本気と次元
皆さん超絶お久しぶりです。干からびたナマコです!第三十七話、投稿しました!
ヘレシーキメラ本部。最上階。
戦場と化したそのフロアで、激突する影が三つ。
「どうした?技が荒いぞ。」
ヘレシーキメラトップ。腕を蟷螂のように変化させた「異形の」ゲルモンド。
「そんなんじゃあ俺たちを殺せないぜぇ!?」
彼の協力者。蜘蛛男ドゥイスパー。そして、
「フーッ、フーッ、フーッ。」
憤怒の形相をした荒斬である。
「どうしちまったんだ。荒切さん…」
騎士の一人が言葉を零す。
「様子がおかしい。『こいつら』が出てきてから、ずっと……」
そう言いながら騎士が対峙しているのは、蜘蛛と人間を足したような怪物。それが何体も現れゲルモンド達に加勢していた。
それは、ほんの数分前のことだった。
「我流、『虎の爪』!」
荒斬がゲルモンドに技を放つ。
「くらうか!」
それを避けるゲルモンド。それと同時に、
「おらよっと!」
ドゥイスパーの出した糸が複雑な軌道を描き五方向から攻める。
「くっ、そらぁ!」
地面を強く蹴り糸から逃れる。連携によって一人に集中できず、荒斬は劣勢に立たされていた。
「蜘蛛が厄介だな…」
「そんな冷たいこと言うなよぉ!ヒャッハー!」
空中からドゥイスパーが襲い掛かる、糸を利用した死角からの攻撃。
「フンッ!」
それと同時にゲルモンドの斬撃が正面から迫る。
「我流、『朱き翼』!」
助走をつけ、ゲルモンドを正面から迎え撃つ。
「背後がガラ空きだぜぇ!」
そして後ろから迫りくるドゥイスパーを、
「『仕込み蛇』!」
左脚を唸るように繰り出し、突如靴から現れた短刀でドゥイスパーを貫いた。
「!?」
刺されたドゥイスパーが何かに動揺し、距離を取る。それを見たゲルモンドが声をかけた。
「どうしたドゥイスパー?毒でも盛られたか?」
「いや、そうじゃねぇ!お前、その短刀…!」
「あ?この短刀がどうした。」
「…見せてやるよ、出てこいお前ら!」
「「はっ!」」
そうしてドゥイスパーと荒斬の間に蜘蛛人間達が躍り出る。それを見た瞬間、訝しげにドゥイスパーを睨んでいた荒斬の目が大きく開いた。
「てめぇ、まさか…」
「やっぱりそうだな!?俺も隠れてその場にいたからなぁ。懐かしいぜ!十年前に爺様が獲って来たその短刀持ってた女は美味かったよ!」
「…………」
「泣いてたくせに、絶対に退かなかったよなぁ。ま、逃げても捕まえてたけど…どうした?だんまりして。」
黙っていた荒斬が顔を上げると、その目には涙が浮かんでいた。
「…うぁぁぁぁぁぁぁ!」
「殺す、殺す、絶対に殺す!」
頭では分かってる。怒りに任せりゃ技はまともに出せない。
「ああああああああ!」
それでも止まれない。俺の過去最大の傷。潰えて欲しくて堪らなかった一族。
俺の親友を拐った人喰いの土蜘蛛。その末裔が、目の前にいた。
「死ね、死ねぇ!」
「ハーッハッハァ!そんなじゃあ死なせられないぜ!?」
「ドゥイスパーの言う通りだ。俺が本気を出すまでもなさそうだぞ?」
ゲルモンドの声が聞こえた次の瞬間。
「ガッ!?」
背中に激痛が走った。背中を切られたらしい。
「ウゥ、アァウ!」
獣のように荒々しく飛び退き、向き直る。怒りに任せても体力が無限になるわけじゃ無い。このままじゃ死ぬ。怒りを抑えなければ。
「チェックメイト!だぜ?」
うるさい。死んでも化けてでてやる。絶対に根絶やしにして見せる。
「ウオォォォォォォォォォォォォォ!」
何叫んでんだよ。叫びてえのはこっちだ…叫ぶ体力も残ってないがな。
「荒斬さん!」
今のは医療班か?怪我を治してもらえりゃ戦える。でも無理だ。こいつらに殺されて終わりだ。
「荒斬さん!『後ろから』声が聞こえます!」
後ろ?…崖っぷちじゃねえか。誰もいるはず…………ん?
