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ep.14 養子縁組

読んでいただきありがとうございます。

久しぶりの投稿です。

アヴァの過去が少しずつわかります。


記憶を思い出し、互いの想いが通じ合ったあとネイサンの指示により速やかに部屋が同室となった


“早すぎない!?”と驚く茉優、改めアヴァに対し“長い間待ったよ?”とニコニコ応えるネイサン

ネイサンが座る際にはアヴァはほぼ毎回、ネイサンの膝の上に座らされる

執事や使用人が生暖かい目で微笑むのを毎回、顔を赤くして耐えるアヴァ

そんな日々が日常となっていた


「アヴァ、明日出掛けない?」


夜、湯浴みを終えベッドで2人で寛いでいた時にネイサンからの突然の提案


「うん、良いけど…仕事大丈夫なのっ?」


茉優の社畜性格は、生まれ変わっても変わらないようだ。


「大丈夫だよ。最近、仕事忙しかっただろ?予定を空けたくて詰めてたからなんだ。」


記憶が戻った2人は、2人きりの時は前世と同じ様に過ごそうと決めた。


「そっかぁ…ありがとうね。」


アヴァの方は必ず供を付ける条件付きで仕事を続ける事が許可された

勿論、片時も離したくないネイサンにとっては苦渋の決断だが、元々の茉優の性格も考え了承したのだ。



「明日は何処に行くか決まってるの?」


予定を空けたくて…と言う事はスケジュールが決まっている気がしてアヴァはネイサンに問う


「うん。伯爵家に養子になって、私の所に嫁入り予定だろう?だから、家にご挨拶がてら養子の話を詰めようかと思って。」


早く君と一緒になりたいからね。そう言ってネイサンは笑った


翌日、2人は馬車を使い「イノチェンテ家」へと訪問した。

年老いた老夫婦と養子の跡取り息子が出迎える。


「ようこそ。ベッドフォード公爵様、お久しぶりでございます。」

イノチェンテ当主ルドルフォが丁寧に挨拶する。それを見習うように妻であるシャーシャ、跡取り息子のラウムが深々とお辞儀をした。


「久しぶりだな。」

馬車を降り声を掛けるネイサン

静かに手を差し出し、アヴァはその手を取りゆっくりと馬車を降りる


「我が家に娘が増えるのは嬉しゅう事です。」

穏やかに微笑むルドルフォ


「……すまんが、娘は増えるがすぐに嫁に出ていくがな」


とネイサンが伝えると「存じておりますとも。」と笑うルドルフォ

挨拶をしなくてはとネイサンの陰から顔を出したアヴァにルドルフォは目を丸くした。



「……失礼…お嬢様は名前をなんと?」


「えっ…あ、アヴァと、申します」


慌てて叩き込まれた挨拶を行うアヴァ


「…失礼ですがご両親は?」


ルドルフォは落ち着き穏やかな口調で質問する。

細めのルドルフォの瞳が珍しく大きくなっている。

白髪の頭髪は長い年月を生きてきた証拠だ



「あっ…私の両親は既に亡くなっております。私が5歳の頃です…。その後は孤児院で…」


アヴァの答えにルドルフォは少し伸びた髭を触り思案する。


「ご両親は貴族ですか?」


何故こんなにも質問されるのか疑問に感じながらもアヴァは正直に答えた


「いえ。平民です…あの平民はやっぱり…」


言いかけた所に慌ててルドルフォは答えた


「いえ。そう言うわけではないですよ。貴女に良く似ている貴族の方を知っておりまして…まぁ彼等は亡くなったのですが…。彼等にも子供がおりましてね…生きていれば丁度貴女くらい…」


しーんっと、その場が一瞬静まり返る


「…貴女がせめて親戚筋だったらなぁと思って…失礼を致しました。」


ルドルフォは寂しそうに笑った


「いえっ…。親戚…両親の事はよく分からなくて…すみません。私自身、小さい頃の記憶も殆どなくて…その両親とは似ていなかったとも聞くので…両親が親戚なのかはわからないです…」


困ったように答えるアヴァにルドルフォは眉をピクリと動かした


「ご両親に似ていないのですか?…記憶がないとは…」


こくりと頷きながらアヴァは過去を振り返った


「…私にあまり関心がなかったんです、二人とも…。だからその…何処かにつれてってもらうことも殆ど無くて…。たまにお使いに街を歩いて。その時いつも街の人達に“両親とは似てない”“養子か?”って聞かれるほどだったんです…でもラウザ街の方たちは…」



