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紅の魔眼と白銀の刀  作者: 櫻庭空
Episode2
29/34

Episode.2 (part.27) 人外

 悠徒が目を覚ましたのは、気絶してから3日後の夕方だった。

 不幸中の幸いか、悠徒が張った結界は市の体育館の方は元々簡易結界だったので、悠徒が気絶したのと同時に壊れたが、スーパーの方の結界は気絶していた3日間も悠徒との魔力供給は続いていたおかげで、忍たちの仕事が増えずに済んだ。

 悠徒の怪我は気絶してから3日経ったが治る兆しが無かった。

 治癒魔法で剥き出しの肋骨は隠れたが、表皮に呪印のようなやけどの跡が胸元に残っている。


 悠徒が目覚めた次の日、悠徒は完治した体を動かしにスーパーの駐車場に出た。

 あの日、神導術を使う女が神導術を手に入れる種を自分に渡したと言っていたが、悠徒は目覚めた時に自分の体に違和感(・・・)がある事に気付き、その違和感が種だとすぐに分かった。

 悠徒は右手に魔力を集め、最大威力の魔法を上空に放った。

 魔法はいつものように放てたが、いつも通りで神導術ではなかった。

 悠徒は近くの自動車のボンネットに寝転がり、空を眺めながら神導術を発動するにはどうすればいいのか考えた。


 3時間が経過した。

 朝早くに起きた悠徒だったが、もう時刻は7時を過ぎていた。

「悠徒!朝食の時間は過ぎたよ!」

 突然、悠徒の耳元に大音量の忍の声と忍の蹴りによる車の横転に悠徒は一瞬ビクッとしたが、地面に倒れる前に宙返りして地面に足から着地した。

 悠徒が声のした方を振り向くと、そこには優賀と忍の姿があった。

 なぜ、2人が来たのは、悠徒がベッドに居なく、朝食の時間になっても来ない事に心配した2人は悠徒を呼びに来たらしい。

「・・・悠徒。体、大丈夫?私たちの為に怒って暴れてくれたって聞いたから・・・・」

 優賀は悠徒の胸元の傷を見ながら申し訳なさそうに言った。

「ああ、大丈夫、怪我は完治してもう大丈夫だから。それより、優賀の方は?怪我は無かったか?」

 悠徒はそう言うと、優賀は大丈夫と顔を下向けながら言った。

 悠徒はそんな優賀の事が心配になったが、これ以上追及すると余計に落ち込むような気がしたので、悠徒は優賀にもう少し修練すると言って、再び神導術の練習をした。


 悠徒はあの女に魔法は無意味なので、常備している遅延魔法(ディレイ・スペル)を全て上空に放とうとした。

 1つ目の遅延魔法を放った瞬間、悠徒の魔法はその魔法の威力以上の魔法が発動された。

「ゆっ、悠徒!襲撃!?」

 爆発音を聞いた忍たちが悠徒の下に駆け付けた。

「いやぁ、元々、用意してた遅延魔法を発動したら・・・」

 そう言って、悠徒は詠唱を始めて魔法を放ち、次に遅延魔法を発動させた。

「「「・・・・・・」」」「すげー!」

 忍、エリス、チアは絶句状態でいたが、ライドだけは目を輝かせながら興奮していた。


「じゃあ、遅延魔法が悠徒の体の中で、なんだっけ?しんどうじゅつ?になってるってことなの?」

「まあ、そう言う事だな。遅延魔法が体の中で魔力が変換されて神導術になっていることかな?」

 悠徒はそう言って詠唱を始めて、詠唱が終わって完成した魔法を腕に巻き付けた。

 腕に一瞬、刻印が浮かんだが、すぐに消えてしまった。

「遅延魔法って体にマジックスペルを体に刻むことなの?」

「まあ正確には、魔法詠唱の属性、長さなどによって腕に刻み込まれる刻印っていうか紋章が腕から始まって全身に行く感じかな。」

 そう言って悠徒は上着を脱いで体中の魔力を活性化させた。

 次の瞬間、悠徒の体から刻印が次々と浮かび上がり、悠徒の上半身全体に刻印が浮かび上がった。

 忍、エリス、チアの3人は遅延魔法に対する人体ダメージは知っていたが、悠徒が所有している遅延魔法の数は数え切れなくて、悠徒の体を確実に蝕んでいる。

