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―――009―――

本日9話目です。

読み飛ばしにご注意ください。

「私が適性検査を担当させて頂きます。短い間ですがよろしくお願いします」

 

 部屋へ戻りすぐに白衣を着た若い男性が訪ねてきた。

 手ぶらで。

 もしかして、あの機械だけで全て可能なのかな?

 

「よろしくお願いします」

 

「適性検査はそこにある機械で行います。また明日からの体験学習も同じ機械で行われます。機械の使用方法は実際に使用しながら説明させて頂きます。まず準備を行いますので、少しお待ちください」

 

「分かりました」

 

 

 

「準備が完了しました。それではこの中へ入り寝て頂けますか?」

 

 準備開始からあまり時間は経過していない。

 この人の手際が良いのかな。

 

「分かりました」

 

 上部を覆っていたガラスのようなものが横へスライドし、内部へ格納されて中へと入れるようになった。

 中はベットとヘルメットがあるだけだ。

 あれ、そういえば服装とかはこれでいいのかな?

 

「服装はこのままでいいのですか?」

 

「問題ありません。流石に帽子などのヘルメット装着を邪魔するものはダメですが、それ以外なら基本的にどのような服装でも大丈夫です」

 

「そうでしたか。ありがとうございます」

 

 どうやら大丈夫のようなので、機械の中へと入り寝転がる。

 おお、柔らかい。

 良いベットですね。

 

「それではヘルメットを装着してください。頭にかぶるだけで大丈夫ですよ」

 

「分かりました」

 

 指示通りにヘルメットを頭へかぶる。

 

「途中で気分が悪くなりましたらお伝えください。適性検査中やゲーム中の場合は、コール、と言っていただければこちらと繋がります。また、何か気になる点などありましたらお聞きください」

 

「分かりました」

 

 コールか。

 覚えとかないとね。

 

「それでは開始致します。楽しんできてください」

 

 その言葉と共に意識が沈んでいく。

 ああ、楽しみだよ。

 

 

 

 風が草の揺らし立てる音、ほのかな草の香り、全身に感じる柔らかな風の感触、そして……視界いっぱいに広がる草原!

 これが最新技術で再現された仮想世界なのだろうか。

 よく小説にある様に、別世界へ転移しましたと言われても信じてしまいそうな程だ。

 

『ようこそ、世界の狭間へ。今から君にあちらの世界の適性があるか確認します』

 

 突然、女性のような声が響いてきた。

 これは脳の中に響いている感じなのかな?

 それでも不快では無い。

 

 そしてこれは演出なのかな?

 多分、明日から始まるゲームに繋がるのだろうな。

 

『まずその体で好きに動き回ってください。そして異常や違和感があればお伝えください』

 

「分かりました」

 

 

 

 言われた通り、少しの間走り回ったり跳んだりと体の調子を確認したが、元の体と寸分の狂いも無く動かせている気がする。

 

「問題ありません。大丈夫です」

 

『それは良かったです。次に種族を変更します。人間とはまた違った種族になりますが、動き方は自然と理解できていると思います』

 

 人間とはまた違った種族か。

 これは楽しみだ。

 

『最初の変更先はチョウとなり、この姿となります』

 

 その言葉と共に目の前の何もなかった空間に、突然立体映像のようなものが映し出された。

 そして映し出されたのは普通の蝶。

 ただ、大きいよね。

 1メートルはありそうだ。

 

 それにしても、最初か。

 これ以外の姿も体験できるとなると、楽しみだ。

 

『変更しても構いませんか?』

 

「大丈夫です」

 

『それでは変更を行います……終了しました。先程と同じく動きをご確認ください』

 

 ん?

 何か変わったのかな?

 こうやって自由に動け……飛んでる!?

 もしかして、違和感なく飛んでいるのだろうか?

 これが動きを自然に理解すると言うことか。

 最新の技術ってすごいね。

 

 

 

 楽しい!

 少し動き回っていたのだけど、やはり自分の力で空を飛べると言うのは楽しい。

 足も6本あるようだけど、自然と動かすことが出来る。

 さらに花の蜜も美味しい。

 ただ、蝶は複眼だと思っていたのだけど、視界は人と同じように見える。

 何か問題があるのだろうか?

 それとも、この蝶は普通の蝶とは違うと言う事かな?

 まあ1メートルある時点で普通の蝶では無いけどね。

 

「問題ありません」

 

 これはこの後も楽しみだ。

 

『それは良かったです。次の種族に変更します。変更先はクモとなり、この姿となります。変更しても構いませんか?』

 

 映し出されたのは160センチほどの蜘蛛。

 そうか、確認している意味が分かった。

 僕は問題無いのだけど、この姿になることに嫌悪感がある人もいるよね。

 もしかして、これらの姿になっても平気なことも適性検査の一部なのかな?

