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   6  初披露

 時は過ぎ、翌年の夏。


 自宅の居間では、親子三人が一枚の紙とペンを挟み慎重な面持ちで向かい合っていた。


「よし、キーナ。ステータスを見て書き写してみなさい」

「はーい」


 王国の子供たちは、六歳の春から王立学園に通うのが一般的で、そこで学ぶための基礎づくりを各街の保育園等で行っている。


 読み書きもその一つで、ステータスを書き映せる程度には学習できるよう指導されている。


 そして今、その練習の成果が試されようとしていた。


(でてこい! んでもってステータス!)


 これまでに何度も行ってきた一連の動きでステータスを読み取ると、一文字づつ丁寧に書き写していった。


「んしょ……んしょ……」

 それから数分の後、ステータスの文字と紙の文字を見比べたキーナはうんうんと肯きペンを置いた。


「できたー!」


 バンザイのポーズ。


「どれどれ? 見せてご覧?」

「あい!」


 キーナは書いた紙をベアータに手渡すと、父親のアレッシオと共に確認し始めた。


「ふむ……」

「あら?」


 その殆どは一般的な子どもと同じようなものであったが、一部には見慣れないものが書かれていた。


 キーナのステータスは下記の通りである。


――――――――――――――――

名 前 キーナ

誕生年 E334/2/6

種 族 人間(ヒューマン) ♀

登 録 グラストル(エテラスル王国)

所 属 なし

クラスなし

賞 罰 なし


状 態 好調


スキル

・【ステータス簡易閲覧】

・【初級魔力操作】

・【初級身体操作】

・【初級計算能力】


・【湯属性魔法】

 <癒しの湯(いやしのゆ)


称 号

・【湯神の加護】

・【魔獣の友】

――――――――――――――――


「ではキーナ、よく聞いてくれ」

「はい!」


 アレッシオは受け取ったステータスに関して説明を始める。


 名前から賞罰の欄に関しては、神殿や自由交易組合(ギルド)で書き加えられる身分を証明するメモであること。


 状態は、自身の状態を検知して随時変化すると言う事。例えば魔力欠乏、魔力過多、衰弱、中毒、魔法の付加等である。


 ステータス簡易閲覧は、タグを登録した時点で使えるようになる技能(スキル)であり、成長するほど見られる事柄が増えたり詳しくなっていくということ。


 初級と付いた三つの技能(スキル)は、保育園で過ごしているうちに身につく基本的な技能(スキル)であり、これらは魔法ではなく、何もしなくても効果があるということ。


 称号は、技能神や星神から稀に与えられるもので、様々な恩恵が与えられるということ。


「ふむふむ」


 キーナはこくこくと頷く。

 しかし、あまり理解はできていない。


「称号の【魔獣の友】は……おそらくシルバを助けたことによるものだろうな」

「ええ、そうだと思うわ」



 基本、魔獣や魔物を回復させることは珍しく、回復魔法所持者は冒険者――自由交易組合(ギルド)に所属し依頼を受けて生活する人々――を除きあまり市街地を出ることが無いためこのような称号を得るものは稀なのである。


 通常、ペットといえば犬種や猫種。家畜といえば牛に馬や鶏と言った純然たる動物達なのだ。


 魔獣や魔物を使役する技能(スキル)を持つ者も居るが、彼らの場合は”友”という関係ではないのでこのような称号は与えられないと思われる。



「それで、次は【湯属性魔法】と<癒しの湯(いやしのゆ)>? についてだが……」

「それはたぶん、シルバを助けた時に使ったって言う魔法の事よね?」

「うん! なんかね? ほわ~っ綺麗なお湯が丸くなってシルバを綺麗にしたの!」


「【火属性魔法】でも【水属性魔法】でもなく【湯属性魔法】か。検証するのはまだちぃと早いだろうし、学園の専門家にお願いするしか無い、かな」

「……そうした方が良いでしょうね」


 二人は、さすがに未見の属性魔法を素人が検証するのは危険であると判断し、次の項目へ進むことにした。


「それから【湯神の加護】なんだが……」


「湯神、というのは聞いたことが無いわね。あなたは聞いたこと有ります?」

「いや、俺も聞いたことがないな。地水火風の属性神の加護を持っている、と称する奴らの話は聞いたことがあるが」


 うーん……、と二人は沈黙してしまう。


「あ……。そういえば、あの時お姉さんの声がどうのって言ってたわよね? ”天使様”の声とは別で」


 ベアータは、ふと思い出して尋ねる。


「うん! かいふくのことおしえてくれたの!」

「ふむ。それが【湯神の加護】による声なんだろうか」


 アレッシオは腑に落ちない様子だ。


「えーっと、その声は今も聞こえるのかしら?」


 キーナは、うーん? と首を傾げつつ呼びかけてみる。


(おねぇさんいるー?)


「………………きこえない」


 しかし、反応はなかった。


「あまり気安く使えるモノでは無いようだな。まあ、当然といえば当然だが」

「そうね。……いい? 湯神様が見守っているからといって、無茶なことはしないでね?」


「はーい! わかったー!」


「じゃ、ステータスのお話はここまでにしましょう」

「そうだな……よし、シルバと散歩しに行くか?」

「いくー! シルバー! お散歩行くよー!」


 キーナは自室へと向かうと、待ちくたびれたと言わぬばかりのシルバがじゃれついてくる。

 あれからぐんぐん成長して、その体高はキーナの胸辺りまで有るのだ。


「おまたせー! おそといくよー」


 落ち着かせるだけでもひと苦労なのである。


「ガフッ」


 外へ出たシルバは、その場に伏せ、しっぽを振ってキーナの眼を見る。

 これは背中に乗せてくれる時の合図だ。


「ありがとーシルバ♪」

「ワッフワッフ」


「うんしょ……」


 よじよじとその背中に乗ると、シルバ颯爽と風を切り始めた。


「シルバー! だーいすき!」

「ワフッ!」




 その少し後。


「……あれ? おーい! 俺を置いていくなー!」


 そこには、慌てて追いかけるアレッシオの姿があった。


次回、閑話を挟みます。

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