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七大魔将



奥へと進んでいくと廊下の様な縦長の空間へと辿り着く。

 その通路は両脇が檻になっており、血生臭い様な鼻をつく悪臭が漂ってくる。



檻の中には魔族らしき複数の人物の影が見える。

 そこには女性しかおらず、男性の魔族は全く見当たらなかった。

 彼女達の目は怯え切っており、ロイスとフィリアを目で捉えても虚な瞳で追うだけだった。



「男が殆どいないみたいだけど?」

 

「男性の様な肉体労働向けの奴隷は別な場所で売買されてますからね」



ロイスの問いにフィリアは簡単に説明しながら一つ一つ檻を確認しながら呟く。



「ね、ねぇ……貴方も魔族なんでしょ? だったら、私達の事助けてよ……」



そう声を発したのはフィリアよりも若干年上の少女だった。

 力無い声で語りかけてきた彼女は痩せこけ、身体中に傷跡があり、ここでの生活がいかに劣悪なのかを物語っていた。



「ごめんなさい。私は妹を探さないと行けないのです、いずれ貴方達を助けに来ますので……」


「だったら私達も一緒に」


「それは厳しいですね、此処は警備がきついので大勢では逃げられません」



少女はフィリアの発言を聞くと深く落胆し、檻を掴み膝を着いた。



「嘘つかないでよ……どうせ妹見つけたら逃げて戻って来ないんでしょ? 戻ってこないなら、はっきり言ってよ、変な希望持たせないで……」


「うぅ、そ、その……」



フィリアはその事について聞かれて言葉を詰まらせてしまう。

 彼女は此処にいる全ての同胞を助けてあげたい、しかしそれは現実的に不可能である、だがそれをきっぱり言う勇気はフィリアには無かった。





「何やってんだお前らよぉ‼︎」



暫くの沈黙がその場を包み込んでいた時だった。

 その空間を切り裂く様に尖った怒声が辺りに響き渡る。



「もう侵入した事がバレたのか⁈」



ロイスは念のために懐に入れていた拳銃に手をかける。



「いえ……どうやら違うみたいです」



フィリアはそう言い捨てて、その怒声の持ち主を遠目からまじまじと見つめていた。

 怒声の持ち主は外見年齢は10代前半程度の若い男で額の上辺りに二本の角が生えていた、おそらく有角人と呼ばれる魔族であろう。

 黒髪を短か揃えた端正な顔立ちで、一見はヤンチャそうな少年である。

 しかし、その服装は漆黒の軍服に身を纏っており胸元にはいくつかの勲章を付けていた。腰にはククリナイフを下げており、その格好から独特な異様さを放っていた。



「あ、貴方様は?」


「あぁん? お前は神聖魔族ダエーワか、珍しいな……まぁどうでもいいが。俺は【七大魔将】がひとりクレイム・アルガ・ダイハード、てめぇも魔族なら名前くらい知ってんだろ?」


「七大魔将⁈ 魔王様の側近が何でこんなところにおらっしゃるのですか?」




七大魔将とは魔王直轄の配下であり、ヒエラルキーで言えば魔王の次に上位の階級である。

 ひとりひとりが一騎当千の実力を持つとされ、魔王軍の中でも特に警戒されている者達でもある。勿論ロイスも七大魔将の存在は知っていたが実物を見るのは当然ながら初めてだ。



「んなもん決まってんだろ、てめーら全員助ける為だよ、まぁお前は大丈夫みてぇだがな」



クレイムはロイスの方へと視線を向ける。

 その視線は睨みつける様な凶悪な物で背筋が凍る様な感覚が陥る。



「それで、この人間は味方か?」


「一応、敵では無いですね」


「あぁん? もっとしっかり喋れよ、なよなよしいなぁ‼︎」



クレイムの高圧的な態度に萎縮気味だったロイスに追い討ちをかけるかの様に怒鳴り付ける。



(苦手なんだよなぁ……こう言う高圧的な人)



ロイスは内心そう思いながらも、苦い表情を浮かべる。



「クレイム様、この人は私を助けてくれた恩人です。人間ではありますが、決して悪いお方ではありません、私がここに来れたのも彼のおかげです」


「んまぁ、確かにそんな奴には見えんな……人間ってのがむかつくんだけどよ。とは言え変な真似したらお前の首が吹き飛ぶと思え、いいな?」


「あっ、はい……」


「わかりゃそれでいいんだよ」




「クレイム、あっちの部屋の救出は終わったよー」

その時、背後から淡い声が聞こえる。

 振り向くとそこには魔族と思わしきおっとりとした雰囲気の少女の姿があった。



「スパオ=クレイス」



その女性が何やら魔法を唱えると、この空間中の檻の錠前がパァンと破裂音をあげ、粉砕する。



「これで仕事終わり? もう帰っていいかなぁー」


「あ? メイリス、もう少し仕事があるから無理だ」



メイリスと呼ばれた少女は深いため息を吐いて、その場に倒れ込む。



「もう私疲れたんだけどー、寝ていい?」


「ああ? いいから行くぞ、めんどくせぇなぁ」


「あふぅ」



クレイムはメイリスの首根っこを掴み、起き上がらせる。



「お前らついて来い、今頃面でドンパチ始まってる頃だぜ」


「そといこーぜー」



クレイムの鋭い瞳がロイスとフィリアの2人に向けられる、それに続いてメイリスのふぬけたおっとりとした声が聞こえた。

 とりあえずこの場は彼等の言うことを聞いた方が賢明なだろう。

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