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紅の魔眼と白銀の刀  作者: 櫻庭空
Episode1
21/34

Episode.1 (part.20) 覚醒と痛手


 エリスはモンスターに向かって自由落下していた。

 エリスがモンスターの口の中に入りかけた瞬間、落下感が無くなった。

 目を開けてみると、そこには無愛想な顔の少年がお姫様抱っこをしていた。

 少年は近くの山頂まで飛行して、エリスを降ろして何所かに行こうとした時、エリスは少年の手を掴んだ。

「さっきは、ありがと。おかげで助かった。」

 エリスはそう言った。

「目の前で死なれても困るからね。」

 と言って少年は飛ぼうとした。

 だが、エリスは少年の手を握ったまま離さない。

「私、エリス。エリス・スタッフフォード。」

「・・・・アルティベート。」

 アルティベートはエリスが自己紹介するので仕様がなく自己紹介した。

「アルティベート、アルティベート・・・アルティベート君、よろしくね。」

 エリスはアルティベートを握った手を離して、右手をアルティベートの目の前に出した。

 アルティベートは一瞬、何をするのかと思ったが、握手の体勢だと解り、アルティベートも右手を出して握手を交わした。

 握手を交わした後、アルティベートは飛んで行き、エリスは再び珠を捜しに山を降りた。

 アルティベートは飛びながら、頭の中で不思議に思っていた。

 なぜ、彼女は自分の手を握り、自己紹介をしたのか?

 アルティベートは人形であり、心を持っていない。

 任務に心は必要無い。

 だけど、今、アルティベートの体は温かみを持っている。

 この状態は何なのか?

 この思考は何なのか?

 アルティベートは答えの出なかったので、考えることを止めて、地面に降り立った。

 降り立った瞬間、目の前の木が薙ぎ倒されて、先ほどエリスを襲ったモンスターが出てきた。

 アルティベートは臆する事無くモンスターの方に右手の人差し指を出して制止していた。

 モンスターがアルティベートに向かって大口を開けて、アルティベートを食べたと思った瞬間、アルティベートは石化したモンスターの後ろに立っていた。

 アルティベートは何もなかった様に再び歩き出して、5mほど進んだ時、石化したモンスターの体が粉々に砕けた。


 悠徒は魔力を最大出力で足から放出し、忍に覆い被さるようになった。

 次の瞬間、悠徒の背中に熱い何かを感じ、悠徒に激痛が走った。

 ぎりぎり、悠徒は意識が飛ばなかったが、紅を発動しないとヤバイ状況だった。

「忍、俺の眼帯を外してくれ。」

 悠徒は体が思うように動かないので、忍に頼んで眼帯を外してもらった。

 紅を発動した悠徒が傷口を塞ぐ間にも黒衣の剣士とドラゴンは悠徒と忍目掛けて攻撃しようとしていたので、悠徒は忍を抱え、紅から迅風に変えて、急いで祭壇の上に避難した。

 悠徒は忍を降ろすとすぐに祭壇の守護(黒衣の剣士とドラゴン)の方へ突っ込んで行った。

『限界じゃないのか?』

「いや、まだいける。」

『これ以上出血したり、魔力を消費すると死ぬぞ?』

 紅の一言で悠徒に恐怖心が湧いた。

 だが、忍を置いて逃げる訳にはいかない。

 悠徒は生死を賭けた捨て身攻撃を黒衣の剣士に与えた。

 黒衣の剣士は剣で両断しようとしたが、悠徒の捨て身の方が勝り、剣は鍔の所から刀身が宙を舞って地面に刺さり、悠徒はそのまま黒衣の剣士に当たり、黒衣の剣士と共に地面に倒れこんだ。

