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極大魔法戦争マジックシューターズVR  作者: 告井 凪
第6話「VSシルバーマジシャンズ」
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8「シルバーマジシャンズ」


「三本目は、絶対負けるわけにはいかない。みんな、作戦を変えるわ」

「そうですね。具体的に、どうしますか? 愛海部長」

「そうね……」

「なぁ愛海。お前、今のバトル。らしくないことしてたな?」

「……広域通信でカマかけたこと?」

「だ。慣れないことすんなよな。相手だってチーム通信くらい使ってるんだぞ」

「そうだね~。たぶんちょうどその頃、あの子、沖坂君。あたしの背後を取ったところだったと思うよ~。

 背後を取った、バレていない、みたいな通信が入っていたら……おかしいって思っちゃうよね~」

「う、うるさいわね。……そうまでしてでも、勝ちたかったの」

「お前のこの勝負への拘りはわかってるさ。でもだったら、なおのこと(こす)い手なんか使うなよ。愛海には向いてねぇよ。そういうのは、俺に任せろよ」

「うんうん~。愛海ちゃんはいつも通り、正面から当たっていくのがいいと思うよ~」

「新太……美月……」

「私も、そう思います。……愛海部長は、正面からぶつかって突破していくスタイルが、強いと思いますから」

「……沙織まで」

「チームメンバーの意見は以上だ。さあどうすんだ、作戦」

「……みんな、ありがとう。次のバトル、セッティングから変えていくわ。開幕はフルオフェンス。奇襲は無し。四人とも前に出てやりましょう!」



                *



「ウォーターランス!」

「サンダーウィップ!」


 中央広場の橋の上で、魔法を叫び合う二人。

 リーナが放ったウォーターランスをかわしながら、マナミはサンダーウィップを振り回した。

 軌道の読みにくい、しなりのある鞭の攻撃を最小限の動きでかわすリーナ。


(初見でできる動きじゃない。ウィップ系の魔法にも、慣れている……)


 サンダーショットでは捉えきれないと判断し、サンダーウィップを選択したのに。こうも簡単に避けられるのは、少々想定外。

 フリーモードの魔女と呼ばれているのは伊達ではなかった。


(所詮慣れているのはフリーモード……と、侮っていた部分があるのは認める。だとしても、どれだけ対戦の経験を積んでいるの?)


 流れるような攻撃と回避に、つい惚れ惚れしてしまう。

 春に卒業した先輩にも、筐体内でいったいどんな動きをしているのか、アクロバティックな操作を好む人はいたが、それとはまた違う――この空間を自分の一部にしてしまう、と言えばいいのか。テリトリーに入った相手の動きを完璧に把握し、制御してしまう。


(こんなプレイヤー、SSランクでもなかなかいない。もし本気でランクモードをやっていたら、どうなっていたのかしら)


 末恐ろしいプレイヤーだ。

 でもだからといって、負けるわけにはいかない。

 今、自陣側では攻め込んできた二人をサオリが一人で押さえ込んでいる。

 こんな展開になるのなら、ヒートボムに変えさせず、移動速度アップの方が良かったかもしれない。しかしそれでも、サオリは善戦してくれている。

 ならば私は、ここでリーナをしっかり抑えるのが役目。


「サンダーウィップ! ――届いて!」

「っ! ウォーター!」


 お互い、攻撃を避けるために橋から飛び降りる。

 その寸前、放ったサンダーウィップがリーナに掠った。

 捕らえた――そう思った瞬間、マナミもリーナの通常射撃魔法を食らってしまう。


 ザバンッ!


 空中で魔法を食らった二人は、同時に川に落下する。


「……やるわね」


 川の上に飛び出し、向かい合う。

 サンダーウィップが掠っただけでは、通常射撃を食らったマナミの方がダメージが大きい。


「マナミ部長こそ~。サンダーウィップってこんなに避けづらかったかな」

「なに言ってるのよ……当たったの、今の一発だけでしょ?」


 しかもしっかりカウンターを当てて、電撃での削りをキャンセルしてきた。

 こっちの魔法の対処法をよく知っている証拠だ。


「えへへ、色んな魔法使いと戦ってきましたから」

「それは私も同じよ。……でも、あなたみたいなのは初めて」


 言いながら、マナミは通常射撃魔法を撃つ。

 リーナは咄嗟に、壁を蹴って川からあがろうとする。


「待ちなさい――っ!!」


 追いかけようとしたところに、上空から風属性の通常射撃魔法が降り注ぐ。

 マナミはそれを避けて、橋の下に避難した。


「もう、コートくん~。そこは当てようよ」

「う……すまん」


 どうやら最後の一人も復帰し、広場まで上がってきたようだ。


(……正確には、儀式塔の魔力を75%まで入れてから、ね)


