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第六章 笑う文子
窓が青いなと思った。夜と朝の間、薄い青の色だ。紫がかったような、少し橙や薄い赤も見えるような、中途半端な夜明けの色。
なんだか大事な約束があったような気がするのだけれど、よく思い出せない。
お手洗いを出たところに、昼間見た背の高い人が座り込んでいた。銀色の筒を持って、ときどき思い出したように肩を揺らしていた。笑っているんだなと思った。
よくわからなかったけれど、わたしもつられて笑う。何がおかしいんだろう。
よくわからないけれど、この人の笑い方は好きだなと思う。
何となく宮坂さんの笑い方に似ているような気がする。この人は、宮坂さんのお姉様なのかしら。横顔を見る。やっぱり笑うと、宮坂さんにそっくりだ。
傍にいたいなと思って、横に同じように座り込んで、窓を眺めながらときどき一緒になって笑った。
窓の外が青くなるまで、ずっと眺めていた。