「荒斬そこどいてぇぇぇぇぇ!」
「!?」
驚き後ずさったその直後。
「到、ちゃぁぁぁぁぁぁく!」
変身した姿の龍牙が、空中に躍り出た。
「ワオ!壁登って来たの!?凄くね!?」
ドゥイスパーが空中の龍牙を見て驚きの声を上げる。龍牙は空中で身を翻し、勢いよく床に着地した。ゲルモンドが口を開く。
「バルザを倒したか。レボリューションの中では最高峰だったが、所詮は研究者か。」
「黙れよ。」
「何?」
ゲルモンドの言葉を遮った龍牙の声には怒気が篭っていた。
「俺のダチを泣かせた上に、俺のダチを侮辱すんなっつってんだよ!」
そう言うが早いか、ゲルモンドに飛びかかる龍牙。
「隙有りだぜ!」
ドゥイスパーの糸が迫る。しかし龍牙は構わずにゲルモンドに組みついた。
「は!ただ突っ込んでくるとは愚かだな!」
「うるせぇぇぇぇぇ!」
糸に巻かれる龍牙。しかしゲルモンドから身を離さなかった。
「ぬおぉぉぉぉぉ!」
糸がついた部分の肉が剥がれる。それでも離さない龍牙。身体が裂けそうになったその時、
「抜刀術、『滝登り』!」
傷を癒した荒斬が、その糸を切り裂いた。
「…しまった。」
ゲルモンドが不快そうに言葉を漏らす。
「嫌な顔してえのはこっちだ。…でも、」
荒斬が龍牙に顔を向ける。
「ん?どした。」
「お前が代わりにキレてくれたおかげで、少し気が晴れた。もう大丈夫だ、ありがとう。」
そう言うと荒斬は敵に向き直る。
「もう俺の刀はブレねえぞ。千載一遇の好機を逃したことを死にながら後悔しやがれ!抜刀術、『滝登り』!」
ゲルモンドの足元に踏み込み、刀を抜く荒斬。
「龍牙!そっちは任せるぞ!」
「合点!」
龍牙がドゥイスパーの前に割り込み、荒斬への邪魔を防ぐ。
「もう手加減はしねぇぞ!」
ドゥイスパーが放った無数の糸玉が、雨のように降り注ぐ。
「当たる前に近づいてやんよ!」
「読み通りなんだよ!ヒャハハハァ!」
ドゥイスパーの顎が大きく開き、龍牙を喰らおうとする。
「くっ、オラァ!」
退けば糸にやられる。逃げ場を失っている龍牙は腕を突き出した。しかしその腕はドゥイスパーに食いつかれてしまう。
「グッ!」
激痛に身体が震えるが、怯んではいられない。強引に意識を集中させ、もう片方の腕を振りかぶった。
「ガァ!」
「ピンチ!」
そう言ったドゥイスパーはギリギリで腕を掴み攻撃を回避する。
「どうする、次は脚か!?」
「畜生、こうなったら…!」
そう言うと龍牙は口を開いた。
「!お前、まさか『覚醒』を…」
覚醒?何のことだ?さっきのすげえ痛かったアレか?
頭の中で思考を巡らせながら開いた龍牙の口は、頬の半分まで裂けていた。
「ガゥ!」
その大口で噛みつき、ドゥイスパーから血が流れる。
「ガッ、ハッ!」
「ガァウ!ガァ!」
一心不乱に噛みつき続ける龍牙。そしてその横で、
「我流、『朱き翼』、『虎の爪』!」
荒斬がゲルモンドに連撃を仕掛ける。ゲルモンドはそれを捌き切れていなかった。
「残念だったな、俺はタイマンが得意なんだよ。」
「…そうか。じゃあ俺も、本気を出そう。」
ゲルモンドがそう零しと、肉体が変化していった。
脚はゴキブリのように、背中は蜻蛉のように、そして頭はヘラクレスオオカブトのように。
四つの生物が混じった正しく「異形」。ゲルモンドが脚に力を込めると、荒斬の前から姿を消した。
「…速い。」
下手に動かず静かに構える荒斬。その背後からゲルモンドが襲撃する、次の瞬間。
「これが、俺の『本気』だ。」
ゲルモンドの胴体が真っ二つに斬られていた。
「…………」
荒斬がゲルモンドを斬る少し前、龍牙は動かなくなったドゥイスパーから頭を離していた。
次の瞬間目にしたのは超速で動くゲルモンド、そしてあまりにも呆気ない決着。
「龍牙。そっちも終わったか。」
荒斬がこっちを向く。龍牙がドゥイスパーに触れると、まだ温もりがあった。
「いや、まだ生きてる。」
「そうか。じゃあ俺が首を…」
荒斬が近づいて来たその時、
「!」
荒斬が何かに気づき、横を向く。次の瞬間。
ドゥイスパーと俺は荒斬に蹴飛ばされ、今し方俺たちがいた所を黒い線が貫いた。
「大丈夫か、龍牙。」
荒斬が声をかける。しかしそれどころではない。
「いや、大丈夫だけど……今の何?」
荒斬が先刻の一撃で抉られた床を見た後、飛んできた方角を見やる。
「飛んできたのはあっち。てゆーことはやっぱり、ギャルブリアの奴らだろうな。」
「…え?」
近くにいるのか?
「見回してもいねぇよ。国の方から撃ってきたんだから。闇属性のだから、大方前に見た悪魔の魔法だろうよ。」
国から?一体どれだけ離れてると…
「あ、そうだ。…斬らせてくれ、そいつの頸。友達の仇なんだ。」
「う、うん…………」
「どうした?」
荒斬が顔を覗き込む。
国を跨いだ正確な狙撃。そしてそれに反応した荒斬。
レベルが違いすぎる。
あまりの次元の違いに、龍牙は思考が纏まらなかった。
ゲルモンドは複数の動物の力を持つ複合体で、一般人には施せない特殊な方法でレボリューションになっています。話は変わりますが、最近忙しくって投稿できていませんでした。一応ラストまでの構想は練ってあるのでご安心ください。龍の牙と龍の腕を、引き続き宜しくお願いします!




