表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

126/243

第123話 きみだからいいの

長くなってしまった……。

限りなくアウトそうな描写を削っていますが、それでもアウトそうなら修正します。

 おーちゃんの治療の為、イルマちゃんがわざわざお城で泊めてくれた。

 この国でこの場所ほど安全なところはそうそうないだろう。


「ただいま、おーちゃんの様子はどう?」


 オイカワを仕留めた私はお城へ戻ると、真っ先におーちゃんを寝かせているお部屋へと向かった。


「お帰りなさいませ我が主! ……相変わらずだ。まだしばらくは目を覚ましそうにない」


「そう……。ドレナちゃん、私がいない間おーちゃんをありがとね」


 おーちゃんを寝かせているベッドの傍らには、腕を組んだドレナちゃんが立っていた。

 私がオイカワを殺しに行っている間、万が一不埒な輩がおーちゃんに近づいてもぶちのめせるよう、ドレナちゃんを待機させておいたのだ。


「それにしても、全然目を覚まさないわね……」


 救出してから半日、おーちゃんはずっと眠ったまま目を覚まさない。

 お医者さんに解毒剤をお注射してもらったりしたから、その効果で寝ているのかもしれないそうね。


 それに、とっても疲れているだろうしね。ぐっすりおやすみ、おーちゃん。


「我が主……。そろそろワタシを、正式な配下として認めてくださらぬか?」


「あー……まあいいわよ。主従契約って、確か主側が血をあげればいいのよね?」


「左様。1滴で十分な故、自らの首を裂いたりはしないでくれたまえ」


「しないわよっ」


 私の事を気の触れた魔王か何かだと思ってるのかしら。

 まあ頸動脈を切ったくらいじゃもう、死にはしないんだけどね。


「……はい、手を出して」


「おぉ……ありがたい!!」


 差し出されたドレナちゃんの手のひらの上に、私は指先から血を1滴垂らす。


 ドレナちゃんはそれを口に含み、大事そうに飲み込んだ。



 《主従契約の成立を確認……能力(アビリティ):【炎竜王召喚】の獲得を観測しました》



「これって……」


 ドレナちゃんを、いつでも召喚・送還できる能力……。これまた都合のいい力ね。

 召喚とは言っても、おーちゃんのものとは原理そのものが違うみたい。


「くはははっ! これでいつでも駆けつけられるな!!」


「そうね、また困った事があったら頼りにするわ」


 正式に私の配下となったドレナちゃんは、尻尾を犬みたいにぶんぶん振りながらご機嫌な様子だ。

 なんだかかわいらしいし、定期的に呼び出してあげようかしらね。



 それからドレナちゃんは、気を遣って自らお部屋を出ていってくれた。気遣いできる配下を持てて私は幸せ者ね。


 お部屋には私と目を覚まさないおーちゃんのふたりきり。

 窓の外は夕暮れで、雲海に沈む夕陽を眺められる。


 あぁ、この景色をはやくおーちゃんと一緒に眺めたいわ……。


「すぅ……すぅ……」


「ふふ、お寝坊さんなおーちゃんも可愛いわね……」


 ひょっとしたら、こうしておーちゃんの寝顔を見たのは初めてかもしれない。


 私はおーちゃんをいっつも胸に埋めるように抱きしめていて、寝顔を見る機会はあまりなかったように思える。


 こうして見られるおーちゃんの寝顔……控えめに言って可愛すぎるわ。天使かしら?