言いかけた所でルドルフォが反応した


「ラウザ…?ラウザ領地に住まれていたと?」


何がそんなに驚く内容なのかわからないが頷いた。

暫く無言で思案していたルドルフォは笑顔になり「なるほど…。養子手続きでベッドフォード公爵様にお話があります。アヴァ様は、どうぞシャーシャとお茶でも楽しんでいてください」と告げシャーシャに目配せをした。


こちらへどうぞ。娘なんて嬉しいわとシャーシャはニコニコ微笑みながらアヴァを連れて行く。

ルドルフォはネイサンを別室へ誘導した


「…単刀直入にお話致します。…私の勘が正しければ今の段階ではアヴァ様を養子にする事は出来ません。」


そう伝えるルドルフォに唖然としたネイサン

彼女を養子に難しいとなると、婚約すら出来なくなる。


「…何故だ?」


ここで思わぬ障害が出た事に苛立つネイサン

ため息をひとつついたルドルフォは、立ち上がり窓の外を眺めた。


「先程お伝えした私の知り合い…いえ友人に関係しております。公爵様もご存知でしょう。キャベンデュオ家の悲劇を…。」


20年近く前、キャベンデュオ領地で当主の夫婦が惨殺された事件があった。

惨殺され当主の邸は無残にも火を放たれた。

生まれたはずの赤子も居たはずだが消し止められた邸を探しても行方不明のままだった。

生まれたばかりの脆い骨で火は耐えられず炭とかしたと思われていた。

キャベンデュオ領地のすぐ隣にあるのがラウザと呼ばれる街だ。すぐ隣ではあるが他国となる。


キャベンデュオ領地とラウザ領地は互いに牽制しあい仲が悪い。国同士が常に臨戦態勢なのも関係している。


「……アヴァがキャベンデュオ家の生き残りだと?」


それだと平民の両親のもとに居たのは何故か説明がつかない。


「…失礼。面影があまりにもキャベンデュオ家の奥様とそっくりでしてね…。まるでマーヤの生き写しだ…。少し…調べさせていただきたい。思いもよらぬ過去がでてくるかもしれません…」とルドルフォは渋い顔をして伝えた。


「……分かった。私の方でも調べよう。」


渋々ながらネイサンは承諾した。


「…あの事件以降、キャベンデュオ領地は友人ということもあり代理で私が管理してきました。もし、もしも生き残りのお嬢様でいらしたら、お父上の領地を返さねばなりません。…それが、友人を守れなかった私のせめてもの償いです。」


そうルドルフォは呟く。

アヴァにはどう知らせたものかと思案するネイサン

両親が実の親でなかった場合ショックを受けるのではないかと心配になる


「公爵様、キャベンデュオ家は以前より狙われておりました。隣国のラウザ領地を当時管理していた領主はマーヤの美貌に夢中になり、あろうことか欲を出したのです…。おろかなラウザ領主です。まぁ結局、キャベンデュオ家殺害の犯人と確たる証拠が出ましたので当主は処刑されています。当主の妻は直前で別の貴族の後妻となり縁を切り逃げ切ってますがね…。当時生まれたばかりの赤ん坊だった子供は孤児院送りですよ」


父親の欲がねぇ…とため息をついたルドルフォ


「……孤児院?」


聞き覚えのある言葉だった


「…えぇ、確か…この国のアクシュテノール孤児院へ引き取られたと聞きます」


そう確かにルドルフォは言った。

アクシュテノール孤児院は、アヴァが両親亡き後育った場所だ。



「……ルー」


傍に控えている陰を呼び目配せをした。

こくんと頷いたルーは静かに消えた


「…覚えが?」


ルドルフォはただならぬ様子にネイサンに確認を取る。

小さく頷き確証が出たら話すと伝えたネイサン





「ようこそ。イノチェンテ家へ」


イノチェンテ伯爵家当主の妻、シャーシャは優しくほほ笑んだ。 

白髪が混じっている飴色の髪色が印象的だ

目元はつり目気味だが見た目によらず温厚な性格をしていた


シャーシャと2人きりのお茶会にアヴァは緊張していたが、“継母になるんだもの。マナーは気にしないで”と優しく声をかけられた。

色とりどりの菓子と紅茶を並べられゆったりお茶会が始まった


「アヴァのご両親はどんな方なの?」


色々な話をしている際に幼い頃の話題となりシャーシャから両親の質問が来た


「…えっと…先程もお伝えしましたが私にあまり関心がなくて…私が基本的に家事をしていました。外には出るなと言われていましたから…。時々、お使いで出してもらえる程度で…」


