23 鍵じめ問題と桐山さんの意外な行動
最近はだいぶ暖かくなってきた。桐子は、冬は問題なくても暑くなると生じてくる問題があって困っている。それは家の鍵締めだ。
おばあちゃんは玄関の鍵はほぼ間違いなく閉める習慣がついているのだが、4月頃からは暖かかったり暑かったりで窓を開ける。
そして出かける時には窓は開けっぱなしで出かけてしまうのだ。おばあちゃんの若い頃の昭和の平和でのんびりとした時代とは違うから、出かける時には必ず一階の全ての部屋の窓を確認するように何十回も言っているのだが、その場ではハイと言うのだが相変わらず開けっぱなしなのである。
思い返してみると、昔は学校の校門は開けっ放しだった。学校は安全な所だと誰もが思っていた。
しかし例の大阪の小学校での事件からは、どの学校も校門は原則閉じてあり、出入りする業者さんも校門の前で車を降りて門をガラガラと開け、車を運転して校門を通ったらまた車を降りて校門を閉め、再度運転をして駐車場へ向かわなければならないし、雨が降っていればそれを傘を差しながら、または濡れながらやらなければならないから面倒なことこの上ない。
世間ではオレオレ詐欺とかアポ電強盗とか物騒な事件が増え、桐子の家も対策として二重窓にしたり、勝手口のドアのガラスを防犯ガラスにしたりといった対策をたてているが、どんなに対策をしても窓を開けっぱなしにしたのではどうぞお入りくださいと言っているようなものであり、お話にならない。
何度言っても通じないので、3900円で買ったセンサーを玄関のところに設置した。電池で作動し、配線不要である。
人が外に出るために玄関に来ると一度、靴を履いて玄関を出ようとすると2度目が鳴る。
センサーが人の動きを感知すると無線で二階にいる桐子の部屋の受信機に信号がゆき、ピンポンと鳴るのである。
ピンポンが鳴ると桐子は大急ぎで一階に降りて行く。案の定窓は空けっぱなしで、空いている窓から外を見ると、玄関と門の間あたりに帽子を被ったおばあちゃんがいる。
そこで声をかけ、もう一度家に戻ってもらい、自分で窓を閉めさせる。ピアノの部屋は確認しないの、と聞くと閉まってると思う、というからそれでも一応ピアノの部屋に行って確認してよ、と言って導くと、やはり窓は空いているのだ。
「おばあちゃんが若い頃の平和な時代とは全然違うんだから、面倒でも必ず全ての部屋の鍵を確認して閉めてもらいたいんだよね。お願いしますよ」
この問題が始まった頃は、泥棒に入られて通帳やお金を取られちゃったら困るからお願いしますよ、とイライラしながら言っていたのだが、いくら言ってもダメなので、今のおばあちゃんはこういう状態の人なのだとある意味割り切って、センサーが鳴る朝6時頃、昼間、夕方その都度一階に行ってイライラしないように自分に言い聞かせて、のんびりした感じで一緒につき合って、でもできるだけおばあちゃん自身に閉めてもらうようにしている。
いちいちイライラしていても相手に通じないのだから仕方ないし、イライラするのは自分自身の健康にもよくないはずだしおばあちゃんとの人間関係も悪化するだけなので。
毎日この問題でおばあちゃんに振り回されている桐子は、やっと今夜別世界であるオレンジ色のライトのガールズバーにやってきた。
これから3時間はとりあえずおばあちゃんから解放されるのだ。出勤するといきなりママさんからリクエストで呼ばれていると言われた。
桐子は話し上手だし、そこそこ美人ではあるのだが、常連客、つまりいつもリクエストしてくれるお客さんというのはいなくて、ほとんどの場合はヘルプなので意外に思って指定された2番にいくと、そのお客さんは桐山さんだった。
しかもふと近くのカウンターの方を見ると、沙耶香さんがいるではないか。




