第1話 色北町の噂話
誤字報告を受けました!
報告してくれた方、ありがとうございます!
2023年 1月8日
大幅に加筆&修正しました!
20XX年 8月 日本 某県 某市
荒れ果てた道路は、長い間整備されておらず、草木が無秩序に生い茂っている。
夕方の薄暗さが一層不気味な雰囲気を醸し出し、風に揺れる木々の影が道を包み込んでいる。
夜に差し掛かり、辺りは不気味な静寂に包まれていた。
ただでさえ何かが恐ろしいモノが出てきそうな雰囲気の道路を一台のタクシーが走っている。
「─────それにしてもタクシーの運転手も危ない職業になったものですよ。つい先日も同僚がクビになりましてね、私もいつクビになるか・・・あー怖い怖い」
運転手の声には軽いジョークを交えつつも、内心の不安が滲んでいた。
しかし、髪が長い客は無表情で反応しない。
その無言の圧力が、運転手の背中に冷たい汗を流させた。
だが、まぁ無視されるのは慣れているのか運転手も構わず話しかけ続ける・・・いや、ここまで来たら職業病と言っても差し支えないのだろうか?
無視を決め込む客に対して話し続ける・・・
運転手の男がマシンガンのように話し続けている中、タクシーは静かに目的地に近づいていた。
闇に包まれた街路は不気味な静寂に満ちており、車のヘッドライトが一瞬だけ草木や廃墟を照らし出す。
その光景に運転手は一層の不安を感じながらも、ついにタクシーはある場所で停車した。
「そうそう、例の男は見つかりましたか?コッチもあれから仕事の間にそれらしい人物がいないか探しているんですが、収穫がゼロでして・・・」
その言葉に反応したのか初めて口が開いた。
「そのことは貴様、誰にも話していないだろうな」
「そりゃー誰にも言っちゃいませんよ」
「ならいい」
男はそう言い、大きな袋2つを持ってタクシーを降りた。
「次は3日後の夜6時でいいですよね」
「あぁ」
「ではまた」
タクシーは闇の中へと走り去って行った。
男はそれを一瞥することなく、冷たい月光に照らされた荒れ果てた街に歩みを進めた。
廃墟の間を通り抜けるたびに、風が不気味な音を立て、男の足音が静寂を切り裂くように響いた。
彼はゆっくりと、確かな一歩一歩で闇の中へと姿を消していった。
──────
────
──
同刻 近くの町の広場
「ニャル~、遅い遅すぎるニャ。ヨグ君は注文するのに何分かかっているのかニャ~。私のおなかはもう我慢できないというのに~」
淡紅色の髪の女がうなだれている。
「これは、お仕置きが必要ニャ~」
そして、何かひらめいたの顔のかニヤニヤし始めた、実に悪い顔をしている。
ちょうどその時・・・
「お姉さん笑顔が素敵だね!さっきから見てたけど、日本語上手だね」
若い二人組の男が一人話しかけてきた、見るからにナンパ師だろう。
「ニャハハハハ!キレイはよくいわれるニャ!あと日本人に上手いって言われると嬉しいニャ~!日本語はいっぱい勉強したからニャ~
まぁ勉強なんかしてないけど・・・」
女は最後に聞こえない声で呟く。
「へぇー、すごい努力家なんだね!ねぇ今ヒマ!?オレ達、今から少し先の色北町に心霊スポットに行くんだけど、よかったら一緒に─────」
「悪いけど私、ツレがいるからゴメンね!」
そう相手が話し終わる前に女は断った。
「そっかー、じゃあ連絡先交換し─────」
「ゴメンニャ~!私のツレ勝手に知らない男と連絡先交換すると心配するからできないニャ!それにそろそろ面倒だからあっち行ってくんない」
女は最後、少し圧をかけて言う・・・そんな女の態度に男達は毒気を抜かれたのかそそくさと逃げて行った。
それから数分後、今度は女の所に女か男か分からない中性的な人が来た。
「すみません、ニャルラさん!注文が長引いてしまって・・・もう何がいいやら・・・」
「もう、遅いよ~。ヨグ君、君が遅いせいで私ナンパされたからニャ~」
「え、そうなんですか!?大丈夫なんですか!?殺人犯とかになりませんか!?」
「いや!どういう心配してるんだ君は!?私自身を心配しろニャ!・・・これは・・・お仕置きが必要ニャ!」
「ごめんなさいごめんなさい、ニャルラさんも心配してますよ!だから、お仕置きは勘弁してください。代わりに面白い噂聞きましたから」
お仕置きと聞いてヨグはいきなり慌て出す・・・
一体どんなお仕置きなのだろうか?
