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翌朝、王都の正門近くで、俺たちはそれぞれの旅の支度を整えていた。
冷たい朝の風が肌に触れた。
晴れ渡った空には朝日が差し込んでいる。
ボランティア活動が一区切りついた。
いよいよ本来の目的、ボロボロになった剣を直すための旅が始まる。
俺だけでなく、みんなの武器も傷んでいる。
話に聞いた伝説の鍛冶屋、『リズ』を探し求めて、険しい山岳地帯へと向かうのだ。
山の方に住んでいるるしい。
「コウイチさん、薬草と保存食の補充は完璧ですよ!」
フィンが自信たっぷりに言いながら、背負ったカバンをパンパンに膨らませて手を挙げた。
カバンはすっかり重そうである。
細身の体をひときわ小さく見せていたが、その顔は晴れやかだった。
「俺たちの準備も問題ないな。しかし、情報の整理もしておかないとな」
俺がそう言うと、周囲は静かになる。
仲間たちはそれぞれ身の回りを確認し、俺の言葉に耳を傾けていた。
その時、背後から規律正しい足音が近づいてきた。
振り返ると、そこには昨日までの激戦を感じさせないほど、ピカピカに磨き上げられた鎧を身にまとった、冷静で威厳のある姿の男が立っていた。
『白銀の翼』のリーダー、フォルダムだ。
「旅立ちの準備かな? 絆の勇者殿」
その声は低く、響くような力強さがあった。
俺は少し驚きながらも、そのまま返事をした。
「フォルダムさん。わざわざ見送りに?」
「いや、君が伝説の鍛冶屋を探していると聞いてな。少しばかり、君に有益な情報を共有しておこうと思って」
フォルダムはゆっくりと懐から、黄ばみがかった羊皮紙の地図を取り出した。
年季が入ったその地図は、まるで古の遺物のように感じられる。
そういえばリズのことを話していたからな。
「リズという鍛冶屋については、我々騎士団の間でも、半ば伝説のような存在だ」
フォルダムは慎重に指を動かし、地図の中でも特に険しい山岳地帯を指差した。
その場所は北東の奥深く、霧に覆われた未知の地である。
「彼女は、決まった店を持たない。だが、最高品質の鉱石が採れる場所を転々としているという噂がある」
「今はどこにいるか、心当たりがあるんですか?」
ライラが興味津々に前に出て、フォルダムに質問を投げかけた。
その目は、好奇心に満ちて輝いている。
「最近、我々が聞いた話では、霧深き『雷鳴峡谷』の近くで、巨大な音が響いていたらしい」
フォルダムはその地図を手渡し、声を低くした。
「ただし、気をつけてほしい。リズは極度の人間嫌いで、下手に近づけば追い返されることになるだろう」
俺は少し苦笑しながら言った。
「人間嫌い、か。手強そうだな」
すると、シロが「わふん」と鼻を鳴らして頷いた。
その表情はまるで、前途の困難に備えているような頼もしさを感じさせる。
山で暮らしている時点で、気難しい感じはするからな。
「だが、君たちなら大丈夫だろう。カースの結界を破ったその『絆』が、きっと彼女の頑固な心をも動かすだろう」
フォルダムはしばらく俺の肩に手を置き、力強く頷いた。
その顔にあふれる信頼感は、今後の旅における大きな自信となる。
「フォルダムさん、色々とありがとうございます。本当に助かりました」
俺は深く感謝の意を込めて言った。
彼は肩を軽くすくめると、にっこりと笑いながら、
「礼には及ばない。君の剣が見事に復活した時には、また手合わせをお願いしたいものだな」
その言葉に、俺は思わず口元を緩める。
騎士団のリーダーに信頼されているという事実が、これからの冒険をより一層意味のあるものにしてくれると感じた。
フォルダムは清々しい敬礼をすると、部下たちの元へと戻って行った。
その背中を見送りながら、俺は改めて自分の決意をした。
「よし、目的地は『雷鳴峡谷』だ。みんな、出発しよう!」
「行こう!」
「出発です!」
俺が大きな声で言うと、仲間たちが一斉に声を上げた。
「おー! 伝説の鍛冶屋さんに、私の杖も磨いてもらっちゃおうかな!」
フィンが嬉しそうに笑いながら言うと、ライラがあわてた様子で反応した。
「あわわ、フィンさん、そんな余裕ありますかねぇ」
そのやり取りを聞いていると、自然と気持ちが軽くなった。
仲間たちの賑やかな会話を背に、俺は王都の大きな門をくぐった。
朝日に照らされた広い街道が、どこまでも真っ直ぐに続いているのが見える。
その先に何が待っているのか、わからないけれど、心のどこかでその道が正しいことを感じていた。
俺の腰にぶら下がるボロボロの剣は、これからの冒険を象徴しているようだった。
あの剣が再び輝く日が来ると信じて、俺たちは踏み出す。