 だが、悠徒はそんな顔を見せずに平然としている。

「悠徒、そんなに溜め込んでるけど、ダメージって、相当ヒドイと思うのだけど・・・」

「ああ、それは大丈夫。紅の力で蝕んでいるけど回復もしている。まあ、そんな感じ。」

 悠徒は笑いながら平然とそのような事を言った。

「・・・それって、常にダメージを喰らっている状態ではないのですか?」

「体には異常は無いし、幻惑の傷(ファントム・ダメージ)が|0.01秒《コンマ れい いち びょう》で脳に直接来るだけだ。」

「脳に直接!?あんた、かすり傷程度でもそんな一瞬で脳に来たら、強靭な人でも激痛に耐えられないわよ!」

「もう、一種の人外になったって訳か・・・」

 悠徒はそう言いながらも平然とした態度でいた。

「俺と同じになったからって、俺もマスターも人間として受け入れられている。」

「・・・そうだな。紅と契約したお陰で今がある。人外でも俺は皆と楽しくできればそれでいい。」

「っは、つくづく面白いなマスターは。」

 ライドは高笑いをすると、悠徒は調子に乗るなとライドの顎に向かって魔力を込めたでこピンをした。

 椅子に座っていたライドはそのまま後ろに倒れ込み、後頭部を打ちつけたのか後頭部を撫でていた。

「人外になったのは、まあ良しとしても、お前に言われるとなんかムカつく。」

 悠徒はそう言うと、悠徒は再び修練の為に駐車場に向かった。

「俺も修練を付き添ってやるよ。」

 ライドはそう言って悠徒を追いかけて行った。


 悠徒はこの日は計13時間もの修練をしていた。

 付き添っていたライドは7時間と悠徒の半分ぐらいしかやっていないが、ライドの体力はもうほとんど残っておらず、夕食前の修練の時は悠徒の修練が終わる直前まで動けない状態だった。

 夕食を食べ終わった悠徒は、新しい場所の探索をすると言って1人で探索に出かけた。

「流石に夜は暗いな・・・」

 悠徒はそう言いながらも右眼は紅の状態で魔力などのセンサーで近くに敵がいないかチェックしている。

 悠徒は前行った体育館とは逆方向にある自衛隊基地に向かった。

 悠徒たちが住んでいる音羽市は桜華学園の学園祭が有名な市で、隣の渡橋市は陸空の自衛隊基地があるので有名な市である。

 渡橋陸空合同基地までは30kmとかなり距離があるが、悠徒の魔力があれば数分で行ける範囲だった。

「渡橋市に到着、っと。」

 最善の注意をしながら全速力で移動したので悠徒も少し呼吸を合わせた。

 呼吸を整えた悠徒はすぐさま紅から索敵(スナイパー)色変え(カラーチェンジ)して、周りに索敵サーチをした。

「・・・・うわぁ・・・・モンスターがあちらこちらに、基地の辺りは強そうなのは居ないだけでも見に行く甲斐がある。」

 悠徒はそう言いながらサーチデータを頭に入れて、索敵(スナイパー)から紅に戻した。


 なんでこんなにモンスターがいるの?と悠徒は頭の中で思っていた。

 悠徒が基地に向かって前進すると、小型の悠徒のサーチに引っ掛からなかったモンスターが300体が総攻撃して来た。

 警戒を怠っていないのだが、悠徒が紅で判断できるのは、相手が熱を持ったモンスターや魔力を持つモンスターしか判断できないので、熱を持たない、地中から襲撃するモンスターの攻撃は地表に出てくる直前の振動で分かったが、回避が遅れて足首を持たれてしまった。

 咄嗟に迅風(ウィンディ)に色変えして、風の球体の障壁を体に纏い、モンスターを薙ぎ払った。

 そして、障壁を爆発させ風の刃(ウィンドカッター)を全体に撒き散らし、300体のモンスターを木端微塵に駆逐した。

 突然の襲撃に少し焦った悠徒だが、迷う事無く基地に向かって前進した。

 だが、少し進んだ瞬間、正面から先程の小型モンスターの倍以上のモンスターが正面から大群で突進して来た。

 悠徒は冷静に高く跳び、モンスターの頭上を跳び越えた。

 先程の戦闘で集まっていると悠徒は判断し、移動速度を上げた。

 