「面白い噂ー?それがおもしろくなかったらお仕置き倍だニャ」
「いや、面白いっていうか・・・奇妙っていうか・・・僕達の仕事の話っていうか・・・」
「どーでもいいから早く!」
「はい、言います!言わせて頂きます!えー、並んでる時に聞いたんですけど、この町の少し先に色北町というゴーストタウンがあるんですよ」
「知ってる、心霊スポットになってるんでしょ。そんなの面白みがないニャ。日本じゃ××トンネルとか、××ダムとか他にもいっぱいあるけど?」
ため息混じりの声で話すニャルラに対して、
「いや、奇妙なのはそこ2年前まで普通の町だったらしいんですよ」
「2年前?そんなに新しいのかニャ」
ニャルラは少し驚くリアクションをするが、本気で驚いてはいない・・・そんな事はよくある事なのだから・・・
しかし、次のヨグの言葉でニャルラの余裕は消える。
「そうなんですよ。村とかならまだ分かるんですけど、そこが一夜にしてゴーストタウンになったんですよ」
「たった一夜で!?」
大声を上げるニャルラ。
「バケモノも見たっていう目撃情報もあるんです。これってやっぱり・・・」
「うん、間違いないニャ」
何かに気づいたようで2人は神妙な顔を浮かべた。
「よし、じゃあ今から行くニャ」
「えぇー!?今からですか!?今、夜の8時ですよ!?」
「鉄は熱いうちに打てって言うじゃないかニャ~。ほら、早くパフェ食べるニャ!」
「そんなぁ〜」
叫び声を上げるヨグも虚しく急いで注文したパフェを平らげたニャルラとヨグの2人はそれから色北町ついて書き込みを始めらのであった。
そして、数十分後・・・
「─────話によると、あるタクシー運転手が気味の悪い客を乗せていつも色北町に向かっているそうです」
「そのタクシーが戻ってくるのがもうすぐってことかニャ!」
「はい、確かナンバーは─────」
「あれじゃないかニャ!」
ヨグが言い終わる前にニャルラは例のタクシーを見つけた・・・
「─────おぉー、今夜はまた客に巡り会えた。今日はいい夜だ。しかも、美女と美少女ときた!これは腕がなるぜー!」
「ヒッヒィィィィ!!!僕は男はなのに・・・」
その言葉を聞いて、ヨグはすごく怯え出す。
「はっ!?いや、おっ男!? すいません!ずいぶんと可愛いです─────がはぁぁぁ!!!」
突然、ニャルラが運転手の襟を掴み持ち上げた。
「おい!どこの馬の骨かも知らないお前がヨグ君を怖がらせるとは、いい度胸じゃないかニャ。次怖がらせるとニャ────殺す!」
怒気混じりの声で運転手を脅した後、降ろした。
「ゲホッゲホッゲホッ!!本当にすいません!」
「分かれば言いニャ」
「あっ・・・あのう、もも・・・目的地はいったいどこへ向かえばいいのでしょうか?」
運転手は完全に震えている。
「君がいつも行っている色北町をお願いするニャ」
「あぁ、お客さん・・・もしかして心霊スポット巡りでもしてる人ですか?悪いことは言いませんから行かないほうがい─────」
「さっさと出すニャ!」
「はい、今すぐ出します!」
完全に上下関係がハッキリした瞬間だった。
* * *
髪の長い男は荒れ果てた街路を歩いていた。
見渡す限りどの家もガレキと化していて、男以外の人の気配がない。
数分歩くと、一応住めそうな家に男は入っていった。
家には当然電気は通ってなく真っ暗だ。
しかし、男には見えてるのか躓きもしない・・・まるで見えているかなようだ。
そのまま男がリビングに入ると、そこは明るかった。
月の光が差し込んでいるのだろう。
男は何処か適当な場所に袋を置き、また廊下に戻り、今度は二階へと向かい、ある部屋に入った。
「────ッ!」
部屋の壁には、人が通れるサイズの不気味な穴が空いており、そこからわずかな光が射し込んでいた。
「(出かける前は空いていなかったはず─────)」
彼の頭の中には疑念が渦巻いた。誰かがこの部屋に侵入したのか?それとも何か別の恐ろしいことが起きたのか?
