とは言え、まだ、神の子ではない。普通に簡単に死ぬ。女神が目にしたのは幼子に付けられた禍々しい気配を漂わせる首輪。

それが何をするものか女神の怒りは膨らむが、ノーチェの救命に意識を戻した。

マグノリアの容姿を持つ小さな妖精となった常闇の女神。

天界に戻ることは出来たが、魔力を封じられ、言葉も喋る事が出来ないノーチェを放置することが出来ず、女神は彼女の側に止まった。

舌を元に戻す魔力すら失ったのは、父なる父母神に許しもなく下界に降り、死ぬ筈だったノーチェを救ってしまったことに対する罰だった。

ノーチェが夫人や異母兄妹、使用人に殴られ、蹴られ、大地に転がってもただ見てるだけしか出来ないことにキレる女神。

(そんなに怒らないでよ。あの人達の魔法攻撃のお陰で、この首輪、もうちょっとで壊れると思うんだよね、)

女神が大袈裟に喜び飛び回っている。

(これが壊れたら、ロロも来てくれるかな。)

もちろんだと女神はノーチェの頭を撫でる。

(そしたら、世界中を旅したいなぁ。)

『私も!』

(母さまは、無理じゃない?只でさえお仕事出来てない状態なんだから。)

女神の脳裏に青筋立てた補佐官の顔が浮かんだ。


スコタディノーチェがロロを伴い旅立った後、呼び戻そうとする補佐官に待ったをかけ、女神はヒューイの前に現れた。

そして、ノーチェの存在に気付かなかったことを注意した。

補佐官に言わせれば、ノーチェは幸せに暮らしていると思い込んでいた女神も女神だと思っているが……。

『罰として、そなたと我が愛し子が再開するのは七年後とする。出会うまで娘に対する愛情を失わなければ家族となることを許してやろう。』

七年後、ノーチェは十四歳に成長している。

今の姿すら知らない娘を認知するには魔力を辿るしかない。

『愛し子が息災であるかは、そなたの使い魔を通じて知らせてやろう。しかし、そなたに娘がいることを知るは王家の者と公爵家の者だけとする。その者達以外には他言無用。ただ、使い魔を通じて文を交わすことは許そう。』

これより七年、父・ヒューイは筆不精である自分を呪いながら未だ見ぬ娘に手紙を出し続ける。監修は使い魔であった。


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