 ヨミとアヤメの二人が攻め上がっていて、リーナがここにいるのなら、残るコートは当然魔力注入。

 そのコートが広場まで上がってきたということは、もう75%まで注入が済んでいるのだろう。

 マナミはチーム通信に切り替えた。


「シンタ、今よ。そっちはもう(・・・・・・)誰もいないわ(・・・・・・)

「りょーかい、だ!」



『プレイヤー:シンタが 一つ目の魔石を起動しました』



「えっ?! うそ、後ろ?!」

「なっ……潜伏してたのか!」


 驚く、リーナとコート。二人は自陣に戻ろうとする動きを見せるが――。


 ドンッ! ドンッ!


 川から跳び上がり、二人の足下に通常射撃魔法を撃ち込む。

 足が止まった隙に、移動速度アップを使って二人の前に回り込んだ。


「行かせないわ。……拠点を守りたいなら、まず私を倒すことね」


 マナミの役目は、二人を押さえつけておくこと。

 サンダーウィップをビュンと振り回した。



                 ◆



「くっそ……ごめん、俺の判断ミスだ……。拠点に残るべきだった」


 突然拠点を奪われて、コートは歯ぎしりする。

 儀式塔への魔力注入を終えて、広場に出る際、拠点を通って周囲を警戒しながら来たのだ。

 しかしシンタ先輩は拠点付近に上手く潜伏し、コートをやり過ごした。マナミ部長と交戦を始めるのを待ってから拠点を奪ったのだ。


 おそらく、心のどこかで。シンタ先輩なら、普通にコートを倒して拠点を奪うと、決めつけていたから。まさかスルーされていたなんて、思わなかったのだ。


(そんなの自分勝手な思い込みだ。あの人は……そういう手だって使うんだ!)


 まんまと引っかかってしまったことが、悔しくて仕方がない。

 自分の間抜けさに腹が立つ。


「コートくん! 速攻でマナミ部長を倒せば問題ないよ! まだ取り返せる。……ふたりで、いくよ!」

「!! ……そうだな、すまん。やろう!」


 まだ終わっていない。ふたりがかりなら、マナミ部長を倒せるはず。


「サンダーウィップの射程には入らないようにね! わたしのウォーターランスとだいたい同じ距離だから!」

「なるほど、それはわかりやすい」


 この二週間。メンバー同士、色々な組み合わせで対戦練習をしてきた。

 当然リーナとも対戦し、ウォーターランスの射程はそれで覚えた。

 通常射撃魔法よりやや短い射程。

 つまりこっちの射程ギリギリの間合いで戦えば、少なくともサンダーウィップは届かない。


「でも、チマチマ攻撃してたんじゃ相手の思うつぼだ。リーナ――」


 コートは思い付いた作戦をリーナに伝える。


「おっけー! それでいこう!」


 頷き合い、ふたりはタイミングを窺う。


 マナミ部長はまだ移動速度アップの効果が残っていたようだ。前に大きく踏み出して、サンダーウィップの射程に二人を入れようとする。

 しかしその瞬間、リーナがマナミ部長に突っ込んでいく。コートもその真後ろに続いた。

 マナミ部長は僅かに驚いた顔を見せたが、冷静に通常射撃魔法を連射、撃退しようとする。


「ミストバリア!」


 リーナはそのうちの一発をガードし、斜め前に跳ぶ。

 真後ろにいたコートは――


「ハイウィング!」


 魔法が届く寸前で空に逃げる。そして上空からマナミ部長に狙いを付けた。


「それで逃げたつもり?」


 ビュンッ!

 サンダーウィップがコートに向けて放たれる。


(やっぱりきた――!)


