表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
約束  作者: 星河 翼
5/5

#5 エピローグ

 喫茶店は、女学生の一行で賑わっている。

 しかし、一人の女学生が一つのテーブルを眺めながら

「驚いたよね?今、勝手にこの窓開いたよ」

 五十嵐は、囁かれているそのテーブルに歩いていった。出窓の窓が開け放たれていた。そして、テーブルには上の桜の花びらを繋ぎ合わせた文字が……


『ありがとう』


 五十嵐にはハッキリとそう読むことが出来た。

「全ては、幻だったのか?」

 不思議な出来事。そして、忽然といなくなった愛。

 口をつけられてないレモンティーのカップの中には桜の花児らが一輪ユラユラ浮かんでいた。


 確かにいた。


 夢ではない現実。


 そこにバイト生がやってきた。五十嵐の行動を不審に思った節でもあるように、

「どうしたんですか?マスター……放心状態になって……」

「なあ、木村?さっきお前が入ってきた時、すれ違った少女を覚えているか?」

「は?少女なんていませんでしたよ?マスター寝ぼけてるんじゃないですか?」

 そんな少女は見なかったと、木村は答える。

「そんなはずは無い!ほら、日本人形のような、セーラー服を着た少女だよ!目が覚めるような美少女!」

 あんな少女を見落とすはずなんてあるはずが無い。そう、絶対に!

「はあ?居ませんよ!……セーラー服といえば、五十年前に二葉女学園がそうだったらしいですよ?うちの母がそこの卒業生で聞いたことあります……今じゃ、ブレザーに変わったらしいですけど……マスター、一度精神科にでも行ったほうが良いかも知れませんよ?」

「五十年前!?」

 五十嵐は愕然とした。

 誰も見てない?今の今まで幽霊と話しをしていたのか?それとも幻覚?五十嵐は、もう一度確かめるように、再び愛が座っていたテーブルへと足を運んだ。


「いらっしゃいませ!」

 木村が、今訪れた女学生に声を掛けた。

「いつものやつ!」

「はい!ありがとうございます!」

 コーヒーメーカーがコポコポと小気味の良い音を鳴らしていた。

「でさ、凄かったんだよ!さっきの風!」

 深雪が先に来ていた女学生に声を掛けた。その頭には桜の花びらが付いていた。

「何々?」

 興味津々で訊こうとしている雅美。

 女学生たちの話題は、より一層華やいでいた。

「突風!あれって、春一番の風なんじゃないかな?これで暖かくなるといいね?」


 春一番の風……


 それは、愛と充弘の約束の日。

 五十嵐はフッとその窓の外を見る。まだ蕾だった筈の桜が花を咲かせていた。

「おめでとう……良かったね」

 五十嵐はそう言い残し、全てを受け止めると再び仕事に就く。


「マスター?この席のレモンティーどうするんですか?」

 空席なのに、片付けないとこれから入ってくるお客のことを考えて……といった風に木村は小首を傾げて五十嵐に問いかける。

「良いよ。今日はこのテーブルはそのままにしておいてくれないか?」

 ちょっとだけ余韻に浸りたい。五十嵐はそんな気分になった。


 今頃あの二人は、五十年以上前の約束を果たしに、映画館に向かっていることだろうなと思いながら……


本当は、充弘は愛よりも先になくなっているという設定です。でも、それを描くのは躊躇われたので、止めたてます。不思議な話は、不思議な話で終わらせた方が良いのかなと。

でも後書きに書くと、何かな〜かも・・・ですね。

色々と想像をめぐらせて見てください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