 あぁ、可愛すぎて食べてしまいたい……。お腹の中に閉じ込めて、私だけが一人占め……。おーちゃんを愛でて愛でて愛で尽くしてしまいたい……。


 って、それはさすがに嫌がられそうね。

 おーちゃんが嫌がる事は本意じゃないわ。


「ちょっとごめんねー」


 濡れタオルを片手にぺろっとほっぺを一舐め。うん、おーちゃんは世界一美味しいわね。


 じゃなくて、身体を拭いてあげなくちゃ。

 お風呂に入れないし、清潔にしてあげなきゃ。


「よしよし、おーちゃんは綺麗ねー」


 お布団を剥がし、脱がせやすい前開きの服を外し、文字通り無防備で肌色眩しいおーちゃんをごしごし拭いてあげる。


 角も翼も尻尾の先っちょも忘れずにね。

 隅々までごしごし。大丈夫、まじまじ見たりはしないから。


 そうして綺麗になったおーちゃんを眺め、また可愛いを接種しようとした時のこと。


「うっ……!」


 喉の奥底から沸き立つこの感覚は、吸血衝動ね……。

 おーちゃんはまだ寝てるし、血を飲ませてもらう訳にはいかない。


「あぐっ!!」


 だったら、自分の血を吸えばいいのよ。


 私は私の手首に噛みついて、滲み出るそれを無理やり飲む。

 味は普通。不味くも美味しくもない。


 いつも飲んでるおーちゃんの血はとっても甘くてね、口の中で優しい香りが広がって、とにかく美味しいの。他のお料理にかけてもいい。何にでも合う。


 それと比べたら、私自身の血はそれほどでもない。けれどおーちゃんから吸血できない今、これで乾きを誤魔化せるなら喜んで飲むわ。


「ごく、ごく……ふぅ」


 ふう、何とか吸血衝動を抑え込めたわね。

 再生能力のある私は貧血にはならないから、いざって時は自分の血を飲むのもアリかもしれないわね。


「ふわぁぁ……」


 血を吸ったら、なんだかすごく眠くなってきちゃったわ……。

 昨日から大変だったものね、私もおーちゃんの隣で寝させてもらうわ。


「おーちゃん……」


 一緒のお布団の中にもぐこんで、おーちゃんの隣につく。いつもは抱き枕にしていたからか、こうして寝姿を見るのはちょっぴり新鮮ね。かわいい。


 かわいい……。このまま襲っちゃっても、おーちゃん気づかないわよね?

 ……ううん、ダメよ私! そういうのは合意の上でやるから気持ちいいのよ!! きっと!


「むにゃ……ますた……」


「っ!!?」


 おーちゃんが寝言を口にしたと思ったら、布団の中で私の太ももに何かが巻き付いてきた。

 こ、こ、これって、おーちゃんの尻尾……?


 きゅっと巻き付いてくるそれは、とっても可愛らしくて……。思わずたどって尻尾の付け根に手がいっちゃう。


「……ん、ぅ」


「かわいい……」


 尻尾の付け根を軽くにぎにぎすると、おーちゃんの口から可愛い声が溢れ出る。


 なにこの可愛い生き物……?

 もっとにぎにぎしちゃいたい、けど今はしない……! おーちゃんが回復してからのお楽しみにとっておくのよ!!! 我慢、我慢よカナン!!


「すぅ……すぅ……」


「はぁ……はぁ……」


 無理やり心を落ち着かせ、目を閉じて気持ちを抑え込む。

 気を抜いたらおーちゃんに何をしちゃうかわかんないわね……


 けど、おーちゃんが目覚めて元気になったらいっぱい堪能しちゃうんだから。








 ――昨日は何とか眠れたわ……。興奮してて大変だったけれど。


 今の時間は明け方ね。雲海が緋色に染まってるわ。綺麗ね……。


「おーちゃんも、はやく起きてくれないかしら」


 そうしたら、この景色を一緒に見られるのに。

 おーちゃんの頭をそっとさする。いつ見てもかわいいわね……。


 ふっくら柔らかい頬が、さらさら撫で心地のよい髪が、瑞々しい桃色の唇が。

 私の胸の奥をぞわぞわさせてきて、めちゃくちゃにしてしまいたくなる。


 ……おとぎ話では、眠り姫に王子様が口づけをして目覚めさせる……なんていうのがあったわね。


 ほっぺくらいなら許してもらえるかしら。ほっぺくらいならセーフよね、そうに決まっている。ほっぺだけなら……!


