表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

蛇足

『一軒家で謎の爆発。女性一人が死亡』


 〇月〇日午後8時ごろ、○○県○○市○○町〇丁目の民家から爆発が起こったのを、近くを通りかかった人が発見し、119番通報した。○○署によると、現場からバラバラになった女性一人の遺体が発見された。遺体は、その当時家にいた神通サユリさん(32)と見られている。

 現在、爆発の原因を調査しており――




―――




 俺はネットニュースを見て、サユリが死んだことを確認した。


 助かった……。

 これでもう、サユリに殺される心配はなくなったのだ。




 俺は、投稿した『ひどい感想で作者を悲しませたら復讐されました』を編集し、登場人物の名前やペンネーム、作品名などを変更した。

 削除まではしなかったのは、せっかく書いたこの作品に愛着を感じていたからだ。

 できれば他人に読んでもらい、感想をもらいたかった。


 この作品を残しておいたからといって、俺がサユリを殺したとバレる心配はないだろう。

 書いた文章が現実化するなど、誰も信じるはずがない。

 完全犯罪だ。


 ただ、謎も残っている。

 なぜサユリは、俺の名前と住所がわかったのだろうか。


 まあ、今となってはどうでもいいな。




 それから一週間後――。


 俺は落ち込んでいた。


 投降した『ひどい感想で作者を悲しませたら復讐されました』に、全く読者からの反応がないのである。


 一件もブックマークがつかない。

 一ポイントも評価が入らない。


 サユリを殺すという目的は達成したので、この作品は役目を終えたとは言えるのだが、それでも俺は他人に読んでもらい、評価をしてほしかった。

 おそらくは、これが小説家の(さが)というやつなのだろう。




 さらに一週間後――、


 相変わらず、読者からの反応はなかった。


 どうやら、俺には文才がなかったようだ。

 そう思って、諦めかけていたときだった。

 ついに待ち望んでいた文字列が、目に飛び込んできた。


『感想が書かれました』


 きたっ!

 ついに反応があった!


 もう、どんな感想でも構わない。

 全く反応がないのが、一番つらいのだ。

 俺はドキドキしながら感想を開いた。




―――



悪かった点:

 ひたすら気持ち悪い。


一言:

 読んで後悔しました。

 こんなゴミみたいな話を投稿しないでください。




―――




 俺はあれ以来、会社を休んでいる。

 あまりのショックで、何をする気にもなれないのだ。


 もちろん、あの感想は即座に削除した。

 だが、俺の心には強く残っている。一生消えることはないだろう。


 俺は今にして、サユリの気持ちを理解できた。

 あの感想を書きこんだ奴を、ぶん殴ってやりたい。


 だが、もちろんそれはかなわぬ妄想だった。


 ………………。


 …………。


 ……。


 ん?

 

 ユーザTOPページを見ると、一件のメッセージが届いていた。

 驚いたことにそれは、運営からのメッセージだった。




―――




件名:悪質な感想を書きこんだ人物への対応について


『小説家になろう』運営、検閲(けんえつ)部です。

 平素より弊社のサイトをご利用いただき、誠にありがとうございます。


 今回、一乗谷様の作品において、悪質な感想が書き込まれたことを確認いたしました。

 当部では、そのような書き込みは作者様のモチベーションを著しく低下させる行為として、厳しく取り締まっております。


 つきましては、感想を書きこんだ人物のIPアドレスからプロバイダを特定し、プロバイダのデータベースにハッキングを行うことによって、該当の人物の個人情報を入手いたしました。


 その人物の個人情報をお送りしますので、今後の創作活動の参考にして頂きたく思います。


 なお、このことは他言無用でお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 実は 『めちゃくちゃ気持ち悪い。この主人公、ゲーム知識とったら長所が何一つ見当たらない薄っぺらいキャラ。ハーレムタグも付けない規約違反を放置するくらいの作者の作品だからかキャラ達から気持ち悪…
[一言] この力がほし……。
[一言] 最初はエッセイかな?と思って開きましたが面白かったです。 特に感想は自分達読書が普通にすることなので、感情移入しやすかったですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