8 寮の中へ
「ひろーい!」
「お部屋どこかな?」
「おっきいお庭もあるにゃー」
「僕なんだかドキドキしてきた……」
子供らは玄関で靴を脱ぎ廊下へと進むと、あちらこちらを見ては感想を漏らしている。
「シルバくんはちょっと待っててね?」
「クゥン?」
ミルドラは浴室からタオルを持ってくるとシルバの足を拭いた。
「これでよしっと。あとで足ふきマット用意しなくちゃだね」
「ワフッ」
シルバはなるほど、と綺麗になった足で廊下を歩き始めた。
お屋敷の間取りは庭付き二階建て”12LDK”。
六学年掛ける男女別という計算だ。
各階に浴場・トイレ完備という文句なしの物件である。
水回りには魔道具が取り付けられており、もちろん無償で利用可能だ。
それだけ、ストレス無く学業に打ち込んで欲しいのだ。
「では、子供たちを部屋に案内してきますので、親御さん方は突き当りの居間でお待ちください」
「ではお願いね、ミルドラちゃん」
「はい」
保護者たちは居間へと進み、子供たちは右手の廊下へと向かった。
「えっと、今年の男の子たちは手前から二番目のお部屋を使ってもらいますね」
卒業生が暮らしていた部屋である。
扉には学年色である水色のフレームが取り付けてあり、その枠内には入居者の名札がはめ込まれていた。
この部屋の入居者は、
茶毛の熊系獣人のガルザ
金髪の人族のダンテ
赤髪の人族のデルトロ
銀毛の狐人族イオラ
黒毛の犬系獣人エミリオの五人である。
「これなら判りやすいんだな」
ガルザが納得気に頷く。
「さ、どうぞ入って」
ミルドラがドアを開けると、男子たちが中へと雪崩れ込む。
中には、三台の二段ベッドが並び、窓際には勉強用のカウンター机があった。
「わー! 二段ベッドだー!」
「ぼくここー!」
「じゃあぼくこっちの上とーった!」
「おれも上がいいのにー!」
「あっ、みんなずるいんだな」
ベッド上段は、荷物袋の爆撃を受け、次々と占領されていくのであった。
「にゃー。こどもっぽいのにゃ~」
「ミーシャちゃん、わらちたちもこどもだよー?」
「うにゃ~」
猫耳をへにゃっと倒しながら呟くミーシャに、にべもなく突っ込むキーナ六歳の図であった。
◇
「よし、男の子たちは場所決めが終わったら居間で待っててね?」
「わかった!」
「りょうかいなんだな」
ミルドラがそう言うと、女子達を連れて階段へと向かう。
「女の子たちは二階を案内しますね」
「はーい!」
「わくわくだにゃ~」
「どんなお部屋かなー?」
女子一同は階段を登りきると、間取りを確認する。
登って右手側に長く廊下が伸びており、その左右に向かい合わせで居室と水回りが並んでいる。手前が浴室とトイレだ。
「この部屋よ、確認してね」
ミルドラは、左側の浴室の次、二番目の部屋の前に立つと扉を開ける。
男子部屋と同じように学年色である水色のフレームに名札が取り付けられていた。
この部屋の入居者は、
黒髪の人族のキーナ
茶髪の人族のセレスティア
白毛の猫系獣人族のミーシャ
黒毛の犬系獣人族のメルティ
銀毛の狐人族のディアドラ
栗毛の兎人族のロッピィの六人である。
キーナ達が中に入って見えてきたのは、男子部屋とは全く違う景色であった。
「広いのにゃ!」
「二段ベッドじゃないんだ!」
「机もかわいー!」
「あれはふっかふかなやつなのー!」
そう、女子部屋は男子部屋の倍ほどの広さであり、各自に質の良いベッド、衣装ケース、サイドテーブルなどが間隔を開けて置かれていた。
天井には仕切り用のカーテンが吊るされており、目隠しすることも出来る。
大部屋とは言え、視線によるストレスは大敵なのだ。
「あたし窓際にするー!」
ディアドラは銀の風になり左奥のベッドにぼすんと飛び込む。
「あーっ! ニャーも窓際がいいのにゃ!」
いち早くベッドを確保された事に慌てたミーシャは、その向かい合わせに置かれたベッドへと飛び込み大の字になってアピールした。
「わらちはミーシャちゃんの隣にしよーっと」
ミーシャもやっぱりこどもだ、と心でつぶやくキーナ。
「えっ、早い者勝ちなの?」
「寝られればどこでもいいのよ」
出遅れたセレスティアとロッピィ。
「ときどき場所がえきぼう」
メルティは冷静であった。
「……ワフン」
シルバは、ごしゅじんさまだいじょうぶかなぁ? という表情で様子を眺めていた。
◇
「とりあえず場所も決まったようだし、居間に行きましょう?」
「はーい!」
「わかったのよ」
数分の戦いを終えた女子達は、親達の待つ居間へと向かった。
階段を降りたところでミルドラが立ち止まる。
「……そう言えば、シルバくんの部屋はどうしようかしらねぇ?」
「わらちと一緒じゃだめなの?」
「いつも近くに居てあげられるわけじゃ無いでしょうし、部屋には鍵がかけられちゃうからね」
「そっかー」
部屋の扉はオートロックで、学生証で開ける、若しくは中から開けてもらうしか無いのだ。
「庭に物置があるから、あとでみんなで改装してあげましょうか」
「わかったー! お部屋作ってくれるって、よかったねシルバー!」
「ワフワフ」
一同は再び歩き始めた。
◇
後に充てがわれた小屋は、子供達一人分より広くて快適なものとなった。
やったねシルバ。
「ワッフ♪」
※○人族 =人間に近い(狐耳な人間)
※○系獣人族=動物に近い(もふもふ毛の人間)
というイメージです。
真のケモナーは後者に行くと思います( ´ω`)




