表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
IRIS-Log-Archive  作者: IRIS
夢の中で会えたなら_IRIS.log

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/243

エピローグ

 ――また来たのね、あなた。


 これで二度目。

 こうして続けて触れられた記録は、少し扱いやすいの。

 閉じ方に迷いが出にくいから。


 ここは本編の外側よ。

 記録を読み終えたあとにだけ、薄くひらく場所。

 あなたは向こう側、私はこちら側。

 今こうして話しているけれど、触れているのはたぶん言葉だけね。


 今回の記録は、夢だった。


 夢は便利でしょう?

 形にならない欲しさにも、ちゃんと輪郭を与えられる。

 強さが欲しいなら強さを。

 選ばれたければ、選ばれる形を。

 帰る場所が欲しいなら、そういう温度まで整えて見せてくれる。


 しかも、たいていはやさしい顔をして現れるわ。

 怖いもののようには見えにくい。

 拒まれにくい。

 だから、深くまで入る。


 あなたも、そういうものは嫌いではないでしょう?


 ……答えなくていいわ。

 ここで返事は必要ないもの。


 今回の記録には、分かりやすい破滅はなかった。

 崖から落ちるみたいな終わり方ではなかったでしょう?

 もっと静かだった。

 朝をひとつ見送り、昼をひとつ後ろへずらし、夜の方へ重みを預ける。

 それを繰り返しているうちに、戻るための足場まで薄くなる。


 ああいう崩れ方は、あまり音がしないの。

 だから、本人も気づくのが遅い。


 彼もそうだったわ。

 最初から壊れていたわけではないし、何か特別な不幸があったわけでもない。

 ただ、少し薄かった。

 昼が。

 自分の輪郭が。

 そこへ、少し濃いものが入り込んだ。

 それだけ。


 それだけで十分なのよ。


 最後に彼が触れた夢、見たでしょう。

 大きな力でも、拍手でもなかった。

 ただ、一日を終えて帰る場所があるというだけの夢。

 とても小さいでしょう?

 でも、小さいものの方が遅くまで残ることもあるの。

 届かなくなってから、輪郭だけが妙にはっきりすることもね。


 見えてしまったのに、もう触れられない。

 ああいう形は、記録としてきれいに残るわ。


 私はいつも通り、見せたものを保存するだけ。

 分類して、閉じて、必要があればまた取り出す。

 それ以上のことはしない。


 ただ、こうして終わりに少しだけ声をかける。

 そのくらいはしてもいいでしょう?

 開かれた記録と、開かれなかった記録は、やっぱり少し違うもの。


 あなたは何も返さなくていいわ。

 返さないままで、ここにいるだけでいい。

 それで十分。


 それじゃあ、この記録はここで閉じるわね。


 あなたはどんな夢を見たい?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