―――008―――
本日8話目です。
読み飛ばしにご注意ください。
夕食後、書類を取りに自分の部屋へと戻って来た。
「真白、書類を父さん達に渡しておくから取っておいで」
「ありがとう。取ってくる」
「お願い」
「うん、分かった」
戻って来た真白から書類を受け取り、父さん達の元へと向かう。
七海さんが許可を出しているものなので心配は要らいないと思うけど、長期間の泊りなので心配するんだろうな……。
「父さん、少しいい?」
「大丈夫だ。どうした?」
「七海さんから書類を預かってるから確認してほしい」
そう言い2人分の書類を渡す。
「2組? ああ、真白もか。読むから少し待ってくれ」
手渡した封筒を開け、中身を確認し始める父さん。
しかしすぐに立ち上がった。
「すまない。書類だけでは無かったから少し確認してくる。一旦部屋へ戻っておいてくれ」
書類だけでは無かった?
どういう事だろう?
それに部屋に戻っておいてくれということは長い時間がかかるのだろう。
……ここは部屋に戻っておこう。
多分僕たちが中を見る可能性があるから、それに対策をされているのだろう。
あるいは参加する子供には一部ですら見られてはいけない?
いや、流石にこちらは無いか。
まあ七海さんも確認してくれているのだから安心しておこう。
「透~。確認が終わったから来てくれ」
「今行くよ」
結構長かったな。
「透、この内容を説明してみてくれないか?」
ん?
理解しているかの確認かな。
「分かった」
今日真白から見せてもらったチラシに記載があった通りに……国が主催であったことも含めて父さんに説明した。
説明し終わった父さんは何かを考え込んでいる。
「分かった。真白も同じ認識でいいんだな?」
「いいはず。真白から見せてもらったチラシに書いてあったことだからね」
「それならいい。期間がかなり長くなるかもしれないが、その間真白を頼んだぞ?」
期間が長いかもしれない?
もしかして、早く終わる可能性もあるのかな?
まあ七海さんと父さんが知っていて僕たちの参加を許可するのなら問題無い。
「頼まれなくてもそのつもりだよ」
「ありがとう。透だから安心できる。次は真白を呼んできてくれるか?」
「母さんに言わなくていいの?」
「母さんは先程承知済みだ」
そうだよね。
確認することがあるなら一緒に見るよね。
「分かった。真白を呼んでくるね」
「真白。父さんが呼んでるから父さんの部屋へ行ってくれ」
「分かった。すぐ行く」
さて、僕は僕で少し調べておかないと。
情報が無い。
国のページにすら情報が載っていない。
流石にここまで情報が出ていないとは思わなかったよ。
普通安心の為に情報を載せるものでは無いのだろうか?
いや、載せてはダメなのかな?
確かに他の国にすら無い、凄い技術だとは思う。
でも学校にあんなチラシを出した時点で情報は洩れるはずだ。
洩れることが分かっているのならば情報は載せておくべきじゃないかな?
それにそうなると何故田舎の学校を選んだんだ?
勿論うちの学校だけとは思っていないけど、候補に入ったことすら不思議だ。
情報を封鎖するならば都会の生徒数が多い学校に絞った方が良かったのでは……。
「ただいま」
真白の様子が少しおかしい。
これは、動揺?
何となくだけど、真白が動揺しているように見受けられた。
「お帰り、真白。今日はどのゲームで勝負する?」
「今日はもう寝る。おやすみ」
「そうか、また明日。おやすみ」
珍しいな。
いつも僕の部屋でゲームをするのだけど、今日はもう寝るのか。
やはり何かあったのだろうか?
話しが少し長かったことも関係あるのかな?
どうしようか、聞いた方が良いのかな?
……いや、まだ止めておこう。
あれは不安による動揺には見えなかった。
それに辛い時は必ず相談してくれると真白は約束してくれた。
それならば今は成長の時。
自ら解決した方が真白の為になる。
さて、そうと決まれば空いた時間は本を読もう。
どの本にするかな?
夏休み3日目。
学校へと集合した僕たちの前にバスが到着し、中から長い黒髪をポニーテールにした先生程の年に見える女性が降りてきた。
「皆さん、仮想体験装置の体験学習にご参加ありがとうございます」
バスが到着して少し経過し、参加者全員が集まったところで黒髪のお姉さんから今日の予定の説明があった。
今日の日程はバスで港まで移動した後、そこから船で島へ移動。
そして1日目は適性検査後に就寝する。
まあ、適性検査と言っても基本的にこちらがそのゲームをプレイするかどうか決めるための検査らしい。
こちらが合わないと感じた場合、その後の体験学習は無しになり学校まで送ってもらえるようだ。
そしてあまりにも適性が無かった場合は申し訳ないが体験学習は無しになるらしい。
まあこれは仕方ない。
「それではバスへお乗りください。港まで少し時間が掛かりますので、道中は遊んでいても、寝ていても構いません。仮想体験所に到着するまでの短い間ですがよろしくお願いします」
「兄さん、隣ね」
「分かってる。最前列に行こうか」
一番は最後列に陽介、美月と座ることなのだが、最初に最後列は取られるだろう。
そして陽介と美月は人気者。
仮に2人が望んでいても中央付近に座らざる得ないだろう。
なので一番端で尚且つ後からでも取れる最前列が現実的なのだ。
「兄さん、暇」
窓から外の景色を見ていると、突然真白が話しかけてきた。
うん、暇だよね。
僕も暇なんだ。
「将棋しようか」
持ってて良かったマグネット将棋。
「携帯ゲームは?」
「電池切れてたんだ。ゴメンね」
そう、先程確認したら電池が切れてました。
「問題無い。将棋でいい」
「それじゃあ、本気出そうかな」
「勝率0割の本気が楽しみ」
違う、真白が強すぎるんだ……。
一応陽介相手に勝率は8割あるからね!
