閑話 ネクシルです。~僕の可愛い婚約者マリアの事。
「殿下、今日はここまでに致しましょう」
「まだだサニット、まだ大丈夫だ」
息を整えて構えを取る。
疲れから剣を握る手が痺れ、剣先が震えているが諦める訳にはいかない。
「殿下...」
王国兵団を率いるサニットは困惑した顔で僕を見た。
「行きますぞ」
僅かに頷いたサニットから再び圧が掛かる。
恐ろしいまでの気、殺意こそ感じないが身体が震え全身の力が奪われそうだ。
「...今日はこれまで」
「ありがとうございました...サニット」
全身を打たれ、立ち上がる事が出来ない僕に終了を告げるサニットの顔には小さな笑みが。
今日は最後に一撃を加える事が出来たからだ。
たがまだだ、マリアを護る為にはサニットとせめて互角に成らなくては。
ぼ、俺はネクシル、アンロム王国の第一王子。
幼い頃から王国を担う王子として英才教育を施され、責任ある立場を自覚してきた。
一般の学問に加え、王子としての帝王学、そして戦争に関する物まで。
「殿下」
「すまない、続けてくれ」
剣術の後で集中力を欠いていたようだ、家庭教師から叱責されてしまった。
こんな事ではダメだ、マリアは王妃教育で教育係が驚く程の理解力を見せているそうだ。
王妃教育だけじゃない、軍略の講義まで受けている彼女は考え方も実践的で闘いも...
10歳からマリアは変わってしまった。
しかし僕に対する気持ちは変わって無い。
自惚れでは無い、それは間違い無く言える。
そう、気持ちを素直にぶつけながら今を一生懸命に生きているとでも言ったら良いのか。
何かの使命感に燃えているのだ。
「ネクシル様!!」
1日の勉強が終わり、同じく王妃教育が終わったマリアと約束していた王宮の一室で抱き合う。
少々恥ずかしいが、これをしないとマリアの機嫌が悪くなる。
「早く婚姻を!」
「それはまだ早い!」
「どうして?私もう大人ですよ、お妃様も構わないですって!」
「母上が?」
常識を弁えている筈のマリアだが2人っ切りになると、とんでもない事を言い出す。
最近は父上や母上までマリアに取り込まれてしまった。
「来年には王立学園に入るだろ、卒業までは...」
「あら、結婚してお子様までのいらっしゃる方も居ると聞きましたわ」
「マリア、何故そんな事まで知っているんだ?」
「あ、アブドルから聞きましたの」
マリアは大粒の汗を滲なせながら今年から学園に通うアブドルの名を挙げる。
しかし奴の手紙にそんな事書いてあったかな?
(まさか私に隠れてアブドルがマリアに手紙を?)
....それは無い、私はアブドルを信用しているからな。
確かに王立学園に通う生徒の中には子供を持つ者も居ると聞いた。
貴族が通う学園だ、幼少期から婚約している者も多い。
中には婚姻を結び結婚し、寮ではなく家を借り家族で暮らしながら学園生活を送っている者も。
...ひょっとして?
「マリア、早く私と結婚して子供を?」
「ま、まさか...」
マリアの滲んだ汗が滝の様に流れ出す。
なんと分かりやすい人だ。
正直なところマリアと早く婚姻したい。
マリアは美しいのだ。
14歳になった彼女はもう少女ではない。
涼やかな目と高い鼻筋、意外と肉厚な唇。
そして母親譲りの紅い髪と見事な身体のライン。
学園に行ったら誰かに盗られやしないかと心配だ。
「ネクシルさえ良かったら...宜しくってよ」
上目遣いで私を見つめるマリア、本当に14歳なのか?
まるで年上の女性に手解きを受けているような...
「だ、駄目だ!
せめて卒業するまでは、学園を卒業すれば!」
「チェ!」
小さな声が聞こえる。
来年には隣国の王子と婚約者も来るのだ。
私達だけ結婚していては何かと不味いだろう。
(何にと言われたら説明に困るが)
イタズラっぽく笑うマリア、僕をからかったのかな?
そんな感じで一年が過ぎ、マリアと共に王立学園に通う為王都を旅立った。
使用人と別にした特別の馬車で2人揺られながら。
「こ、こらマリアどこを触ってる!?」
「あら、どうしましたネクシル様?」
学園に着くまで僕の理性は持つのだろうか?




