Episode.1 (part.21) I loved me.
『只今から、第3の難関を始めます。挑戦者は会場の受付に集まってください。』
エリスと別れてから10分後、悠徒たちは司会に従って、会場の受付に集まっていた。
集まった挑戦者に、受付の人が仮想ディスプレイに第3の難関の10個の関門の全体図を出現させ、その説明をした。
スタートしてから始めの関門は、水面上や空中に設置されたボックスに跳び移る、『3D・ジャンプ』
第2の関門は、100mの直線に、直径3mのハンマーが20個がランダムに設置されている所を駆け抜ける、『アボイド・ジャイアントハンマー』
第3の関門は、40度の急斜面をボードで滑り降り、15mもの水上スキーをする、『サーフ・バランス』
第4の関門は、70kgの壁が行き先を阻んでいるのを人力で10m押し進む、『ウォール・プレッシャー』
第5と6の関門は、電流が流れた縄跳びを30回以上跳びながら、幅50cmの台を50m進む、『クレイジー・ラビット』
第7の関門は、トランポリンに向かって走り、その勢いで跳んで、指定された穴に飛び込む、『チキン・フライ』
第8の関門は、巨大な歯車の上に乗って移動する、『ファクトリー・ギア』
第9の関門は、3連の火の輪を潜る、『ファイヤー・ループ』
最後の関門は、5mlの「ドラゴンの生き血」を飲む、『デッド・ドリンク』
平均タイム:8分34秒
説明を受けた悠徒たちは、すぐに順番決めをして、悠徒は2番目、忍は6番目になった。
悠徒は、くじを最後に引いた赤髪の少年を見て、「何所かで見たような・・・」という感じになったが、赤髪の少年が1番だったらしく、スタート位置に行ってしまった。
アルティベートは思っていた。
『何所かで見たような・・・(悠徒の事)』
だが、自分が引いた数字が1番だったので、やむなくスタート位置に行った。
スタートの合図の瞬間、アルティベートは全速力で始めの台に跳び移り、スピードを落とさないまま、たった18秒で第1の関門をクリアした。
第2の関門も、紙一重の様で確実に避けていき、21秒で通過した。
第3の関門も、躊躇う事無く一気に滑り降りて、絶妙なバランスで滑って行き、39秒でクリアしてしまった。
第4は72秒、第5・第6は8秒、第7は30秒、第8は28秒、第9は12秒と大会の平均タイムを大幅に早いタイムでクリアしていった。
驚くべき所は、大会で最もクリアできない「ドラゴンの生き血」もとい、魔法世界最強の辛さを誇る『ドラチリスター』を大量に使った香辛料をアルティベートは顔を変える事無く一気に飲み干してしまった。
ちなみにドラチリスターの辛さは、『下級ドラゴンが1個でも口にすると死んでしまう』と言う都市伝説があるほど辛い物である。(実際は、中級ドラゴンでも死に至る時も・・・)
そんな辛さのドラチリスターを一気に飲み干したのを見た人は、ある人は驚きを隠せずに口をポカンと開ける人がいたり、またある人は残酷すぎて悲鳴を上げる人や、ある意味テンションが上がって口笛を吹く人までいた。
何だかんだで、アルティベートのタイムは、5分05秒と大会新記録を叩き出した。
アルティベートのを観た悠徒は驚愕していた。
大会新記録をいきなり容易く出した事に開いた口が閉まらない状態になった。
驚きの余り立ち尽くしてた時、いきなり背後から肩を叩かれたので悠徒はビックリして「ひゃっ!」と言う女の子のような声を出してしまった。
恐る恐る振り向くと、そこには笑いを堪えている忍がいた。
「・・・っ、悠徒、大丈夫?」
必死に笑いを隠しながら言っているつもりだが、全く隠せていなかった。
「大丈夫だよ。一応やって、無理だったらその時はその時だ。」
悠徒はそう言い、スタート位置に行った。
「大丈夫かな・・・」
悠徒の後姿を見ながら忍は心配したが、自分も参加しているので自分の心配をした。
