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名もなきファンタズマ  作者: 佐藤華澄
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目を奪う

 敵の馬蹄の音の嵐が、こちらを呑もうとさらに激しさを増す。八百対二万。無茶な戦力差だ。だが、別働隊が背後から敵を突くために目を引く用の囮だといえば、悪くない。

視界の端では絶えず味方の屍が積み重なっていくが、こちらはそれの倍、いや倍以上の勢いで敵を削いでいく。いい調子だ。一閃。返り血が煩わしい。また転がった首に、敵の顔に焦りが浮かぶ。敵将らしき男が、俺を指さして叫んだ。


 ──あいつを殺せ!


 すべての敵兵の視線が、一斉に俺に向けられる。別働隊の存在など、微塵も考えてはいないのだろう。かかれ、の合図。幾重もの刃の津波が、一気に押し寄せてくる。……上等。


 咆哮。即時、薙ぎ払った。前進。また、狩る。刃の冷艶が弧を描く。朱殷の飛沫が戦場に散る。何故、たった一人の男を殺せない。驚愕と戦慄を宿したすべての双眸が、まっすぐに俺だけを見つめていた。


 それでいい。それがいい。戦場のすべての目を奪え!


 殺戮の手は止めない。脂で重くなる刃先で、叩き折るように首を狙う。ぼとりと重そうな頭を落としたその身体は、俺から逃れるように背を向けていた。おいおい、そんなんじゃ俺は殺せねえぜ。低く笑った。そしてまた刃を振るう。戦はまだ始まったばかりだった。


 突如、敵後方から悲鳴が上がった。別働隊の到着だ。安堵に崩れそうになる膝を叱咤し、潰走を始める敵陣を睨みつける。俺を見上げる敵兵は揃って絶望の表情をしており、不安げに震えるさまは、母親を見失った赤子のようにも見えた。だが、それで容赦はしていられない。


 さぁ、次はこちらから仕掛ける番だ。

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