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※9◇魔法と魔力に過去の知識を織り交ぜて作りましょう

「ジュリアンナ様~、こちらの扉は何なのですか?かぎが掛かっているようですけど」


 げっ、とうとう扉の存在に気が付いたのね。

 アンナが答えようするとそれを遮り

「そちらの部屋は重要な資料を保管する部屋なので通常は施錠してあります」

 ビオラが淡々と答えます。

 

 扉の向こうは仮眠室でバージルの執務室と繋がっているなんて知られては大変です。


「そうなんですか」

 ナターシャは資料室と聞いて興味を失ったのかあっけなく扉の前から移動した。


『危なかったわね』

『ええ、バージルの所為でこちらからは施錠出来ないのだから向こうからしっかり管理して貰わないとだわ』

 念話をしてお互いに頷き合うアンナとビオラ。


「ナターシャさん、この書類を二枚ほど移して貰えるかしら」

「はい」

 ここのところ言われたことは素直にこなすようになってきました。


「これって・・・魔道具とかの案ですよね?部外者のわたくしが見てもよろしいのですか?」

 通常こういった類のものは他国の者には見られたくない筈だ。その書類を気にもせず複写しろと言う。


「大丈夫よ。軍事に関するものでもないし。ナーターシャさんはそれを見てどんなものか想像できる?」

「えっ、えーと。。。」

 書類には見慣れない単語が並んでいます。

【空調換気管理システム】【冷凍庫】etc・・・

「何ですか?この空調管理システムって」


「ナターシャさんのお父様はシガーを嗜みます?」

「はい、執務室に籠ると良く吸ってますわ。わたくしあの香りが嫌いですの。髪にも匂いが付きますから」

 貴族の間では嗜好品としてシガー(煙草)が当たり前のようになっている。中には女性でもキセルのような器具で葉の香りを楽しむ遊びもある。

「そう、苦手な人も結構いるのよね。それにお部屋の壁やカーテンなどにも匂いが付くし。立て続けに吸われたら煙も籠るでしょう?」

「ええ、目に沁みますわ」

「魔力や魔法が当たり前の国では」

 と言いながらアンナだ指をぱパチンと慣らすと部屋の中にそよ風が吹き室内の空気が変わったのを感じた。


「わっ、凄いです!空気が変わりました」

 ナターシャの国では魔法を使えるものが少ない。魔力持っていて使えたとしても国の為といい滅多に目の前で見ることは無いのだ。

「アデライト王国は魔力持ちが多く貴族の者は多少なりとも使える人がいるわ。その中でも風魔法が使えれば空気の汚れも魔法でさっと入れ替える事も出来るのよ。ナターシャさんのお国、今はアリア領ですね。そちらは魔力持ちが少ないと聞いています」

「はい、魔術師は居りますけどわたくしたちは魔力がありません」

「ええ、例えばさっきの話。お父様の執務室へ行ってシガーのニオイや煙が充満していたらどうします?」

「勿論すぐに窓を開けさせますわ!」

 それを聞いてアンナはにっこりと微笑みます。


「いちいち窓を開けなくても済むのよ」

「えっ?今みたいに・・・でも魔法は使えないんですよ?」

「だからそういう人の為の魔道具なのよ」

「???」

 理解に苦しむナターシャですがアンナはそのまま話を続けます。


「換気扇という魔道具を部屋の壁に付けて魔石でそれを動かすの」

「『換気扇』ですか?でも魔石があっても魔力がないとそれを動かせないのでは」

「あら良くお勉強されてますね」

 アンナに言われて少しはにかむナターシャ。こう云うところはまだ十七歳の少女と感じます。


「魔力持たなくても魔石を発動させるためのスイッチを付けるのよ。まぁそれをどういう仕組みで作動させるかは機密事項だけど(笑)」

「良く判らないけど凄いです!」

「ふふ、ありがとう。私はこの魔道具を国内は勿論、国外にも売り込みたいの」

「妃殿下がご商売をなさるのですか⁈」

「ふふ、私自身はやらないわ。実家が貿易商を営んでいるのでそっちに任せます。わたしは開発者としておこぼれ・・・いいえ、きちんとした開発料を」

 ぷぷぷっ、ナターシャの後ろでビオラが笑うのが聞こえます。


「あっ、でも魔石って寿命があるんですよね?」

「ええ、あるわ。その時は魔石だけ購入して交換すればいいのよ」

「なるほど!」


 魔石は電池だと思えば良い。そしてどの魔石でも使えるというのではなくある仕掛けを作りその規格のもしか使えないとすれば勝手に模造品を作る事も出来ないとアンナは考えていたのでした。

 何故なら魔石を持たない国がそれを大量に仕入れ違う目的で使用したら戦争も起こりかねない。

 その為の対策として魔石に聖女の加護を与え使用法を限定させるのだ。使用済みの魔石も回収しリサイクルすればいい。

 前世の経験を生かした考えなのです。


「ジュリアン様、輸出第一号はお父様のお部屋にお願いします。アリア領主のお墨付きならば貴族は直ぐに手を伸ばしますよ」

「そうね、アリア領は国にの直ぐお隣だし交易もお互いに盛んだものね」

「はい!」

 嬉しそうなナターシャにアンナも笑顔を返します。


「ビオラ、ナターシャの複写が終わったら【空調管理システム】の所を抜粋して企画書作って」

「畏まりました」

「まずは一つ目、換気扇から始めましょう」


 思わぬところで意思疎通を図ることが出来た三人でした。


 そしてビオラの仕事の速さで企画書は直ぐに作成され、まずはバージルの手元へ渡った。

 異世界なんだから前世の知識を使っても多少の事は魔法で済ませられる。歴史や未来に影響はしないであろうと自分や周囲(国民を含め)の人達が暮らしやすいよう身近な物を少しずつ変えてしまおうと目論むアンナなのでした。



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