63*中休み♪
その夜、寝台の中での二人。
「ナリス様が回復されて本当に良かったですね。バージルも本当にお疲れ様」
そう言ってアンナはお約束のご褒美であるキスをバージルにします。
「ああ、本当に良かった。当初の予定より早く解術出来たしね」
「そうですね。あっ、マリー様もかなり成長してますよ」
「そうか、君の指導の賜物だな」
アンナはフフフと笑う。
「しかし今回、君は本当に大聖女の生まれ変わりだと実感させられたよ」
「そんなこと・・・もちろんジュリアーナの魂はここにありますけど、私は私ですから」
アンナは自分の胸に手を当て微笑みます。
「魔術大会も君なら問題ないだろうがやはり私は心配だ」
バージルは胸に当てている手を取り口づけます。
「バージル様」
熱い眼差しでバージルの金色の瞳を見つめるアンナ。
「アンナが大聖女だろうと、どんなに魔術が強かろうと愛する人が少しでも傷付く事は私は許せない。もし、少しでも君が危うく感じた時は私は直ぐにでも加勢するし、封印した召喚獣も呼ぶからね」
アンナは自分を見つめる瞳に彼の心からの思いを感じ瞳を潤ませました。
「ありがとうございます。ドロップが召喚獣の代役をしてくれるので心配はないと思いますが、もしもの時は助けて下さいね」
そんな事は起こりうる訳がないと確信していますがバージルの気持ちを嬉しく思い敢えて甘えてみます。
「勿論だよ。愛してる私のアンナ」
「私も愛していますバージル」
熱い口づけを交わし二人は眠りにつきました。
魔術大会は二日後に決まりそれまではマリーの訓練に付き合ったり城下へと気晴らしに出ようと云う事になりました。
「そういえば新婚旅行を兼ねてと兄上に言われていたんだよな」
「そうでしたね」
アンナが思い出したように笑います。
「そうだ、帰路は自由な時間を貰って二人で・・・と云っても誰かさん達は付いて来ると思うけど、あちこち周りながら帰ろうか」
アンナの他にダニエル、ビオラ、フォルヴァそしてドロップの目が輝き、皆にんまり微笑みながら頷いたのは言うまでもありません。
「その事でちと頼みたい事があるのだが」
「どうしたの、フォルヴァ?」
アンナの膝の上にいたフォルヴァに頼みがあると言われ一同は黒猫フォルヴァに注目します。
「アデライトとオレオの国境近くの村に寄って貰えんだろうか?」
アンナは国境の手前でふと何かを感じた村だと云う事を思い出します。
「そういえばあそこには国境にある結界とはまた別に結界が張られていたわよね。その村に何かあるの?」
「気付いておったか。行けば判るので立ち寄って欲しい」
直ぐに理由は口にしなかったフォルヴァにバージルは
「まだ、橋も直っていないと聞いている。帰りも同じコースでになるだろうから寄ってもよいぞ。フォルヴァの頼みなど初めてことだしだな」
と言ってくれました。
「感謝するバージル」
何となくホッとした様子のフォルヴァを撫でながらアンナもまたその村に心惹かれる何かを感じていたのでした。
空いた時間でまた港町へ行くことになりました。今回はマリーも一緒です。
「みんなと一緒にお出掛け出来るなんてマリーは嬉しいです」
毎日アンナに出された課題を一生懸命にやっているマリーへのご褒美とデオドールにアンナが願い許しを貰ったのでした。
「マリーは何処へ行きたいんだ?」
バージルが可愛い妹をみる目で微笑み掛けます。
「うんと、メイドさんが貝で出来てるアクセサリーがお土産で人気だと教えてくれたの。マリーはそれが欲しいです」
マリーは仲良くなったメイドに町に行ったらという話をして事前に情報を貰っていたらしい。
「そうか、ならそのアクセサリーは私がマリーにプレゼントしよう」
バージルがマリーにご褒美だと言うと
「バージルお兄様、お兄様はお姉さまにプレゼントしてあげて。マリーはちゃんとデオドールお兄様から自分で買うのもお勉強だよと言われお小遣いを頂いてるんですもの」
ツンとすまして言うマリーがめっちゃ可愛いです。
アンナが「マリー様可愛い」と抱きしめると
「お姉さまも新婚旅行ですからお兄様ともっとラブラブして下さい」
と言われ「えっ?」と思わず声が出てしまった。そしてこんな可愛いレディの前でイチャイチャなんて出来る訳ないわと顔を赤らめます。
「そうか、なら遠慮なく」
バージルはアンナをいつものようにヒョイと腰を持って膝の上に座らせました。
「ちょっ、バージル様!」
「マリーが良いというのだから遠慮はいらんだろう?」
「空気を読んで下さいって!」
アンナが膝から降りようと足掻いているとマリーはクスッと笑いながら向かいに座っていたダニエルの膝の上に自分も乗りあげました。
「ダニエル、これであなたもおあいこだと思うでしょう?」
小さい頃から魔力酔いしてしまうバージルの代わりにダニエルに抱っこしてして貰ってきたマリー。ダニエルの事もまたもう一人の兄の様に思っているのでした。
「そうですね、俺とラブラブすれば目の前の二人とおあいこですね」
と自分の膝に座るマリーの頭を優しく撫でます。
「でもお姉さまは別としてどうしてみんなはいつもバージルお兄様のこんなに近くにいるのに魔力酔いしないの?」
「それはですね、大人になれば傍に居るくらいは平気なんですよ。マリー様も大人になれば大丈夫になりますよ。今はまだ身体がお小さいので少し長く居るだけで酔ってしまうのです」
「まぁ俺でも身体に少し長く触れていると酔いますけどね」
ダニエルはハハハと笑う。
「そうなんだ」
ダニエルの言葉に少し寂しそうにするマリーに
「マリー様も魔力が増えればもう少し長く抱っこされても大丈夫になるかも知れませんよ」
「でも魔力が増えても身体が大きくなったら抱っこは無理だもん」
「俺で我慢しましょうよマリー様」
マリーとビオラ、そしてダニエルの三人の会話を聞いていてはまるで親子の様に見えアンナは思わず笑みが零れました。
港町で初めてのお買い物をしたマリー。自分でお金を支払うのは初めてのことで本人は至極感動している様子です。
小さな貝殻を繋げたブレスレットを大事そうに何度も触り嬉しそうに眺めていました。そして自分だけではなく自分の世話をしてくれている次女やメイドにもそれぞれの顔を思い浮かべながらお土産を買っています。
お土産を購入し買い食いをしたりして楽しい半日を過ごしました。
城に帰ると中庭でサミュエルの腕につかまり歩行練習をしているナリスの姿がありました。
一年ぶりに外に出た妻を労わる様に支えながらゆっくりと歩くサミュエル。
一九〇センチと大柄な皇帝の後ろ姿が優しさに満ち溢れていてそれを見守る側仕えの者たちが涙を流しているのを見て決意を新たにするアンナ。
明日には各領から大公と魔術師が登城してきます。
こんな二人を長きにわたり苦しめていた者を絶対に許せない。
必ず犯人を見つけ二人の前で断罪させて見せるわ。
そう心に誓ったアンナでした。