 コートは魔法を撃つ素振りを見せただけで、さらに上昇する。

 そしてギリギリ、サンダーウィップの射程の外まで逃げ切った。

 ……いや。


「そっちは囮ね」


 逃げ切ったのではなく、ウィップを伸ばしきる前に腕をしならせ、軌道を横に変えていたのだ。

 薙ぎ払い、狙いはリーナ。だが――。


「一瞬でも逸れてくれればいいのっ!」

「なっ……!?」


 リーナはマナミ部長に密着する。

 ぐるんと回した腕に合わせて、リーナもマナミ部長の周りを回る。

 腕を振り切ったところで、リーナが背後を取った。


「くっ、ウィンド――」

「ウォーターランス!!」


 マナミ部長が倒れるようにして無理矢理ウィンドを撃とうとするが、それよりも早くリーナの零距離ウォーターランスが発動する。



『プレイヤー:リーナが 敵プレイヤー:マナミを倒しました』



「っ……! でも、私たちは負けないっ!」



『敵プレイヤーに 二つ目の魔石を起動されました』



「……早い!」

「後ろに誰もいないとわかってるんだから。当然でしょ。……残念だったわね」


 そう言い残し、マナミ部長の姿が消えた。


「コートくん、一緒に戻ろう!」

「だけど! 向こうは拠点を二つ取ってる。こっちも取らないと!」

「それはヨミちゃんたちがやってくれるよ! でも取ったあと儀式塔に魔力を入れなきゃ勝てない。向こうにはミツキ先輩とサオリちゃん、マナミ部長も復帰しちゃう。そしたら、魔力注入されちゃうんだよ!」

「だったら一人だけ戻れば――」

「自陣側にはシンタ先輩がいるんだよ? 魔力注入、邪魔してくるよ!」

「あっ……! そうか、妨害を止めつつ魔力を入れないと……」

「そういうこと! 行こう!」

「わかったっ!」


 コートとリーナは、自陣の儀式塔へと急行するのだった。



                  ◆



「なんとかしてくれる、か。言われちゃったなぁアヤメ」

「でも当たり前よね。2対1で手こずってる場合じゃないわ。……拠点まで追い詰めてるんだから。これで取れなきゃ、後ろの二人に顔見せできない」


 ヨミとアヤメは、敵陣の後方の拠点前でサオリと戦っていた。

 ミツキ先輩が来ないのは、魔力注入をしているからだろう。

 拠点を二つ取ったとはいえ、魔力を入れていなければ勝てない。

 それまでまったく魔力を入れていなかったはずだから、時間がかかっているのだ。


「ヨミ。サオリはおそらく、あたしたちが魔石を起動しようとしたタイミングで仕掛けてくる。だから――」

「はいはい、わかってるって。こっちは任せな。アヤメ、しくじるなよ?」

「誰に言ってるのよ」


 ヨミとアヤメは、下から塔の中に入り、最上階を目指す。

 中は空洞になっていて、壁に沿って螺旋階段があるだけだ。サオリの姿はない。


(……本当に私が前に出ることになるなんてな)


 このバトルに向けて、後衛からスイッチして攻め込む練習もしていた。

 作戦には組み込まなかったが、三本目は特になにが起るかわからない、万が一の状況に対応できるようにと、陸緒部長に言われたのだ。

 以前アヤメに指摘されたのが気になっていたというのもある。前に出ても戦えるようにしておきたかった。

 もっともカスタムに魔力注入効率アップを入れている分、戦闘にハンデがある。誰かと組んで前に出る方がいい。


(前衛初タッグが、こいつとか)


 ムカツクが、アヤメの強さはヨミも認めている。


(……ま、悪くないか)



 階段を上りきり、最上階に先にヨミが飛び出して構える。

 中央の魔石、外は柱があるだけの吹きさらし。見える範囲にサオリはいない。

 ヨミは素早く魔石に飛びつき――


 外から、赤いレーザーが入り込んだ。


「来たかっ!」


 ――ボンッ!!


 レーザーは魔石にぶつかって爆発。ヒートボムだ。


「アヤメ! 階段出口から、魔石を挟んで反対側だ!」

「了解! リフレクトレーザー!!」


 階段から上半身だけ出し、リフレクトレーザーを連射する。

 軌道を読ませないようにダミーを混ぜ、そして――。


 キンキンキンキンキンッ!!


 そのうちの二発が、サオリが潜んでいるであろう柱の裏側に跳んでいく。


「……さすが、アヤメさん。跳弾で柱の裏を狙うなんて、普通できないよ」


 ギリギリ塔の縁に立っていたサオリは、アヤメがリフレクトレーザーを撃つのがわかると、躊躇わず回避行動を取っていた。唯一の逃げ場、塔の上へ。


すげーよな(・・・・・)、ほんと。お前がアヤメの跳弾技術を信じて、上に逃げることまで読んでたんだぜ?」

「……そっか」


 先に塔の上にあがっていたヨミが、サオリの頭上にブレイズハルバードを振り下ろす。



『プレイヤー:ヨミが 敵プレイヤー:サオリを倒しました』


『プレイヤー:アヤメが 二つ目の魔石を起動しました』



 二つのアナウンスが、続けて流れる。



 ヨミには見ることができなかったが、やられる寸前、サオリはどこか嬉しそうな顔をしていた。

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