しかし、男はそう考えながら、ある結論に達し・・・
「またか」
そう男は一言小さく呟く・・・
「まぁいい、探すのは、御飯を食べてからにしよう。今夜は、満月だからな。月を見ながら食べるのも中々乙だろう─────そうは思わないかお前たちも・・・」
男は部屋にいる者に話しかけた。
* * *
「こっ・・・ここです!ここが色北町です!」
目的地である色北町に着いた事を運転手は震えながら答える。
「お金はっと・・・5000円っ!?けっこうするじゃないかニャ~。ぼったくりかニャ?」
「いえいえ!先程あんな目にあっておいてぼったくるわけないでしょう」
男は苦笑いしながら言った。
「・・・フーン、じゃあカードで払うけどいける?」
「はい、ご心配なく」
そして、ニャルラは黒いカードで払った。
「見たことないカードですねぇー、外国のカードですか」
「まぁそんな感じニャ。ほら、ヨグ君も降りるよ」
そうニャルラは言い、二人は降りた。
「あのー、お金払ってくれたんであれですけど、本当に行くんですか?ここに入った人ほとんどが行方不明になるんですよ。お止めになったほうが・・・」
「でも君は同じ客とここに来てるそうじゃないかニャ」
「いや・・・そうなんですけど・・・」
運転手はなんだか歯切れが悪そうだ。
明らかに何かを隠している様子・・・しかし、ニャルラはあえて言及しない。
「ニャルラさん、あそこに車が止まっているんですけど・・・」
「ゲッ、本当にどうして危ないって言ってる場所にわざわざ行きたがるのか私には分からんよ」
運転手は呆れた顔でニャルラ達を見た。
「まあまあ、私達は心霊スポット巡りに来た人じゃないニャ。一応仕事でここ来たニャ」
ニャルラはそう宥める様に言った。
「仕事?」
「そういうことだから・・・あっ、おじさんの連絡先教えてよ。終わったら迎えに来てもらうからニャ」
「はいはい」
呆れながら運転手は電話番号を教え、
「じゃあ、生きてたら連絡しろよ。じゃあな」
そう言った後、走り去って行った。
「・・・あのおじさんの口ぶりからして何か知ってたんじゃないんですか?」
「まぁね・・・でも、教えてくれそうになかったしニャ。まぁ、十中八九ビンゴだと私は思うニャ~」
ニヤニヤしながらニャルラは話す・・・何処か興奮しているようだ・・・反対にヨグはビクビクしている模様。
「確かにそうですね。何か本当に幽霊とか出てきそうな雰囲気で怖いんですけど・・・」
「君は本当に怖がりだニャ。そんなのよりもっと怖いの見ているというのに・・・まぁいいか、さぁ行くよ」
「は・・・はい!」
こうしてニャルラとヨグは色北町の中へと姿を消していった・・・