 もういてもたってもいられず、私は寝息をたてるおーちゃんの頬に口を近づける。


「んーっ……」


 もちもちしてる……。感触だけでもう可愛いってわかるわね。かわいい新食感。

 いっそこのまま……


「んぅ……主様(ますたー)? 何し、てるの?」


「ほにゃっ!? お、おはようおーちゃん!!」


 お、起きた! おーちゃんが起きた!!

 嬉しいのよりも先に、なぜか私はちょっぴり焦っていた。


 だ、大丈夫よね……。ほっぺにちゅーしたくらいで、嫌われちゃったりしないよね?


「んわぁ……おは、よう」


「おはよう、おはようおーちゃんっ!!」


 私を見てくれるおーちゃんのお顔を見ていたら、なんだか悩んでいる事がどうでもよくなって。そして私は思わず、おーちゃんをぎゅーってしていたのであった。


「うぎゅ……苦しいよ主様(ますたー)……」


「良かった、良かったおーちゃん……」


 丸1日ぶり、たった1日ぶり。それだけの時間、おーちゃんが目を覚まさなかっただけで、こんなにも心を動かされる。


 私はもう、おーちゃん抜きでは生きていけないのかもしれない。


 だからこそ、この気持ちをいい加減伝えないとね。








 *







「ん……わっと!?」


「大丈夫おーちゃん?」


 私の手に掴まって、お城のあちこちをうろうろ。このお城はとっても広くって、色んな景観を楽しめる。

 こうしてリハビリをするにはちょうどいいわね。


 ちなみに今日はイルマちゃんもドレアちゃんも、イレナちゃんと一緒に学校の見学に行っているらしいわ。ドレナちゃんまでも付き添うのはなんでかしらね。


 うろうろしながら訪れた最上階にあるダンスホールの天井には、蒼い翼を生やした女性を模したステンドグラスが貼られていた。大海の女神(アクアデウス)様の化身の姿を表しているのね。美しいわ。


 イルマちゃん不在というのに、こうしてお城の中を自由に歩き回れるなんて不思議ね。信頼されてるのかしら。


「綺麗ね、おーちゃん」


「……ん」


 どうしたのかしら?

 おーちゃん目覚めてからずっとぼんやりしているわ。頬を紅く染めて、ずっとふらふら。まだ毒も抜けきっていないからかしらね。


「……主様(ますたー)


「なあに?」


「う……なんでもない」


 もう、何よ。今日はずっとこんな調子で、これはこれで可愛いわね。けど、ちょっと心配になる。


 それからもおーちゃんは、ぼんやりしたまま何かよそよそしい様子でいた。時々私を呼んでは、何でもないと言う。

 結局、何を求めているのかはわからず1日を終えた。





 翌日。


 おーちゃんの体内の毒はほぼ分解されて、足元もおぼつかない状態はなくなった。


 なのであと半日ほどお城でお世話になってから、いつもの宿に帰る事にした。


 イルマちゃんいわくあの宿はお城よりも安全な場所らしいけれど、どういう意味なのかしらね。





 〝星屑の海〟。

 いつもの、ラントおばあちゃんが切り盛りする温泉つきの宿だ。その中の〝星の間〟は、私とおーちゃんが二人きりになれる場所。


「……ふぅ、ふぅ。あうぅ……」


 そこで1日ぶりに温泉に入っても、おーちゃんのぼんやりは続いていた。

 どうしてかこっちを見ようとしないし、なんだか大人しいわね。


 まだどこか痛いのかしら?

 そう思って聞いてみたら、変な声を出して固まってしまった。

 変ね。


 それから温泉を出るのと同時に、吸血衝動(いつもの)がやってきた。


「おーちゃん、血を飲んでも平気かしら?」


「へ、あぅ……いい、よぅ」


 一応浴衣を着てから、おーちゃんに血を吸ってもいいか聞いてみる。

 するといいよとは言ってもらえたのだけれど、やっぱりなんか変。


 けれど衝動が強まってきたので、気にせずお布団に押し倒して首筋にかぷり。


 温泉から出たばかりかしら? 顔を真っ赤に染めて、なんだかすごく熱いわ。おーちゃんの身体全体がすごくほかほかしてる。


 血もいつもより温かくって、心なしか甘味が強い気がするわ。


「んっ、んっ、んっ……」


 あぁ、美味しい……。私の中に、おーちゃんの熱くて甘い血が注がれていく……。


「んっ……う……あぅ」


 私が喉に流し込むのと連動するように、おーちゃんも甘い声をあげる。


 ……やっぱりいつもと違う。なんでそんなにどきどきしてるの? なんでそんなに体を火照らせているの?