 悠徒は魔力を使い果たし、体が動けない状況で地面に叩き付けられた悠徒は気を失った。

 忍は悠徒の所へ駆け寄って、悠徒を抱えて物陰に隠れた。

「悠徒、悠徒、悠徒!」

 忍は悠徒に呼びかけるが、全く返事が来ない。

 忍は慌てて悠徒の首筋に手を当てると、悠徒の脈は止まっていた。

「う、そ、でしょ?悠徒!死んじゃイヤ!!」

 忍は悠徒を寝かせ、肋骨の下から3本目の所を中心にして心臓マッサージを15回した後、人工呼吸をした。

 人工呼吸で悠徒の唇と重なった瞬間、忍と悠徒の体が光り出し、悠徒は立ち上がった。

「悠徒?大丈夫なの?」

 忍が問い掛けるが、反応が無い。

 心配して悠徒の顔を見るが、悠徒の左目には正気が無い。

 だが、悠徒の右眼には淡い赤色(ピンク色に近い色)の魔力が溢れていた。

 黒衣の剣士は悠徒の捨て身の攻撃に倒れはしたが、一時的に動けない状態になっただけで、悠徒の眼の光が広間を照らす時には何もなかったかの状態に戻っていた。

 悠徒は忍を退けて、祭壇の方に歩み寄り、黒衣の剣士とドラゴンの方を向いた瞬間、黒衣の剣士は壁に叩き付けられて、ドラゴンは自分自身に纏っていた鉱石が砕け散った。

 黒衣の剣士は黒い影となり消えていったが、ドラゴンは鉱石が砕けて、醜い姿になりながらも悠徒目掛けて突進した。

 だが、ドラゴンは悠徒から5mほどの所で透明な壁にぶつかった。

 悠徒がドラゴンの方に歩くと、ドラゴンも悠徒が歩いた距離だけ押されていった。

 不敵な笑みを悠徒は浮かべると、次の瞬間、悠徒は右手を開いた状態で前に出し、手を閉じたと思ったら、目の前にいたドラゴンが突然、血の雨を降らせながら肉片を撒き散らしながら息絶えた。

 そんな状況を忍は見てしまい、吐き気を抑えようとしたが抑えきれず、悠徒は自然体の状態に体を戻すと同時に糸が切れたかのように地面に倒れ込んだ。


 悠徒が目を覚ますと、そこは洞窟の外だった。

 起きようとするが体が全く反応しない。

 目は動くので周りを見てみると、自分は地面に寝転がっている状態だと解ったが、なんだか感触が違う。

 頭の辺りがなんとも柔らかい、まるでマシュマロみたいなふかふか感であった。

「悠徒、目が覚めた?」

 自分の頭上から声が聞こえるので、前髪を見る感じで上を見るとそこには忍の顔があった。

「起きてるが、体が全く動かないが、どういうことだ?」

「悠徒、あんな無茶をしたのを忘れたの?」

「無茶?」

「はぁ、・・・自分が死んだのに気付いてる?」

「死んだ!?俺は生きてるが?」

「アホ!」

 忍は悠徒のおでこにデコピンした。

「いてぇ!」

「1回、悠徒は脈拍が無くなったの!だから悠徒は1回死んだの!わ・か・る?」

「そう言う事か・・・って、それは死んだと言うのか?」

「言・う・の!」

 忍は悠徒の手を引っ張って、悠徒に何かを握らせた。

「これは・・・合格条件の珠じゃないか!」

「悠徒が取ったから、悠徒の物!」

 忍はそう言って立ち上がった。

 悠徒は受身を取れない状態だったので、そのまま地面に落下した。


『全ての珠が挑戦者によって奪取されました!』

 開始から、もう5時間ばかり過ぎて、やっと終了のアナウンスが流れた。

 終わったグループから即時、転送されていたので、最初のグループは開始から2時間ばかりで転送された。

 悠徒のグループは4時間半ぐらいで、グループの中では6番目と、長い時間やっていたのであった。

 エリスのグループが最後で、モニターで見ていた悠徒と忍はエリスの奮闘を心配した目で見ていた。

 エリスが戻って来て、悠徒と忍は急いでエリスの元へ駆けつけた。

「どうしたのよ?2人して?」

「大変だったな、最後の争奪戦は・・・」

 悠徒は励ましながらエリスに飲み物を渡した。

 エリスは一気に半分ぐらい飲んで、一息を吐いた。

「アレはさすがに上位(ハイレベル)だった。」

「でも、武器無しであそこまで出来たら上等だよ。」

 エリスは悠徒と忍の励ましは嬉しいが、今は逆に自分を劣等生のような扱いに思えて、エリスは「ちょっと休んでくる。」と言って悠徒たちと別れた。


 今回の悠徒達の結果はこうであった。

 悠徒と忍はモンスターと交戦中だった挑戦者たちに混ざって、悠徒がモンスターを倒して、忍がモンスターの額にめり込んでいた珠を取って見事に2人とも合格した。

 エリスの方は、アルティベートがエリスを襲ったモンスターを倒して手に入れた珠と、最後の乱戦で手に入れた白髪で白い衣装を身に着けた人が勝ち上がり、エリスは敗退した。


 エリスは何所に行くのか決めておらず、唯、1人で居たいという感情だけが在った。

「残念だったな。」

 急に話し掛けて来たのは、ガルドであった。

「べつに。私のレベルが低かったからでしょうよ。」

「いや、お前のレベルだったらあのグループの中でも上の方だったと―――」

「励ましは止めて!!」

 エリスはガルドの励まし?を掻き消すほどの大声で怒鳴った。

「ごめんなさい。1人にさせて・・・」

 エリスはそう言って、人混みの中に入って行った。


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