な、なに、赤ちゃんが
全てが消え去った。
「あの馬鹿が何とかしてくれたんだな。」
「糞野郎は、何時もやってくれるわよね、何時も。」
皆がホッとした顔と誇りを感じている顔をしていた。
しかし、皆は急に不安になった。
「あいつを捜しに行く!」
「あ、私も行くぞ!」
「抜け駆けは駄目よ、私も行く!」
「いい加減になさいよ。急がなくても、焦らなくても…、わ、私も行くー、待て~!」
何人かの女達が駆け出した。
「あ、あ…いた!お~い…て。」
女達の足が止まった、唖然として立ちすくんだ。女魔王をお姫様抱っこして、歩いてくる勇者の姿に、彼に抱っこされ、いかにも幸せそうな、勝ち誇った表情の女魔王の姿にも驚いたせいもいくらかあったが、彼女が赤ん坊を抱いていることが一番大きかった。
「う、上手くいったんだな。…ところで、なんだ、その…、あ~、その赤ん坊はなんなをだ?魔王の子が…そんなことあり得ないか…とにかくなんだ?」
唖然として、口が開いたままで言葉が出ない女達と考えがまとまらないその他を代表するように、メスがおずおずと尋ねた。彼らの勇者は、曖昧な笑顔を浮かべながら、
「まあ、そのことは後でゆっくり説明するよ。」
その言葉に、
「説明する前にいなくなる、ということだけはやめてくれよ、今度は!」
“よくいってくれた!”誰もが、心の中で叫んだ。そう言われた、彼らの勇者は曖昧な笑顔を浮かべ、ため息をつきつつも、
「ああ、分かったよ。」
と答えた。“そうだな。俺だけいなくなって、誤魔化せる、安心させられる事態ではないな。”
「ゆっくりと、お前様と我の愛の結晶について説明、納得させてやればよかろう。」
魔王は、悪戯っぽい笑顔を浮かべて、彼を見上げた。赤ん坊は、泣くこともなく、静かに二人を交互に見上げていた。
“彼らにどう説明したらいいのだろうか?”
「何となく、意味はわかりましたわ。それで、もう危険はないようだ、ということでよろしいのですね。」
アーニャが、まとめるように言った。
「それでだ、…あれを魔王…様の中にだ…仕込む…儀式というが営みの最中に、あれの記憶があんたら二人の頭に入ってきて…、一連事件の黒幕がいるということが…いやそれは前々から勘づいていたわけか…黒幕の正体が分かったというわけか?なら、それを公表すればいい、そして、そいつを討伐すれば終わりではないか?どうして悩むんだ?」
メスが、自分の考えをまとめながら、詰まりながら、言った。アーニャが、彼に振ったのだ、面倒なことだから。“何時もこうなんだ!”と不満顔のメスを、“ご苦労様!”と悪戯っぽい微笑みを浮かべてい見るアーニャがいた。
「単純に、あいつが黒幕と言って信じてもらえるかい?それだけの奴だ、アリバイ工作も十分だろうし、私達夫婦のことやこの赤ん坊のこともある。」
ダイは、本当に悩んでいる、名案が浮かばない、困っているという顔だった。
「でもさ、今回は絶対、僕らを欺して置いて行くなよ、馬鹿、阿呆、唐変木、変態、無能、勘違い勇者野郎!そんなことしたら、今度こそ、たこ殴りにしてやるからな!」
その言葉に苦笑しながら、
「たこ殴りは困るからというわけではないが、今回はそんなことはしないさ。それで解決できないからな、今回は。黒幕と結着をつけるつもりだから、手を貸して欲しい。…後は、今回貸を作った何人かの国王様、女王様に協力してもらわないと…君たちに協力して、彼らに頼みたい。」
彼は、難しい顔で言った。
「俺達の身の安全もかかっているわけだから、やらせてもらうよ。ところで、魔王様、元魔王様は産後で…子育てで…戦力としては期待できない…のか?」
それは痛いのでは、という顔でメスが尋ねた。
「心配ない。普通のお産ではないからな。数日で回復するだろうし、この娘も普通とは違う。その頃には、世話が必要ないというより、戦力、かなりの戦力になるまで成長してくれるだろう。」
「はあ~?」
皆は、あまりに多くのことを聞かされ、示されて、あ然とするしかなかった。
“何時ものことなんだよな。でも、今回はついて行こう。”
と誰もが思った。
そして、数日後、
「あのような者、身分も低い、しかも異界からの転位者の言うことなぞ、聞く必要がないのですよ。」
王は、目の前で彼を説得しようとする端整な顔立ちの使者に、表情を動かさなかった。
「私は、二度と過ちは犯したくないのだよ。」
「何を言われます?今、間違いを犯そうとしておられるのですよ。」
分からぬ子供を叱り、窘める慈母のような表情を見せていた。
「私の勇者への仕打ち、そして、勇者を唆し…。全て私の勇者から聞いたのだ。勇者は、死んでないよ、死んだことにしたがね。」