スタート位置に着いた悠徒は緊張していた。
今回は、全員が悠徒1人を見ているから視線が気になるのだ。
『只今から、2人目、朝倉悠徒選手の挑戦です。』
司会者の紹介からすぐにレットシグナルが1つ2つと点灯して、3つ目の緑色のブルーシグナルが点灯した瞬間、悠徒は全速力で走った。
第1の関門は、すんなりと通過出来たが、第2の関門で思う様に進まず、第3から第8まで順調に進み、第9の関門を通過した時には6分が経過していた。
悠徒は最後のデッド・ドリンクに着くと、ドラゴンの生き血を躊躇う事無く飲み込んだ。
それを見た観客は最初の挑戦者、アルティベートの時と同様、大盛り上がりしていた。
ドラゴンの生き血を飲み干した悠徒は、自分が飲んだのは辛い系の飲み物だと察知したが手遅れで、悠徒の体からは異常なまでの汗と涙が出ていた。
「辛~~~~~~~~~い!!!」
悠徒はその場に倒れ込み、必死に水を探したが見当たらず、早くゴールして甘いものを食べたいと思い、悠徒はゴールに全力疾走した。
それのお蔭なのか、悠徒のタイムは7分14秒と好タイムを叩き出した。
エリスは屋外テラスでコーヒーを飲みながら、行き交う通行人をぼんやりと眺めていた。
「はぁ~・・・」
エリスは第2の難関の最後に起こった争奪戦の事を思い出していた。
モンスター3体を挑戦者4人(エリス込)で闘っていた。
モンスターの1体は大人の男性の3倍ほどの大きさのミノタウロスとライオンに翼の生えたようなモンスターが2体、エリスと白髪の男はミノタウロス、残りの小洒落た衣装の魔法師と、脳筋の力馬鹿は翼が付いたライオンと交戦していた。
エリスは戦闘時に使用している体を硬質化する魔法を応用とした空気硬質で体を硬質化して、空気を圧縮した筒状の棒を生み出した。
白髪の男は白いローブに腕を隠して、一見何も持っていないように見えるが、エリスの目には男の魔力循環を効率良くしているのが読み取れた。
エリスは白髪の男の魔法を発動される前に攻撃をするために、位置固定魔法を利用した自分の位置をミノタウロスの目の前に強引に瞬間移動をして、空気圧縮棒をミノタウロスの腹に当てた。
当たった瞬間、ミノタウロスは全く動じなかったが、当てた部分から凹みが広がって、トラックに跳ねられたようにミノタウロスは吹っ飛んだ。
宙を舞ったミノタウロスは、そのまま壁にめり込んで動けない状態になった。
エリスは止めを刺そうとミノタウロスに飛び掛ったが、ミノタウロスの怒りが体から滲み出てミノタウロスの体を黒い霧が覆い、エリスはその霧に当たった瞬間、霧に阻まれてミノタウロスの反対の壁に叩きつけられた。
黒い霧が薄くなり、消えた瞬間、そこに居たミノタウロスは先程まで居たミノタウロスとは似ても似つかない悪魔のような姿になっていた。
エリスは絶句した。
自分の一撃は子供の頃から親に教わった技を自分のオリジナルバージョンに仕立て上げた最強の魔法。
自分の中で一番威力の有る魔法を当てたのに、そのダメージが無かったかのように姿を変え、自分の目の前に蹂躙した悪魔はエリスの戦意を喪失させた。
悪魔はエリスを捉えると、右手を振りかぶって、エリス目掛けて殴ろうとしてたが、白髪の男が悪魔の目の前に現れた瞬間、悪魔の両腕が消滅した。
「下等なゴミが俺の手を煩わせるな!」
白髪の男は右手を上げると悪魔の頭の角が2本とも消滅し、右腹辺りも消滅した。
「見るも無残な姿になって、醜い体も少しはマシになったか?俺の魔法で死ねることを光栄に思うが良い!はっ、はっ、は~!!!!」
高笑いながら男は両手を横に広げた瞬間、悪魔の体の全てが消滅した。
エリスは悪魔の最後を見ていたが、何か大きなのに食べられたような気が――――
『君は、力が欲しいのかい?』
エリスはハッと目を覚ました。