居心地が悪そうにアヴァは伝えるとシャーシャの顔が曇った


「そう…それは大変だったわね…。それでもご両親のこと愛していたのでしょう?」


寂しそうな表情でシャーシャは聞くがアヴァはきょとんとする

自分はそんな両親を愛していたのだろうか

茉優の記憶が戻った今考えれば、これは現代で言えば立派な虐待だ。

肉体的虐待はないがネグレクトだろう…

アヴァはうーん、と首をひねる

過去をじっくり振り返ることを何故しなかったのか考えたが、良い思い出が殆どないのだ。

罵倒されたことはそう言えばあった気がする


“なんて言われたっけ…?”


「…金のなる木だって聞いたのに、金元は死んじまうし…とんだハズレだよ」と両親が言ってたっけ…。


「……私は金のなる木だそうで…。愛していたと聞かれれば正直…なんの感情もないですね…」


案外、自分は冷たい人間なのかもしれない!

しいて言えば、孤児院のシスター達の方が私のことを愛してくれていた気がする


「まぁ…」


ほっそりしたつり目を細め同情の表情を見せるシャーシャ


「その分、私が愛するので心配いりませんよ」


優しく柔らかな声がして背後から抱きしめられた


「……ネイサン様!?」


人前でなんてことを…以前の叶汰やネイサンなら絶対やらないことに驚き顔が赤くなる


「お熱いこと。主人との話は終わりまして?」


ニコニコと若い2人を微笑ましく眺めながらシャーシャはネイサンに声をかけた


「はい。ありがとうございます。私の方で確認不足な項目がひとつあり…またお伺いしますね。その際に縁組をお願い致します。」


シャーシャの手の甲に挨拶であるキスを送るネイサン

温かく迎えてくれたイノチェンテ家を後にした2人は馬車に乗り帰路につく






「報告します」


ネイサンの執務室へと陰が入る

アヴァの過去の報告だった

アヴァの両親は5歳で確かに亡くなっていた。

“何者か”に殺害されていた。

当時5歳のアヴァはお使いに出て不在だった為に難を逃れた様だった。

5歳までのアヴァの情報が殆ど無い中で気になるのは周囲の噂


“全く両親と似ていない”

“気付いたら産まれていた子供”


ルーが調べた所によると両親は素行不良の様だった

賭け事に夫婦揃ってのめり込む性格だ

5年前のある日、賭け事に負け多額の借金を作ったがすぐに返済していた。

その記録を辿ると“ラウザ家”に工面してもらった事実が浮上してきた。


“ただの平民が何故、領主に工面してもらえる?何か条件が…”


ネイサンはそう疑問に思い更に報告書を読み進めた

ラウザ家より女の子を1人預かるように言われていた。

その養女は、けして外に出すな。と条件付きだ。

その子供が生きている限り、夫婦に定期的に金が入る条件だった。


“何故”?”


さらに読み進めるとその子供は“16歳になったらラウザ家に愛人として迎え入れる”と記載されていた。


「…愛人?」


ハッと鼻で笑う。

自身の好みの子どもを育てさせ愛人にするつもりだったのか…。

それにアヴァは選ばれたのか…。

ではアヴァは何処から来たのか…。


報告書にはラウザ領主がとあるギルドに依頼をしていた事が発覚した旨の記載があった。その依頼はキャベンデュオ家長女、アヴァ・キャベンデュオの誘拐、その際に両親を殺害。妻に関しては“核”を奪うことを依頼されていた、と記載があった。



