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龍の牙と龍の腕  作者: 干からびたナマコ
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とっておきと激動

皆さんこんばんは、干からびたナマコです!第四十話、投稿しました…なんか今回、すごく長い気がする。

「アルマノス様の加護の元に!」

そう叫んだのは一人の騎士だった。

場所は突如現れたギャルブリア軍との戦場。別段周りに聞こえやすい場所で発されたわけでも無いその一言は、瞬く間に広がっていった。

「「アルマノス様の加護の元に!!」」

騎士団が旗を掲げる。その国旗の模様は、サールジニアでは光を表す十字。即ち、アルマノスを示すものだった。


「…………チッ。」

主戦場から離れた森の中で、亜守斗が舌打ちをする。煩わしい蚊の羽音が聞こえたかのように。

しかし気は緩められない。

「グウゥ、ヴァァアアアアア!」

前方から、その筋肉を駆使して、邪龍ヴルトロスが飛びかかってくる。

「『幻雷転』!」

「アアゥ!」

亜守斗が放つ雷が、ヴルトロスの視界を奪う。

「グギルルル…」

前方を確認したヴルトロスは周囲を見回す。

「!」

敵を察知し、上を見上げるヴルトロス。しかし、遅すぎた。

「『火車門』!」

亜守斗が空中で、バゴスを振るう。すると電撃が輪を作りヴルトロスに振りかかった。

「ガァ、ウゥウウウゥゥゥゥ!!」

しかしその再生力と耐久力で耐え抜き、亜守斗に向かって手を伸ばす。

「もう一度だ!『火車門』!」

伸ばされた腕を雷輪が抉る。するとヴルトロスは突如、伸ばしていた腕を己に向けた。

「ガァァウ!」

そのまま己の首を掻き毟る。鋭利な爪によって肉がボロボロと崩れ落ちる。

(何のつもりだ…?)