いつの間にかテラスで居眠りをしていたのだ。
ふぅ、とエリスは胸を撫で下ろしたが、|目の前に座っていた男が口を開いた瞬間、《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》エリスは驚愕した顔で男を見た。
「君は自分の本当の力が欲しいのかい?」
目の前に座っていた男はコーヒーに口つけた。
「・・・・何時からそこに・・・いえ、自分の本当の力が欲しい?今の私の力は本物じゃなくて、偽物の力だと言う訳?」
エリスは男をにらめ付けながら言うが、男はエリスを見ながら悠長にコーヒーを飲んでいた。
「いや、君の今の力は本物だよ。でも、今の力が君の最大限の力とは限らない。力は生まれてから死ぬまでに100%の力を使えた人は少ない。」
男は手に持ったコーヒーをテーブルに置き、足組みを組み替えた。
「一般に、窮地に立つと人は想像した以上の力を発揮する。それは火事場の馬鹿力とも言われている。でも、あれも人間の本当の力ではない。土壇場で出す力であっても、自分の力で自分の体を守るために力をセーブする。」
「それが何で私に関係するのよ!宗教の勧誘ならお断りよ!」
エリスはそう言って立ち上がろうとした。
「では、君がもし体を保ちながら本当の100%の力が出せたとしたら・・・」
エリスはビクッと体を震わせた。
「その力を私が与えることが出来るのなら?」
エリスは静かに椅子に座った。
「そうですか・・・では、これを貴方に差し上げます。」
男はそう言ってエリスにブレスレットを渡し、テーブルにコーヒー代を置いた。
「それを身に付けていて下さい。それは貴方を導いてくれます。」
男は立ち上がり、人混みの中に消えて行った。
エリスが追い駆けようとした瞬間、耳元で男が囁きかけた。
「また会えますよ。それを身に付けていてくれれば。」
エリスが振り返っても男は居なかった。
手には男が渡したブレスレットが握られていた。
「現実なの・・・」
エリスは少し当惑しながらも、テーブルにコーヒー代を置いて人混みの中に入って行った。
左手にブレスレットを付けて・・・
『ここでタイムア~プ!!!』
司会者の人が最後の挑戦者に時間切れの合図を言った。
『16人内、実に何人が時間以内に入ったのか?スクリーンをご覧ください!!』
司会者が手を上げた瞬間、三角を描くように3つのスクリーンが表示された。
『1位から順に言っていきます。』
観客が沈黙して、司会者が1回咳払いした。
『1位は5分5秒を叩き出した、無表情の絶対零度の心を持つ、アルティベート選手!』
司会者がアルティベートの名前を言った瞬間、観客がぶわっと歓声が響き上がった。
『続いて、2位は6分56秒を出した、白衣のローブの中の素顔は謎に包まれた、・・・べあ、んっ、ベアル・アバティ選手!』
1位程ではないがベアル・アバティの名前が出た瞬間、歓声が上がった。
『3位からはタイムが平均レベルなので名前だけにします。』
司会者がそう言うと、観客の「わはは」と笑い声が聞こえてきた。
『3位はアサクラ・ユウト選手、4位はガルモンド・スフェル選手、5位はバレンティーナ・リセ選手、6位はサワイ・シノブ、7位はスチュアート・エギル選手、8位はマリー・ヴァイオレット選手、9位はディベート・イクス選手、以上9名が時間以内にクリアした選手です。ですが、この9人の内、上位5名が第4の難関に挑戦できます。』
「ごめんね、悠徒。私、落ちちゃった。」
忍はそう言ってペコリと頭を下げた。
「別に俺が優勝すれば良いだけだから、気にするなよ。あと、もし忍が勝ち上がったら、闘うことになったかも知れなかったから、ある意味良かった。」
「悠徒・・・」
「だからさ、応援頼むな。」
悠徒はそう言って、照れを隠そうと飲み物を買ってくると言って、悠徒は屋台の方に行った。