「…キャベンデュオ家夫人、マーヤの代わりに娘を愛人にするつもりだったか…虫酸が走る。」


何処まで気色が悪い男なのかと寒気がした。

同時にアヴァが何者か判明したのだ。


「金のなる木…か。アヴァの育ての親からしたらそうだったんだろうな。」


はぁとため息をつく。

どんな環境にアヴァがおかれていたのか初めて知った。


「……マーヤの核は何処にいったんだ…?」


“核”とは魔力を持つものが必ず持つもの

魔力の源でありその人の生命の全てだ。

核のお陰で、それが宿る肉体は魔力を持つことが可能だ。


優秀な陰、ルーは更にラウザ家について調べていた



「びっくり仰天だよ…続き読んでよ。」


両手を後頭部に当てて肩をすくめたルーはネイサンに先を促した。


ラウザ家の当主は、キャベンデュオ家一家殺害の罪により処刑。

元妻は事件直前にラウザ家当主と離縁しており、現在はフィレンツェ家の後妻として生きている。

尚、この事件以前にキャベンデュオ家夫人を愛人にしようと企む夫に嫌気が差して離縁を申し出たと供述している。

夫婦には一人娘のフローラ・ラウザが居たが離縁の際縁を切った。

元々、フローラ自身、夫人の実子ではなく夫であるラウザ領主が愛人に産ませた子だったこともあった。

残されたフローラは、ラウザ家当主処刑と同時にアクシュテノール孤児院へ預けられた。


「……フローラ??」


聞いたことある名前だ。

あの女だ。


「執念とも言える、アヴァ様への恨みはそれじゃね?」とルーは言う。


「…完全に逆恨みじゃないか…。生まれ変わっても恨むことではないだろう…。」


くだらない、こんなくだらないことでアヴァは苦しめられてきたのかとため息が出た。


「…すべて繋がったな。イノチェンテ当主が言うように“思いもよらぬ過去”だったな。」


何故こんなにもアヴァを恨むのか疑問に思っていたが、まさか2人が生まれた直後の事からだとは思いもよらなかった。

生まれながらにして貴族の生活を奪われた2人

一人はそれを受け入れ前向きに生きることを選んだ。

もう一人は不遇な自身に納得がいかず誰かに恨みを向け生き続けることを選んだ。


「…でもさぁ…どうやってフローラが記憶を持ち生まれ変わったのか…調べてもわからないんだよね」

とルーは言う。


「……何か理由があるはずだ。我が家に続く家宝を知るわけでもない…。ほかに何か…。」


考えても答えがでない。


「もうちょっと調べるからさ、公爵サマもなんか調べてみて。」とルーは両手を合わせた



「勿論だ…アヴァに関することだ。」


当たり前だと言わんばかりに頷いたその時、コンコンと戸を叩く音がした。


入れと声を掛けるとネグリジェ姿のアヴァが現れた。

「やべっ」と小さく声が聞こえた瞬間、ルーはその場から姿を消した。


「アヴァ?こんな時間にどうしたの?」


ふわりと優しい表情でアヴァを部屋に招き入れた。

言いづらそうに下を向いて入るアヴァ


「えっと…あのね。…養子無理そう?私なんかまずいことしちゃったかな?」


養子縁組できなかったことが不安になったのだろう。

ネイサンは正直に打ち明けるか思案した。


「…違うよ。何もしてないよ。先方との話し合いでね、少し疑問点が出たからそれを解決してからと思って…」


じっとアヴァはネイサンの顔を見る


「……嘘だ。嘘ついたりすると、叶汰の時からそうだった。眉間にしわが寄るもん。」


そう言ってついっと眉間を触るアヴァ

その表情は頬を膨らませ唇を尖らせている。本人は無意識なのだろう。


「……うーーーん。可愛い。」


思わずそう言って抱きしめキスをすると途端に真っ赤になるアヴァ


「…ねぇ…アヴァ…。今からする話…君が傷つくかもしれない。」


抱きしめる力を強くする


「俺は君に傷ついてほしくない。これ以上……。俺の傍で穏やかに生きてほしいんだ。ただそれだけなんだ。」


1度目のアヴァも、茉優も傷ついた。

2度目のアヴァも知らない所で沢山傷つけられ生きてきたことを知った。



「…私そんなに弱くないわよ?負けないよ」


腕の中のアヴァははっきりと言葉を紡いだ。

視線を向けると強気な視線と目が合った


前世にも同じ様な会話したなぁと思い出す。

あれは、“茉優”が新人の頃パワハラ上司に苦しめられてた頃

“無理せずやめても良いよ?”と言う自分の言葉に対して茉優ははっきり言った。

「…私そんなに弱くないわよ?負けないよ。あんなのに負けるわけ無いじゃない!」と握りこぶしを高々に上げる茉優

「何クソ根性でやってやるわよ!」と宣言しその言葉通り茉優は必死に食らいつき、一年が経つ頃にはパワハラ上司に根性を気に入られるまでになっていた。


過去の出来事にふと笑いがこみ上げた


「ははっ…“茉優”はそうだったね。」


ギュッと抱きしめ改めて自分の腕の中に戻ってきてくれたことを自覚し安堵した。

“茉優”の言葉を信じてアヴァに今わかったことを全て話すことにした。

誤字脱字あればお声がけいただけると嬉しいです。

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