 わかんない。

 けど、かわいい……。



 ……その時だった。

 私の体にも、異変がおきたのは。


「んっ……?」


 お腹が、熱い。

 おーちゃんの血を溜めてる胃袋が熱いのはもとより、なぜかお腹の下のほうが急に熱を籠らせている。

 その熱は急速に全身へと広がっていって、私に目眩と胸の高鳴りを与えた。


 それだけじゃない。目の前にあるかわいい生き物を食べてしまいたい(・・・・・・・・)という強く抗い難い衝動が、吸血衝動よりも勝ってしまった。


 待って私、このまま勝手に襲っちゃおーちゃんに嫌われちゃう……


「……主様(ますたー)?」


「あのねおーちゃん……。私ね、おーちゃんの事が大好き。

 この好きは、おーちゃんをお嫁さんにしたいっていう好きなの。この気持ちをずっとずうっと我慢してた……」


 だから、気持ちを伝える。胸の中で頬を赤らめるこのかわいい生き物に。

 ずっと留めていた感情が、決壊するように。衝動に身を任せて、勢いのままに。


「はぁ、はぁ……主様(ますたー)……?」


「……つまりね、はあ。私はいま、無性に……おーちゃんを襲いたいの。

 今すぐおーちゃんの全部が欲しい、あぁおーちゃんの全部を奪いたい……!

 はぁはぁ……ね、ねぇ、おーちゃん。私におーちゃんのゼンブを、くれる?」


 身体がもう、抑えきれない。

 お布団に爪を食い込ませて、せめて返事が来るまでは堪える。


「あ、あぅ……いいよ、主様(ますたー)なら……」


 そう、返事が来た瞬間。私の身体は衝動と欲望のままにおーちゃんの身体をがばっと抱え込み――


「あぅっ……ま、主様(ますたー)だからいいんだ……。オレのゼンブ、主様(ますたー)にあげる……。だから、めちゃくちゃにして……」


 ……女の子同士のやりかたは知っている。実は奴隷時代に教わったりもして、知識としてはある。でも本番は初めてよ。

 お互い初めてだけど、それでもきっと上手くしてみせるから。


 目元を手首で隠して恥ずかしそうにする姿も、恥じらいつつも受け入れてくれる姿も。なにもかもがたまらなく愛おしい。


 大好き、おーちゃん。大好き、私だけのかわいいおーちゃん。大好きだから、めちゃくちゃにしてあげる……!






 月光だけが照らすお部屋の中。


 そこでは、子猫が水を飲むような音が一晩ずうっと鳴り続いていた。

ついに……。

当然おーちゃんは受けです。なすすべなく美味しくいただかれてます。

ノクターンあたりで書くかもしれません。


追記:現在ノクターン用に執筆中です。投稿できしだいお知らせします。


更なる追記:ノクターンに『バケモノ少女の影魔ちゃん 番外編』を投稿いたしました。おーちゃんがエッッな目にあうお話です。規約上ここにはR18ページへのリンクを貼れないので、コードだけ置いておきます。N4015HI

ご理解のほどよろしくおねがいします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ( ゜д゜)✨のくったぁーーーんっ!! こいつぁハラショー…。関係が進んだところで能力的に変化もあるのかな?
[一言] 番外編読みました!おーちゃんの初めては私のものだったのにっ!!
[気になる点] ノクターンまじか!めっちゃ楽しみにしてます… [一言] 好き好きほんと好き、この百合空間が大好きです、
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