 そうだとしたら体験学習に人が少なくなりそうなんだけど……。

 いや、この世界を体験できることと天秤に掛ければこちらを選ぶ人は多いのかな?

 

 まあ、僕は問題無いので次へ進もう。

 

「変更をお願いします」

 

『それでは変更を行います……終了しました。先程と同じく動きをご確認ください』

 

 

 

「問題ありません」

 

 クモのあとも蜥蜴、蛇、馬、牛、鷹、梟と様々な種類を体験した。

 鷹は楽しかったな。

 蝶とはまた違った空が本当に楽しかった。

 梟も勿論楽しかったのだけど、そこはやはり速度の差だろう。

 

『それは良かったです。次の種族に変更します。変更先はサカナとなり、この姿となります。変更しても構いませんか?』

 

 目の前に映し出されたのは、マグロ?

 今の気分的にカジキが良かったが、マグロもまた楽しそうだ。

 

 それにしても、マグロでは無く、魚なのか。

 魚に属する様々な個体がいると考えてもいいのかな?

 そしてここで変更されるのだろうか?

 まな板の上の鯉状態はあり得ないだろうから、場所も変更されるのかな?

 

「大丈夫です」

 

『それでは変更を行います……終了しました。フィールドの変更を行います……終了しました。先程と同じく動きをご確認ください』

 

 少しピチピチしたが、すぐに辺りは水で満たされた。

 うん、呼吸もできる……気がする!

 無意識でできるので意識的には分からないんだよね。

 まあそれは置いておいて、動きを確認していこう。

 

 

 

 まさかのジャンプ力!

 あの輝く太陽へ!

 

 少しの間確認したけど、マグロって結構速いんだね。

 それにジャンプ力もある!

 いや、あれはジャンプじゃないかな?

 まあどちらでもいいか。

 

「問題ありません」

 

 水中での行動も結構楽しいね。

 ただ、気になることが1つ。

 もしこの種族でゲームを開始した場合、陸地へは行けないのかな?

 フィールド変更直前の一瞬、呼吸ができなかったからこの種族は水中でしか呼吸できないと思う。

 もしかしたら進化などがあって、陸地にも行けるようになるのかな?

 

 これに関しては少し聞いてみたい気もするけど、楽しみにとっておきたい気持ちの方が大きい。

 なので聞かないでおこう。

 

『それは良かったです。次の種族に変更します。変更先はイカとなり、この姿となります。変更しても構いませんか?』

 

 目の前に映し出されたのは普通のイカ。

 勿論大きく全長5メートルはありそうだ。

 いや、ダイオウイカと比べると大きくは無いのかな?

 まあイカの種類が分からないので比べる対象も分からないけどね。

 

『それでは変更を行います……終了しました。先程と同じく動きをご確認ください』

 

 

 

 大型のイカも楽しい。

 その数の多い脚を自由に動かせる。

 これは漁が捗りそう。

 

「問題ありません」

 

『それは良かったです。最後の種族に変更します。変更先はドラゴンとなり、この姿となります。変更しても構いませんか?』

 

 目の前に映し出されたのは大きな赤い竜。

 流石最後と言うだけある。

 その10メートル以上ありそうな巨体、鋭い爪が生えている4本の足、そしてその巨体にすら空の自由を与えるであろう翼。

 ブレスとかも吐けるのだろうか?

 楽しみだ。

 

「変更をお願いします」

 

『それでは変更を行います……終了しました。フィールドの変更を行います……終了しました。先程と同じく動きをご確認ください』

 

 その言葉と共に景色が変わった。

 足元は赤茶色の硬い大地。

 遥か遠くまでこの大地は続き、途中で突然途切れている。

 あそこは崖?

 まあ、移動してみれば分かるのかな。

 

 

 

 速い。

 鷹とは比較できないほどに、その飛行速度は速い。

 力強い。

 その爪は硬そうな大地すら容易く抉ることができる。

 強力。

 その口から吐き出すことができるブレスは……大地を融解させるほどの高温だ。

 

『大丈夫ですか? 体調が悪いようでしたら少し休憩を入れますか?』

 

「……問題ありません。ただ僕にはドラゴンが少し合わなかったようですね」

 

『そのようですね。それではこれで適性確認を終了します。貴方の適性はとても高いみたいですね』

 

「それは良かったです」

 

 どうやら適性はあるようだ。

 ドラゴンが少し不味かったけど、それ以外は良かったと言う事かな。

 最後の言葉が少し嬉しそうに聞こえたのでお世辞では無いと思いたい。

 

『それでは一旦あちらの世界に帰還して頂きますね。また会えるのを楽しみにお待ちしております』

 

「はい」

 

 その言葉と共に視界が黒く染まり、意識が沈んでいく。

 明日からこの世界を体験できると思うと、楽しみだ。

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