第65話 「日本一、取ってよ。」
「冗談はよせよ。」
「そうだな。俺がここに来て、2回目の練習試合のときだったかな。」
「はあ。」相馬はため息をついた。
「真樹ちゃんは気づいてなかったろ。」
「ああ。・・・・もしかして真樹ちゃんの気になっている人がいるのか?」
「さあ。」
「さあ、じゃなくて真面目に聞いているの。」
「本当にわからないよ。」
山口は笑った。
部屋の中で、中村は落ち着いていなかった。
・・・・・相馬と山口が帰ってこない。特に先ほどの山口、ドアの前で誰かを待っていた。相馬だろう。だが相馬が、山口と一緒に策を練り真樹に告白するとは考えられなかった。相馬はそんな人ではない。山口、彼は野球のセンスは抜群だが心理を読むセンスもある。それは打撃練習で分かっていた。
中村は複雑な心境だった。これまで相馬とはライバル対決をしながらチームを引っ張っていった。そして4月から加入した山口。3人でチームをまとめたが、相馬は真樹が好き、山口はそれを知る人物、そして真樹は俺の妹。少し変わった関係になってしまった。
・・・信くん・・・・。
中村真樹は少しどきどきしていた。最近よく練習試合を見に来ていた。それは母さんが出かけるからという理由だったが、実は私も彼のことが少し気になっていた。それはこの鼓動の動きに現れていた。
・・私ってもしかしたら。
そこまで考えたとき、相馬が日本一を取ると言った。じゃあ、本当に日本一を取って欲しいと思った。 そしてあの言葉を送ったのだ。
本当に日本一を取るまで、そしてそれまでに自分の気持ちをまとめておこうと思った。




