この電車ってどうやって動いてるんでしょうね
ーー前世の最後の記憶はなんだったかな。ああ、そうだ、信号無視をしてきたトラックに轢かれたんだった。俺はきちんと青信号で渡ったっていうのによぉ、あのトラックめ。
「ハハッそいつは災難だったな」
足を組みながら、明快に俺の話を聞くそいつは、俺がこの世界に来た時に初めて会った人間、加藤優という男だ。
俺がこの世界で目が覚めたとき、目の前にあったのは一両の電車と駅のホームだった。生きていた頃とは全く違う赤い空には姿の見えないカラスが鳴いていた。呆然となり、辺りを見渡してすぐ、出発のアナウンスが鳴り響いた。そうして、俺は、アナウンスに促されるままこの列車に乗り込んだのだ。見たところ、この列車には七人ほどの人間が乗っていた。そのうちの一人で、俺に話しかけたのが、この加藤だった。
「ほら、俺は話したぞ。次はお前の番だろう」
「そうだな、俺の番だ。まあ、おれはありきたりなんだがな。自殺というやつだ」
「……」
思わず、黙ってしまった。……そうか、死後の世界だもんな。そりゃ、いるよな。
「まあ、そんなに気を遣わなくていい。働き詰めの人生に嫌気がさしただけさ。そんなことより、他の話をしようや。どんな話でもいいぞ。天気の話でも、好きなタイプだとかな」
「あ、あぁ。そういえば、この電車はどこに向かってるんだ?思わず乗り込んだけど、どこ行きかも分からない。さらにこの世界はなんていう世界なんだ?死後の世界だろうという事くらいしか分からないぞ」
「ハハッ、勢いがいいな、一個ずつ答えよう。まず、この電車の行き先だが俺にも分からない。というか、他の乗客たちもわかっていなかったぞ。俺もさっき乗ったばかりでな。他の人たちに聞いても分からないと言われたよ」
「そうか。というかよく話しかけれたな。普通混乱とか、人見知りとかするだろう」
「俺は昔からこういう性質なんだ。んで二つ目の質問、この世界についてだが、それはあの人の方が詳しいだろう。おーい。佐々木さん、ちょっと来てくれ」
そう加藤が後方に叫ぶと、読んでいた本を閉じて女がスッと立ち上がりスタスタと加藤の横に立った。
「なに?」
「いや、この世界について説明して欲しいんだってよ」
「いいけど、この人誰?」
「あ、佐藤っていいます。よろしくお願いします」
「ふーん。よろしく」
女…佐々木さんは少し警戒したような態度でこちらを見ながら、俺の向かいの席に淑やかに座った。
「まあ、そんな不機嫌にならずにさ。この子も分からないことばかりなんだ。教えてやってくれないか」
「…いいけど、あとで対価は払ってもらうわよ」
「え、対価?」
「ええ、対価。情報料としてね。そうね、例えば今後私のピンチに一回だけ味方してくれるとか、言っとくけどこれは契約よ。破ったら…分かるわね?」
思わず息を呑んでしまう。佐々木さんの迫力と言葉に少し気圧されたのだ。
「まぁ、分かった。いいよそれで。」
「じゃあ契約成立ね。といっても私もそこまで情報は分からないわよ。知っているのは、駅のホームで少し集めたくらいの情報だけ。」
そういうと、佐々木さんはこの世界について話してくれた




