エピローグ 『俺達の戦いはこれからだ(仮)』
忘れていない。
そのことを再確認して、輝義は本当の覚醒を果たす。
そして同時に、あることも思い出す。
「アレス……アイツ、もしかして」
しかし、それについての言及は後だ。今は何よりも、於菟というヒーローに関して。
「絶対許さねえ……つっても、俺に何ができるわけでもねえけど」
今は、そう。
いかにして英雄を再臨させるかだ。
輝義が掲げる『英雄再臨計画』は、序章にすら達していなかった。
そのことを教えてくれた中年オヤジ――『剣神』葛は、もういない。
ここからは輝義一人だ。
なんだかんだであの中年オヤジには支えられていた。自分が支えていると、そう驕っていたが、実際は彼の存在に支えられていたのは自分だったのだ。
彼の存在があったから、こうして輝義は生きてこられた。ある意味では反面教師として。
それももう終わり。
彼は言った、はずだ。
「また――一先ずはここでお別れだ。ああ、クソ、待ってろよ脱ニートヒーロー……!」
葛は腑抜けていた。それは間違いない。しかし大きな見誤りもあった。
彼は、心底からのヒーローだ。――於菟とは違う。
さて、これからどうしようか。
夢を見直した。計画は始まってすらいない。明確な目的がわからなくなって、途方に暮れた。
そんな輝義に、やることがあるとすれば……それはなんだろうか。
「――やべえ、わかんねえや」
それでいい。
もう一度、輝義はゼロから始めねばならぬのだ。なのに、最初からやることがわかっているなんておかしい。
今はそれでいい。
「もう一度、もう一度……ここからだ。ここから、俺は『英雄再臨計画』を始める。本当の序章はここからだ! ……なんて」
もう力が入らない。
ようやく力んでいた全てが抜け落ちた。なぜこんなにも清々しいのか、輝義自身にもわからない。何もわからないままだ。
いつか、それがわかる日が来ますように。
――『英雄再臨計画』、その序章が、ここから始まるのだ。
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漆空は見た。彼のボロボロになった服、そのポケットから紙切れが覗いている。
見間違うはずもない。アレは――アレは――、
「ふざけんな……騙してたのかよ……ッ!」
それがわかっても漆空は動けない。
見てしまった。萎縮してしまった。
本物のヒーローは――強大だった。
「くそ、クソ……動けよ、震えんなよッ!」
路地裏に隠れる漆空は、彼と、『剣神』を名乗る男が戦うのを見てしまった。……いや、アレはもう戦いとは呼べない。一方的な蹂躙だ。
それをしたヒーローも常軌を逸している。しかし、それを受けて清々しい顔をしているあの男も理解の外にある。
彼らはなんなのだ。
……間違いない、人外だ。
それでも、自分はその人外達と戦わねばならない。
だというのに――脚は震え、まともに立つことすらできない。いつまでも恐怖が拭えない。
「ふざけんな、ふざけんな、ふざけんな……ッ! 僕は、アイツらを……クソ、クソォ――ッッッ!!」
少年の叫びは響かない。低くくぐもり、誰にも届かない。
少年が追い求む彼女にも届かない。
ああ、なんてちっぽけで、儚い覚悟。
ああ、なんて、なんて――
――弱いのか。
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悟る。
動き出すのだろう。これから先、彼が。
未来に姿の映らない彼が、これから世界を動かすのだろう。
「……なんて、脆い」
だが、その脆さが必要なのだ。今の世には……そんな、崩れやすい覚悟が必要なのだ。
その先に、視ようとしても視れないその先に、どんな未来が待っていようと。
「……英雄は再臨する。どんな犠牲を払っても、その未来だけは覆らない」
白髪の女は一人呟く。
ここから先、想定外は当たり前だ。
――忌々しい平和は、終わる。
終わります。とっても唐突ですみません。
この『すみません』というのは本当にそのままの意味で、『私の気が済みません』と、そういう意味です。
というのも、この作品プロットが存在しないため穴だらけです。それこそキャラ設定くらいしかない超特急なものでした。
なので、勝手で悪いのですが、これをプロトタイプ(?)のようなものにしてもう一度書き直します。
本当に申し訳ありません。それではまた……具体的には、私がPC買う時まで。