亜守斗が距離を取った。その瞬間。

「ガガグゥゥアアアアア!」

ヴルトロスが自分の頭をもぎ取り、亜守斗に投げつける。

「何!?」

予想外の飛び道具をバゴスで受け止める亜守斗。

「アグアガグゥ。」

ヴルトロスの頭は動き続け、バゴスを齧るが傷ひとつつかない。

「丁度いい。叩き潰してやる!『撃統点』!」

雷が集められ、豆粒ほどに纏められ光り輝く。しかし突如飛来したものによって亜守斗は吹っ飛ばされた。

起き上がろうにもそれが乗っかって起き上がれない。その物体の正体は、

首の無いヴルトロスの体だった。

「グググ、ガ。」

頭が唸ると、それに呼応するかのように体が首の断面を頭に打ち付ける。すると軋むような音とともに頭と体はくっついていった。

「ガルルル…」

相手を押さえ込んだヴルトロスが拳に力を込める。それは、この戦いの勝敗を告げていた。

「まだだ。俺の頑丈さを舐めるなよ。」

亜守斗が腕を構えると、無数の拳が降り注いだ。


「『フレッシェ・デュ・サン』!」

「はあああああ!」

闇と光の魔法が激突する。互いの空の主戦力が素早くぶつかり合う様は、二匹の隼が争っているようだった。

「死んじゃえーーー!」

ノレアが無数の光の球を浮かばせ、それらとともに突撃する。

「いい度胸ですわ。『ゲイボルグ』!」

ローザが手を掲げると、五尺ほどの闇の槍が造られてゆく。しかし「カーリン」で手を武装したローザの手には、片手で持てるほどの大きさだった。

「フッ!」

それを投擲するローザ。勢いよく飛んでくる槍を、ノレアは身を翻して避けた。

「くらえぇぇぇ!」

勢いよく拳を振りかぶり、ローザを殴りつける。

「くっ!」

「はあああああああ!」

咄嗟に防御の姿勢をとったローザを殴り続けるノレア。すると次の瞬間、ローザの纏っていた闇の手に亀裂が入り、

ノレアの背中を、「ゲイボルグ」が貫いた。

「……かふっ。」

力を失い落ちてゆくノレアを、ローザはじっと見つめていた。

「ごめんあそばせ。私も死ぬわけにはいきませんの。では。」

そう言い残し龍牙のいる森の方へと飛んでいくローザ。飛びながら彼女が指を鳴らすと。大地に魔法陣が出現した。

「な、何だこれは!」

「魔法陣!?何かくるぞ!」

慌てる騎士団を尻目に、ギャルブリア軍はそこから引いていく。魔法陣が一際強く光ると、何かが迫り上がってきた。

「し、城!?」

ギャルブリア帝国に聳え立っていた城が、この戦場の中心に現れた。


時は少し前、荒斬はバールに押されていた。山のような塊がうねり、襲いかかってくる。

「いきなり本気を出すことになるとはな…」

荒斬が仁王立ちし、深呼吸する。そして力強く踏み込んだ。

「『黄金鬼』!」

次の瞬間、荒斬の姿が消えた。

「上だ。」

バールが落ち着いた声で言うと、蟻兵士達が一斉に上を見上げる。斜面に生えた木の上に荒斬が立っていた。

「…………」

もともと筋肉質だった荒斬の身体がより硬く強くなり、指の先まで力が篭っている。荒斬がゆっくりと刀を構えると、乗っていた木がへし折れた。

「我流、『陽炎天昇』!」

地面に勢いよく刺さった刀が、荒斬によって振り抜かれる。摩擦熱によって発生した火炎が蟻兵士の塊を焼いた。


「グルルルゥゥゥ…」

森の中、ヴルトロスが亜守斗を持ち上げる。全身から血が流れ、骨はバキバキに折れていた。

「正しく獣だな。」

声のする方を向くと、ひどい猫背の男が歩いてきていた。亜守斗と同じく四大幹部が一人、ラグナだ。

「ガゥッ」

新たに標的を定めたヴルトロスは亜守斗を投げ捨てる。それを尻目にラグナは右手をかざす。

『キング・ダイヤ』

電子音声が鳴るが早いかラグナが突撃する。ヴルトロスも構え、それを迎え撃つ。

身体能力ではヴルトロスが圧倒的だが、ラグナの方が経験で勝った。攻撃を読んで躱し、首に一撃を叩き込む。

「おかしいな。『覚醒』をしているなら、その姿ではない筈だが。」

その時、ラグナの言葉に応えるようにヴルトロスの背中がひび割れ始めた。

「!まさか、このタイミングで。」

ひび割れが縦に広がった次の瞬間、ヴルトロスは『脱皮』した。

そこから出てきたのは濃ゆい紫の鱗に黄色の目、腹面は紅に染まっているが、胸の中心に猫のように瞳孔が縦長な瞳、「魔眼」が露出していた。

「ゴアアアアアアアア!!」

ヴルトロスの叫びが大地を揺るがす。それを見つめるラグナを、飛来したローザが連れ去った。

「ダーリン!ボーッとしないで欲しいですわ!」

「あ、ああ。悪い…ところでローザ。」

ラグナの振り向いた顔の頬を、ローザは指で突いた。

「わかってますわ。『合体』の準備は出来てますわ。」

その言葉とともに、魔法陣が展開される。ラグナは懐からトランプを取り出す。ダイヤのキングとハートのクイーンの二枚。

「鋼鉄の冠よ、抱擁の鎧に。暗黒の翼よ、堅固なる核に。今こそ合わさり一つとなれ!」

ローザが詠唱を終えるとともに、ラグナがローザを抱きしめると、二人を闇と炎が包み込む。

「ガウウ。」

飛びかかる火の粉を払いヴルトロスが空を見上げると、鋼鉄の鎧を身に纏ったローザが立っていた。

「さ、ダーリン。貴方の大好きな『全力の殺し合い』の始まりですわよ。」

『ああ……楽しみで仕方ねえ!』


荒斬が「黄金鬼」を発動して、どれくらい時間が経ったのか。明らかなことは一つ。荒斬は劣勢だということだった。

「はあ、はあ、畜生…」

「陽炎昇天」の炎もすぐに揉み消されてまった。四方八方どこから攻め込んでも防がれる。ただバールの指示で動いているわけではない。蟻兵士一人一人が得た情報を、瞬時に司令塔であるバールに伝達しているのだ。

「やるな…この『グレート・ワン』は神に匹敵する力を持つというのに。お前一人になってからも耐え続けている。」

称賛の言葉と共に塊が動く。一対の角の様な形になり、荒斬に狙いを定める。

「クソ、がぁ。」

刀を構える荒斬。片方ならまだしも、今の荒斬に両方は捌けない。

角が迫る。避けても追尾してくるだろう。受けるしかない。

「荒斬!右だ!」

「!『月輪牙爪』!」

声に反応し、技を放つ荒斬。次を考えずに放たれたその斬撃は右の角を細切れにした。そして、もう一方の角は。

「…デヴィッド。」

「無事か。」

デヴィッドの一閃が切り裂いていた。

「お前、騎士団長だろ?指揮は…」

デヴィッドが微笑する。

「有能な新人がいてな。ジョーハマと言ってな。指揮の才に秀でているんだ。」

そう言うと、デヴィッドは塊に向かって一直線に駆ける。手に握った両手剣に雷が迸る。それを見たバールが驚愕する。

「貴様、その剣は!」

「『雷突』!」

放たれた一撃が塊に突き刺さる。痺れる電撃が塊をバラバラにした。

「今だ!荒斬!」

「ありがとよ!抜刀術、『春風晴天』!」

風が逆巻き蟻兵士たちを吹き飛ばし、剥き出しになったバールの首は斬られていた。

実は四大幹部は全員、龍牙が元々住んでいた方の世界で出会っています。作中では書けませんでしたが、バールはアイラの部下になる前は騎士として勲章を沢山授与されていました。しかし15個目の勲章を授与される前夜に嫉妬した同期の騎士たちから殺されかけている時にアイラに助けられて命の恩人である彼女に忠誠を誓いました。バールについてはこれでお終い。龍の牙と龍の腕、第四十話でしたー!

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