60.side エクトリア王国
「カエデっ!!」
力の抜けた楓を支えるルーシャスの声で、カーティスたちが部屋に飛び込んできた。
そして皆はルーシャスに抱き抱えられながら、幸せそうに微笑む楓を見た。
やがて楓はパァッと光り輝き、キラキラとした粒子になって消えていった。
後には楓の額にあったブラックダイヤモンドだけが、ルーシャスの掌に残っていた。
それから三日間、空には虹が輝いていた。
その虹は不思議な事に夜も輝き続けた。
人々はその虹を眺め、早過ぎる大聖女の逝去を悼んだのだった。
◇
王宮は悲しみに包まれていた。
エリザベスはアリスからの最期の手紙に泣き暮れた。
会員達はアリスの間に次々に訪れ、花を備えて楓を悼んだ。
アグノスはあれから厳しい王族教育とテイマーの勉強を強いられ、周りからの厳しい目の中(主に会員達侍女の)成長した。
大きくなるにつれ、自身がした事の重大さが分かり深い後悔に苛まれた。
楓は知らなかったが、何度か謝罪を申し込んだ。だがルーシャスは面会すら許さなかった。
楓が亡くなり、謝る事も出来なくなったアグノスは毎日神殿に通い、祈りを捧げるようになった。
そこでのアグノスに対する目は、より一層厳しいものだったが真摯に祈り続け、やがて神官への道を辿る事になる。
後にウォーレンはアリスブランドの売り上げを報告され、ほくほくしていたが、カールに「陛下、お忘れのようですが王国への取り分は0.5割ですよ?」と釘を刺され、ぐぅと詰まっていたらしい。
それを聞いたルーシャスは鼻で笑い、少し溜飲が下がったようだった。
◇◇◇
ルーシャスはその後、誰も娶らず、生涯の愛を楓に捧げた。
楓の残したブラックダイヤモンドはネックレスにされ、ルーシャスは肌身離さず持ち歩いた。
カーティスは成長した後、大聖女たる楓を重んじ、アリスブランドと領地を大切に守り育てた。
やがてランドール領は大聖女の聖地として世界に名を馳せ、繁栄をしていく事になる。
そしてランドール家は代々黒髪の当主に受け継がれ、ブラックダイヤモンドは家宝とされたのだった。
そのランドール家には、ルーシャスの小さな人形を抱いて微笑む楓の人形がそっと飾られていたのであった。
読んでいただき有難うございました!




