ケレテレス上陸戦ー2
クレイムが扉から飛び出した先は港であった。
眼前には前線の魔大陸へ物資や人員を輸送する為の巨大な帆船が何隻も停泊していた。
そこで無数の人間の兵士と魔族と思われる黒衣のローブを纏った者達が交戦しており、戦場特有の血生臭い臭いが辺りの空間を包み込んでいた。
数では人間側は少なくても倍以上はいるだろうが、かなり劣勢に立たされているようで、魔王軍特殊工作部隊は素早い動きで斬撃をするりと交わし、一瞬の間隙をついて首元へ短剣を突き刺していく?
更にそこにクレイムが加わった事により人間側は更に劣勢になる。
「おらよぉ‼︎」
クレイムがククリナイフを振るうと、衝撃波の様なものが放たれ、一気に数十人の鎧を纏った人間の兵士達が空中高く放り出され、地面に衝突する。
見た感じでも20m程は飛ばされており、勿論こんな高く飛ばされて地面と衝突したら生きている訳がない。
その後、クレイムは敵と味方が入り乱れる乱闘の中で的確に尚且つ目視できぬ程の速度で首を一振りで切り落として行く。
ものの数十秒で、百人程居た人間の兵士は殆どがクレイムに斬り殺され、残りも魔王軍により掃討されていく。
「す、すごい……斬る速度が速くて見えない……」
背後でそれを見ていたロイスはその光景に圧倒されていた。
この速さの動きは流石にパルティアも無理だろう。
「当たり前ですよ、魔王軍の最高戦力の一柱なんですから強いに決まっています」
フィリアはまるで我が事の様に自慢げに語る。
そうしているうちに殲滅が終わったらしく黒衣のローブを纏った魔族達がクレイムの元へと集まる。
集まった魔族の中で一人がクレイムの前へと出て口を開いた。
「クレイム様、我ら魔王軍特殊工作部隊【魔王の眼】は港を中心に占領。斥候の報告によると人間側に兵力を集結している動きが見られます」
「わかった、お前らは港の防衛に努めろ。流石にこの都市の人間全員相手にできやしねぇんだ、後続の本隊が来るまで耐えるぞ‼︎」
「はっ」
そう言うと魔王軍随一の特殊部隊である魔王の眼の構成員達が彼方此方に四散していく。
「魔王の眼の頭数は120人か、流石に敵が突っ込んできたらどうしようもねぇな」
クレイムはロイスに鋭い瞳を向ける。
「そいや、お前相当強いんだろ? 無理も承知で言うかもしれねぇがよ、俺ら魔王軍に雇われねぇか?」
「俺を雇う……?」
「ああ、そうだ。人間のお前が俺らに雇われるなんて頭おかしい話なんだが、少しでも強力な兵力が欲しいんだよ。勿論好きな金額の報酬を約束する、もしそれで人間の国で居場所が無くなるってんなら魔大陸で客品として丁重に扱う……どうだ?」
ロイスはその答えを一息ついて答える。
「本当に俺でいいなら雇われます」
「あ? 本当にいいのか、つーか判断決めんの速すぎじゃねぇか⁈」
クレイムはロイスの予想以外の答えに目を丸め、声を荒げる。
「そっちからそう言ったのに驚きすぎじゃないですか?」
「要するに人間裏切って俺らに着こうってんだぞ? お前の立場も危うくなるかもしんねーんのによ‼︎」
「どのみち同じ人間とは揉める予定だったんですよ、それが少し早まっただけですし、報酬を貰える分プラスですしね」
「お前も色々と訳有りなんだろうな……詳しくは聞かねーけどよ。本当にそれでいいんだな?」
「大丈夫です、それに魔王軍の七大魔将にこび売れますしね」
クレイムはふっと笑みを浮かべると、ロイスに少し鋭さが丸まった瞳を向ける。
「まぁ手伝ってくれるならどうでも良いが……後、その拙い敬語をやめろ、きもちわりぃ」
「あぁ……うん……わかった。じゃあ、この調子で喋らして貰うよ」
「それでだ、暫くすりゃ此処に人間の群れが押し寄せてくる筈だ。兎に角そいつから此処を防衛する、それが俺達の仕事だ」
その時、ロイスの背後からメイリスがひょこりと現れる。
「とりあえず中で囚われてた人は全員救出したよー。いつでも船に乗せる準備はできてるけどどうするの?」
「あ、あの私の妹は居ましたか……?」
フィリアは心配そうにメイリスに問いかける。
「フィリちゃんの妹ちゃんでしょ? 確かミリムちゃんだっけ、それなら此処にいるよー」
そう言うメイリスの背後からフィリアと良く似た見た目の幼い少女がそっと顔を出す。
「お……おねぇちゃん?」
その少女は容姿はフィリアと似通っているものの、髪は短めで活発そうな11、12歳程度の少女だった。
その少女はフィリアを見るや否やメイリスの後ろから飛び出し、彼女に抱きつく。
「ミリム‼︎ 大丈夫でしたか、怪我は?」
「ううん、無いよ。おねぇちゃんは大丈夫なの、酷いことされなかった?」
「私は大丈夫です、それよりもミリム。ちゃんと生きていてくれてありがとう……」
フィリアは強く妹を力強く抱き返した。その顔には安堵の表情と涙が頬を伝っていた。
「おねぇちゃん、痛いって……」
フィリアは無意識なうちに、相当な力を入れていた様で、手を離すとミリムの腕周りに赤い跡が出来ていた。
「ご、ごめんなさい……。つい無意識のうちに」
「まぁまぁ、とりあえず二人とも会えてよかったねー」
メイリスは慎ましい笑みを浮かべる。
「だが、安心するのはまだ早いぜ? こっから無事帰れる保証はねぇんだからな。それまで気を抜くんじゃねぇぞ」
クレイムはそう言い、続けてロイスに話しかける。
「おい、ロイスだったか……? 此処にいる全員の命は俺とメイリス。そしてお前にかかってんだ、下手こくんじゃねぇぞ」
「勿論、わかってるよ……」
ロイスはそう言われ、一度深い溜息を吐く。今まで召喚した銃火器は圧倒的強さを誇るが、数千、数万の敵を殲滅するにはまだ足りない。
「やってみるしか無いよな……」
ロイスは大量の敵を圧倒し得る武器をイメージした。