 基地に着くまで3回の遭遇と1回の戦闘をして、やっとのことで辿り着いた。

 基地内に入ると、そこには戦闘の痕跡がいくつかあった。

 悠徒は人が居そうな格納庫に向かった。

 格納庫に向かう最中、訓練場を横切ろうとした時、突如としてモンスターの死骸から小型モンスターが1体出て来た。

 悠徒は魔法で撃退しようと火炎魔法を放ったが、魔法がモンスターに当たった瞬間、魔法が飛散してしまった。

 モンスターは突進を止めることなく悠徒に攻撃した。

 悠徒は焦ったが、体中に保存してある遅延魔法の1つを解放した。

 解放した遅延魔法は悠徒の体内で神導術に変わり、強大な魔法となってモンスターを包み込んだ。

 悠徒はホッと安息したが、格納庫に生存者がいるか判明するまで気が抜けなかった。


 格納庫の扉を開けるとそこには明かりがあった。

「誰かいないのか?」

 悠徒が大声でそう言うと、何処からか悠徒目掛けて銃弾が飛んできた。

 悠徒は素手で銃弾を掴むと、握った銃弾を地面に落とした。

 落ちた銃弾がコンクリートの床に当たり、金属音が鳴った瞬間、目の前にあった戦車から砲撃が来た。

 だが、悠徒は砲撃を真正面から受け止めて、砲弾を掴んでいた。

「俺はお前らの敵じゃねぇ。人間だっての!」

 悠徒はそう言いながら、砲弾を地面に置いた。

『この!バケモノが!死ね死ね死ね!』

 格納庫内に響き渡る複数の人の声、それとその声を掻き消さんとばかりに聞こえる大型マシンガンの音。

 悠徒は防御魔法も回避をしずに、相手の銃撃を無視して前進した。

 銃弾は悠徒を中心に滝のように来ていたが、水霊に瞬時に色変えし、水壁に阻まれた銃弾が悠徒の周りに浮いていた。

 悠徒は水壁で宙に浮いた銃弾を一か所に集め、それに向かって全弾を発射をさせた。

 放った銃弾は見事に全弾命中し、相手を絶命させた。

『・・・・・・』

 悠徒が放った方向は格納庫の開けた扉の方向。

 そう、そこから侵入しかけていた小型モンスター目掛けて投げたのであった。

「これで敵ではないと証明できたか?」

『・・・・・・』

 格納庫内は小さな話声がノイズのように聞こえ、やがて話し終わったのか、1人の男が悠徒の方に歩いてきた。

「私は渡橋陸空合同基地の第1部隊隊長の水越中佐です。先程の無礼のお詫びと、あなたの歓迎に来ました。」

 水越中佐はそう言い右手を差し伸べたので、悠徒はその手を握り返した。


「そうでしたか・・・それだけの人数を・・・」

 中佐は悠徒を基地内のPX(売店の事だが、食堂のことをPXと呼んでいる。)にお連れして、PXで悠徒の歓迎と作戦会議を始めた。

「現在、この基地の約30%もの設備、80%の武装、800人の兵士が破壊そして殺され、我々の戦力も兵士300人と戦車3台、戦闘機が15機、あとは・・・最終兵器が3機だけあるだけだ。」

「最終兵器?それは何ですか?」

 悠徒が中佐が言葉を詰まらせた最終兵器がなんなのか気になった。

「最終兵器。それは・・・この地球で作られてない、未知なる兵器という事だ。」

「???」

「簡単に言うと、巨大人型ロボット。つまりガ○ダムや鉄○28号、マ○ンガーZのようなのだ。」

「そんなのが3機もあるのですが?実際にあったとしても、この基地に世界中誰も思いもよらない兵器がこの基地に3機も?」

 悠徒はそんな疑問に思ったのだが、中佐は答えなかった。

 だが、そんな沈黙を破ったのは、右手に炭酸飲料を持った少年だった。

「久しぶりかな?悠徒。」

「・・・・ぇ?ベ、ベクター!?」

「相変わらず、君はおもしろいねぇ。」


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