ぼろ負け。
そう、ぼろ負けなんだ。
まあ最初から勝てるとは思っていなかったが。
「次」
次こそは!
港へ到着した。
ここからあの大きな船に乗り換えるのだろう。
と、見せかけて実は小さな船だったりして。
「皆様お疲れ様です。これよりあそこに見えます船へ乗り込んで頂きます。船内には2人で1室用意させて頂きましたのでお寛ぎ下さい」
まあ、豪華です事!
それにしても2人か。
誰と一緒になるのかな?
「部屋割りをお配りします」
部屋割りは……真白と一緒か。
七海さんの配慮かな?
「兄さん、一緒の部屋」
「うん、コンセントあったら携帯ゲームをしようか」
「海見ないの?」
「見たいの?」
「うん」
「それなら一緒に見に行こうか」
「長旅お疲れ様でした。間もなく仮想体験所へと到着します。忘れ物の無いようにご注意ください」
おっと、到着か。
そろそろ真白を起こさないとね。
真白は海を見て部屋に戻ると、1時間したら起こしてと言って寝始めた。
ただ、昨日あまり眠れていなかったようなので1時間と言わず、到着まで起こさずにいたのだ。
仮想体験装置がどんなものかわからないけど、睡眠不足で行うのは危ないかもしれないからね。
それに適性検査で睡眠不足が影響する可能性もある。
眠れないほど楽しみにしていたのに、そんな理由で参加できなくなるのは嫌だろう。
「真白、起きて。そろそろ到着だよ」
「あと、5分……」
荷物の整理をしておこうか。
「どうして起こしてくれなかったの?」
「寝顔に見惚れてて」
「……嘘」
おお、少し照れてるな。
可愛いやつめ。
さて、本当の理由を話しておこうかな。
「昨日あまり寝れてなかったよね? もし適性検査が睡眠不足の影響で適性無しと判断されたら嫌だろう?」
「……確かにそれは嫌」
「納得いったかな?」
「うん」
「皆さま、本日は仮想体験装置の体験学習に参加頂きありがとうございます。今回は楽しんで頂くためにゲームという方式を取っていますが、将来的には学習などに生かしていきたいと考えています。そこで皆様には仮想体験装置を使用した感想を頂き、そしてその感想を生かし、改良を行っていくことが本体験学習の目的となっております。勿論、ゲームのクオリティも期待して頂いて大丈夫ですよ!」
多分責任者であろう50代の程に見える男性。
頭は総白髪でその苦労が窺える。
だが、最後の発言だけやけに気迫があったのでゲームは期待して良さそうだ。
「楽しみ」
「うん、期待できそうだね」
「それでは早速適性検査に……移る前に休憩をお取り頂きたい」
急ぎ過ぎ。
本当にゲームが好きなんだね。
「休憩は今から今日から使用して頂く部屋でお取りください。割り当てをお配りしますね」
こちらは何人部屋かな?
割り当てが決められているなら、できれば1人部屋が良いのだけど難しいかな?
「兄さんと別の部屋。遊びに行く」
「うん、禁止されていないし大丈夫だよ」
1人部屋でした。
2人部屋じゃなくて良かった。
2人部屋だとどちらのパターンでもあまり良くは無い。
いや、もしかすると美月なら大丈夫なのか?
まあ1人部屋なので不安は無くなったけどね。
それにしても、1人部屋とは驚いたよ。
結構予算出てるのかな?
まあ、嬉しい事なのでいいけどね。
部屋は結構色々なものが置いてあった。
冷蔵庫、テレビ、電子レンジ、ベット、ゲーム類などなど。
これならば退屈しなくても済みそうだね。
ただ、気になるものが1つある。
いかにも人が中に入れる感じの大きな機械だ。
もしかして、これが仮想体験装置?
まあ、それは後々分かるかな。
それよりも、この大きさだと一般販売はまだまだ先になりそうだ。
一般家庭でも手が出せる値段となると、ヘルメットサイズくらいまでは小さくできないといけないのかな?
かなり先になりそうで少し残念だけど、それを今体験できるのは嬉しいな。
「兄さん、このゲームしよう」
「うん、しようか」
『10分後に適性検査を開始します。各自自室へお戻りください』
自室に戻ると言うことは、やはりあの機械で間違いないかな?
とりあえず真白を自室へ送っていこう。
少し歩き、真白の部屋の前へと到着した。
少し気になり部屋を覗かせてもらったがどうやら違いは無いみたい。
おっと、余り時間が無いんだった。
早く戻らないとね。
「真白、また後でね」
「また後で」




